機能性評価 超実践 品質工学 (その2)

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【超実践 品質工学、連載記事へのリンク】

  1. 未来の品質
  2.  機能性評価
  3.  機能定義
  4.  ばらつき要因、ノイズ因子
  5.  SN比について
  6.  機能性評価の使いどころと効果
 

3.「機能性評価」で「より早く、より速く」品質の評価を

 
 対象(製品、部品)に備わっている働きを機能といい、機能の安定性のことを機能性といいます。機能性評価とは、製品がお客様の手に渡って使用される段階で、機能がどの程度ばらつき・変化なく発揮できるかの実力、すなわち未来の品質を評価(予測)する方法をいいます。
 
 実験室でのチャンピオンデータや、出荷当時での初期性能だけが良くてもだめで、お客様の使用条件や環境条件がさまざまでも、できるだけ機能(製品の働き)が変化しない、乱れないことが重要なのです。照明器具であればその明るさが、どのような使用条件、使用環境でも新品と同じようにいつまでも維持される、というような望ましい性質のことです。スポーツ選手でも、対戦相手のクセや会場のコンディションに左右されずに、常に実力を発揮できるのが望ましい選手であるのと同様です。
 
 このような製品使用段階での実力を、「より早く」(設計・開発の初期の段階で)・「より速く」(短期間でスピーディに)に見える化したいのです。そして設計に悪いところがあれば、設計変更の自由度が高く、試作規模や手戻りが小さい段階で修正しておきたいわけです。図1のように、このような「短時間での実力の見える化⇔設計改善」の小さいサイクルを繰り返すことで、自信がもてる設計に近づけていくのが目指すべき開発プロセスです。
 
           R&D
図1.開発プロセスにおける機能性評価
 
 機能性評価でなぜ短時間の評価が可能になるのかのメカニズムについては、筆者著書「これでわかった! 超実践 品質工学」(日本規格協会、2016年、以下”同書”と示す)の47~51ページに詳説しましたので、興味のある方はそちらをご覧ください。
 

4. 機能性評価の手順

 
 機能性評価を行う段階では、「何を作るべきか」、「それをどう実現すべきか」、「評価サンプル(またはシミュレーションモデル)の準備」は完了しているものとします。以下に『機能性評価の手順』を示します。
 
(1) 対象(製品、部品)の「働き」である機能を入力と出力の関係で表現する。
 
(2) その機能の入出力関係が、製品使用段階で変動する、ばらつくような要因(ばらつき要因)を多数検
  討して取り上げる。
 
(3) ばらつき要因の中から重要な要因としてノイズ因子(誤差因子)を選択して、その条件の水準(厳し
  さ)と組合せを決める。
 
(4) 組み合わせたノイズ因子の条件のもとで、対象の機能がどれくらい変動するのか、ばらつくのかを観
  察して定量化する。これをSN比で示して対象どうしの機能の安定性を比較する。SN比が高ければ、
  製品使用段階での実力が高いと判断できる。
 ...

 

【超実践 品質工学、連載記事へのリンク】

  1. 未来の品質
  2.  機能性評価
  3.  機能定義
  4.  ばらつき要因、ノイズ因子
  5.  SN比について
  6.  機能性評価の使いどころと効果
 

3.「機能性評価」で「より早く、より速く」品質の評価を

 
 対象(製品、部品)に備わっている働きを機能といい、機能の安定性のことを機能性といいます。機能性評価とは、製品がお客様の手に渡って使用される段階で、機能がどの程度ばらつき・変化なく発揮できるかの実力、すなわち未来の品質を評価(予測)する方法をいいます。
 
 実験室でのチャンピオンデータや、出荷当時での初期性能だけが良くてもだめで、お客様の使用条件や環境条件がさまざまでも、できるだけ機能(製品の働き)が変化しない、乱れないことが重要なのです。照明器具であればその明るさが、どのような使用条件、使用環境でも新品と同じようにいつまでも維持される、というような望ましい性質のことです。スポーツ選手でも、対戦相手のクセや会場のコンディションに左右されずに、常に実力を発揮できるのが望ましい選手であるのと同様です。
 
 このような製品使用段階での実力を、「より早く」(設計・開発の初期の段階で)・「より速く」(短期間でスピーディに)に見える化したいのです。そして設計に悪いところがあれば、設計変更の自由度が高く、試作規模や手戻りが小さい段階で修正しておきたいわけです。図1のように、このような「短時間での実力の見える化⇔設計改善」の小さいサイクルを繰り返すことで、自信がもてる設計に近づけていくのが目指すべき開発プロセスです。
 
           R&D
図1.開発プロセスにおける機能性評価
 
 機能性評価でなぜ短時間の評価が可能になるのかのメカニズムについては、筆者著書「これでわかった! 超実践 品質工学」(日本規格協会、2016年、以下”同書”と示す)の47~51ページに詳説しましたので、興味のある方はそちらをご覧ください。
 

4. 機能性評価の手順

 
 機能性評価を行う段階では、「何を作るべきか」、「それをどう実現すべきか」、「評価サンプル(またはシミュレーションモデル)の準備」は完了しているものとします。以下に『機能性評価の手順』を示します。
 
(1) 対象(製品、部品)の「働き」である機能を入力と出力の関係で表現する。
 
(2) その機能の入出力関係が、製品使用段階で変動する、ばらつくような要因(ばらつき要因)を多数検
  討して取り上げる。
 
(3) ばらつき要因の中から重要な要因としてノイズ因子(誤差因子)を選択して、その条件の水準(厳し
  さ)と組合せを決める。
 
(4) 組み合わせたノイズ因子の条件のもとで、対象の機能がどれくらい変動するのか、ばらつくのかを観
  察して定量化する。これをSN比で示して対象どうしの機能の安定性を比較する。SN比が高ければ、
  製品使用段階での実力が高いと判断できる。
 
(5) ノイズ因子に対する弱みがあれば対策を講じて、設計を改善する(必要に応じて『パラメータ設計
  すなわち直交表を用いた機能の安定性設計も適用する)
 
 次回は、機能定義について解説します。
 
 
 

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

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この記事の著者

鶴田 明三

独自の設計品質評価・改善メソッド“超実践品質工学”で、技術者の 成長を重視して徹底支援。大手電機メーカで23年間培った豊富な指導経験 で、御社製品と仕事の進め方の品質・生産性向上をお手伝いします。

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