生産性向上は生産平準化でめざせ

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 前回の『業務効率化による生産性革命の危険性で解説した生産性を高めるにはどうすれば良いかですが、前回も書きましたようにこの「生産性」は、いかにたくさんの製品を生産したり、いかに短い時間で生産するかではないのです。
 
 経営管理用語としての生産性とは「単位あたりの付加価値額」を意味するのです。その代表は、社員一人当たり付加価値額を意味する「労働生産性」です。
 
 単に生産数量を増やしたり作業時間を短縮したりするのは「生産効率向上」であり、生産性向上とは違うのです。
 
 ちなみに日本の製造業者の2015年度労働生産性平均は中小企業が約762万円、大企業が1171万円です(中小企業白書2016)。
 
 生産性を向上させるためには付加価値額を増やす必要があります。付加価値額とは売上から外部流出費用を引いたもので、TOCでスループットと呼んでいるものとほぼ同義です。付加価値額を増やすための基本方策は売上額を増やすことと、内製化して外注費を減らすことです。どちらも工場の生産能力が不足して製品を製造できない状態では実行できないのです。
 
 その実現のために工場が行う活動が現場改善やロボットの導入です。ただし、いくら増産のために生産能力を増やしても生産量の変動が激しいと待機時間ばかりが増えるだけで付加価値額は増えていかないでしょう。また増産に対応するために外注生産ばかりを増やすといったことを繰り返していても付加価値額は増えないのです。
 
 生産管理
 
 付加価値額を増やすためにはできるだけ生産を平準化して空き時間のない生産をする必要があります。生産平準化を実現するためには次に掲げるような生産管理面での対策が求められます。
 
・生産が少ない期間は稼働を確保するために在庫品や長納期品の前倒し生産を行う
・全体の生産量を左右するネック工程が遊ばないように、ネック工程前に在庫を置く
・受注生産品の生産変動の合間に計画在庫品の生産を入れて生産変動の隙間を埋める
・取引先企業の生産・販売状況を独自分析し需要変動に備える
・生産管理システムを使って上記方策実行のための課題調整を行う
 
 現在、日本の多くの工場は人手不足状態にあり、簡単に生産能力を増やせる状態ではないのです。そのため生産平準化のための生産管理システム活用が重要となってきています。
 
 生産管理システムを使って生産変動にどう対応していくべきか。現在の各製造工程の製造能力と負荷状況を可視化して、柔...
 前回の『業務効率化による生産性革命の危険性で解説した生産性を高めるにはどうすれば良いかですが、前回も書きましたようにこの「生産性」は、いかにたくさんの製品を生産したり、いかに短い時間で生産するかではないのです。
 
 経営管理用語としての生産性とは「単位あたりの付加価値額」を意味するのです。その代表は、社員一人当たり付加価値額を意味する「労働生産性」です。
 
 単に生産数量を増やしたり作業時間を短縮したりするのは「生産効率向上」であり、生産性向上とは違うのです。
 
 ちなみに日本の製造業者の2015年度労働生産性平均は中小企業が約762万円、大企業が1171万円です(中小企業白書2016)。
 
 生産性を向上させるためには付加価値額を増やす必要があります。付加価値額とは売上から外部流出費用を引いたもので、TOCでスループットと呼んでいるものとほぼ同義です。付加価値額を増やすための基本方策は売上額を増やすことと、内製化して外注費を減らすことです。どちらも工場の生産能力が不足して製品を製造できない状態では実行できないのです。
 
 その実現のために工場が行う活動が現場改善やロボットの導入です。ただし、いくら増産のために生産能力を増やしても生産量の変動が激しいと待機時間ばかりが増えるだけで付加価値額は増えていかないでしょう。また増産に対応するために外注生産ばかりを増やすといったことを繰り返していても付加価値額は増えないのです。
 
 生産管理
 
 付加価値額を増やすためにはできるだけ生産を平準化して空き時間のない生産をする必要があります。生産平準化を実現するためには次に掲げるような生産管理面での対策が求められます。
 
・生産が少ない期間は稼働を確保するために在庫品や長納期品の前倒し生産を行う
・全体の生産量を左右するネック工程が遊ばないように、ネック工程前に在庫を置く
・受注生産品の生産変動の合間に計画在庫品の生産を入れて生産変動の隙間を埋める
・取引先企業の生産・販売状況を独自分析し需要変動に備える
・生産管理システムを使って上記方策実行のための課題調整を行う
 
 現在、日本の多くの工場は人手不足状態にあり、簡単に生産能力を増やせる状態ではないのです。そのため生産平準化のための生産管理システム活用が重要となってきています。
 
 生産管理システムを使って生産変動にどう対応していくべきか。現在の各製造工程の製造能力と負荷状況を可視化して、柔軟な対策が取れるようなシステムがあれば望ましいでしょう。生産スケジューリングシステムなどの自動山崩し機能のついた負荷調整システムを活用できれば理想的です。
 
 ただし、生産スケジューリングシステムは簡単に使いこなせるコンピュータシステムではありません。使いこなすには各設備の標準時間や標準工数などのデータ精度が高い状態である必要があります。標準データ精度に自信のない工場では、いきなり生産スケジューリングシステムを導入するのではなく、既存の生産管理システムを使って、標準作業時間の精度を高める活動からはじめることです。
  

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この記事の著者

本間 峰一

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