人的資源マネジメント:自分の心の状態を知る

更新日

投稿日

1. 日常と非日常

 
 自然の暴力的な力と人の営みのはかなさや、考えが違う人を嫌っている自分へのいらだちや、今まで隠れていたことが見えた戸惑い。その他にも、不安、怒り、喜び、主張、批判、要求、感謝、など、人は、いろいろな感情にあふれている毎日を過ごしています。目に見えるところでも目に見えないところでも、人は、非日常的が日常になってしまうと、多くの人は程度の差はあるものの、いつもとは違ういろいろな感情が、心の中で少しずつ層をなして重なり積み上がっていきます。
 

【 疲れた心、『心の状態』 】

 
 何気ない会話の途中や、青空の下を歩いているときや、ひとりで車を運転しているときなどに、思いもよらない感情があふれ出て涙が出て来た人がいると聞きます。また、テレビを見ていて思いがけず涙したり、人のちょっとした言葉に腹が立ったり、普段よりも感情が鋭敏になっている人が増えているとも聞きます。人は、日常が続いていると心が疲れていきます。問題なのは、このような心の疲れに気づいていない人が多いことです。自分の心の状態に気づかず感情にふたをすることになってしまい、心が過労状態になってしまう可能性があります。次に、自分の心の状態に気づくために、比較的多い『心の状態』を紹介しておきましょう。
 

・震災などのちょっとしたトラウマ

 
 急に大地震のときの場面や恐怖が蘇ってストレスを感じたり、揺れていて落ち着かなかったりする状態です。また、怖い気持ちや不安な気持ちを表に出してはいけないと、人前で無理して笑顔を作ったりしている状態になっていることもあります。無理な笑顔に似ていますが、「こんな時だからこそ元気を出さなくてはいけない」「被災者のために何かしなくてはいけない」と張り切りすぎている状態もよくあります。いわゆる「カラ元気」で、従来の自分とは違うテンションが続いている状態です。
 

・これからに対する不安や心配の増大

 
 自然災害などでいつもどおりの生活や仕事ができなくなったり、食料や水、乾電池などいろいろなものが買えなくなったり、お店で殺気だった多くの人を見たり、今までは違う状況に対して不安や心配が大きくなっている状態です。さらに、先が見えない原発問題や、期待できない政治などで、日本はこのままどうなるのだろう、自分はいったいどうなるのだろうという、未来に対する漫然とした不安が大きくなっていることもあります。
 

・感情移入による罪悪感や無力感

 
 最初にも書きましたが、テレビやネットなどで圧倒的な情報を目にしたり、いつもよりもずっと感情移入してしまい、とってもつらくなる。そして、自分には何もできない、あるいは、やっても仕方がないという無力感や無気力感にとらわれている状態です。これが行き過ぎて、「自分はもう終わった」というような状態になっている場合もあります。また、被災地の人のことを考えると、自分だけが楽しんでいいわけがないという罪悪感を感じてしまい、趣味やレジャーなどを楽しめない、やる気が起きないという状態の人もいます。
 

2. 自分の感情を見つめる

人的資源マネジメント
 希望を持つことや、がんばることは大切ですが、忘れてはいけないのが、自分の感情をしっかりと見つめて、我慢しない、無理をしない、そんな時間を持つことです。人は、自分の感情をしっかりと見つめてからでないと、がんばることができないのです。知らない間に積み重なっている感情にきちんと目を向けて、今のそのままの自分を認めることで、しなやかな強さを身につけることができます。このしなやかさな強さがこれからの日本を作っていく力になるのではないでしょうか。次に、自分の感情を見つめるための方法をいくつか紹介しておきましょう。
 

・好きなこと、好きなものに触れる

 
 心の疲れを癒す一番の方法は、自分の好きなことや好きなものに触れることです。仕事に忙しかったり、やる気が起きなかったりするかもしれませんが、意識して、好きなことに接する時間を増やしましょう。好きなこと、楽しいこと、うれしいことを思い出して、目をつぶってじっくりとその思い出に浸るだけでも違います。「好き」という感情が心に余裕を作るのです。自分の「好き」が何なのか、思い出してみてください。
 

・自分の気持ちを話す

 
 二人で、あるいは、何人かで、ストレスに感じていることや感情を話します。聞き役の人は聞いているだけでいいんです。話し役と聞き役は交代して、お互いにただ話し、ただ聞く。できれば、そんな機会を持ちましょう。自分の気持ちや感情を人に話すだけで、...

1. 日常と非日常

 
 自然の暴力的な力と人の営みのはかなさや、考えが違う人を嫌っている自分へのいらだちや、今まで隠れていたことが見えた戸惑い。その他にも、不安、怒り、喜び、主張、批判、要求、感謝、など、人は、いろいろな感情にあふれている毎日を過ごしています。目に見えるところでも目に見えないところでも、人は、非日常的が日常になってしまうと、多くの人は程度の差はあるものの、いつもとは違ういろいろな感情が、心の中で少しずつ層をなして重なり積み上がっていきます。
 

【 疲れた心、『心の状態』 】

 
 何気ない会話の途中や、青空の下を歩いているときや、ひとりで車を運転しているときなどに、思いもよらない感情があふれ出て涙が出て来た人がいると聞きます。また、テレビを見ていて思いがけず涙したり、人のちょっとした言葉に腹が立ったり、普段よりも感情が鋭敏になっている人が増えているとも聞きます。人は、日常が続いていると心が疲れていきます。問題なのは、このような心の疲れに気づいていない人が多いことです。自分の心の状態に気づかず感情にふたをすることになってしまい、心が過労状態になってしまう可能性があります。次に、自分の心の状態に気づくために、比較的多い『心の状態』を紹介しておきましょう。
 

・震災などのちょっとしたトラウマ

 
 急に大地震のときの場面や恐怖が蘇ってストレスを感じたり、揺れていて落ち着かなかったりする状態です。また、怖い気持ちや不安な気持ちを表に出してはいけないと、人前で無理して笑顔を作ったりしている状態になっていることもあります。無理な笑顔に似ていますが、「こんな時だからこそ元気を出さなくてはいけない」「被災者のために何かしなくてはいけない」と張り切りすぎている状態もよくあります。いわゆる「カラ元気」で、従来の自分とは違うテンションが続いている状態です。
 

・これからに対する不安や心配の増大

 
 自然災害などでいつもどおりの生活や仕事ができなくなったり、食料や水、乾電池などいろいろなものが買えなくなったり、お店で殺気だった多くの人を見たり、今までは違う状況に対して不安や心配が大きくなっている状態です。さらに、先が見えない原発問題や、期待できない政治などで、日本はこのままどうなるのだろう、自分はいったいどうなるのだろうという、未来に対する漫然とした不安が大きくなっていることもあります。
 

・感情移入による罪悪感や無力感

 
 最初にも書きましたが、テレビやネットなどで圧倒的な情報を目にしたり、いつもよりもずっと感情移入してしまい、とってもつらくなる。そして、自分には何もできない、あるいは、やっても仕方がないという無力感や無気力感にとらわれている状態です。これが行き過ぎて、「自分はもう終わった」というような状態になっている場合もあります。また、被災地の人のことを考えると、自分だけが楽しんでいいわけがないという罪悪感を感じてしまい、趣味やレジャーなどを楽しめない、やる気が起きないという状態の人もいます。
 

2. 自分の感情を見つめる

人的資源マネジメント
 希望を持つことや、がんばることは大切ですが、忘れてはいけないのが、自分の感情をしっかりと見つめて、我慢しない、無理をしない、そんな時間を持つことです。人は、自分の感情をしっかりと見つめてからでないと、がんばることができないのです。知らない間に積み重なっている感情にきちんと目を向けて、今のそのままの自分を認めることで、しなやかな強さを身につけることができます。このしなやかさな強さがこれからの日本を作っていく力になるのではないでしょうか。次に、自分の感情を見つめるための方法をいくつか紹介しておきましょう。
 

・好きなこと、好きなものに触れる

 
 心の疲れを癒す一番の方法は、自分の好きなことや好きなものに触れることです。仕事に忙しかったり、やる気が起きなかったりするかもしれませんが、意識して、好きなことに接する時間を増やしましょう。好きなこと、楽しいこと、うれしいことを思い出して、目をつぶってじっくりとその思い出に浸るだけでも違います。「好き」という感情が心に余裕を作るのです。自分の「好き」が何なのか、思い出してみてください。
 

・自分の気持ちを話す

 
 二人で、あるいは、何人かで、ストレスに感じていることや感情を話します。聞き役の人は聞いているだけでいいんです。話し役と聞き役は交代して、お互いにただ話し、ただ聞く。できれば、そんな機会を持ちましょう。自分の気持ちや感情を人に話すだけで、楽になります。
 

・大きな呼吸

 
 大きく呼吸しましょう。広い広い大地からいっぱい空気を吸い取るイメージで息を吸います。どこにいたとしても大地を感じて息を吸うのがポイントです。息を吐くときは、身体にたまった空気が頭からスーッと空に向かって抜けて、それが身体全体、そして足を通って大地に広がっていくのをイメージします。こうして呼吸していると何か気づくことがあるかもしれません。そのときは、無視しないでそのまま受け止めます。言葉にしても良いですし、イメージのままでもいいです。「あぁ、そうなんだ」と思う感じで受けとめます。
 
 以上、文章だけだとわかりづらいところがありますが、大切なのは、自分の心にある感情をしっかりと認識することです。時間を作って自分の心を見つめることは精神衛生上、重要なことです。
 
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
教育システムの設計:多能工・技能工人材の育成(その8)

【教育システムの設計:多能工・技能工人材の育成 連載目次】 1. 教育の目的・対象 2. 信賞必罰でメリハリをつけるための信賞必罰制度を運用する仕...

【教育システムの設計:多能工・技能工人材の育成 連載目次】 1. 教育の目的・対象 2. 信賞必罰でメリハリをつけるための信賞必罰制度を運用する仕...


レジリエンスを高める技術(その5)

【レジリエンスとは 連載へのリンク】 1、6つのレジリエンス・コアコンピテンシー 2、自己認識(Self-awareness) 3、セルフコントロー...

【レジリエンスとは 連載へのリンク】 1、6つのレジリエンス・コアコンピテンシー 2、自己認識(Self-awareness) 3、セルフコントロー...


改善のできる雰囲気は上司が作る 人材育成・組織・マネジメント(その13)

  【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】 1. 間接部門のプロセス改善とは 2. 現場は全てを物語る 3. 明日の仕...

  【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】 1. 間接部門のプロセス改善とは 2. 現場は全てを物語る 3. 明日の仕...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
中国での人材採用

1. 部門責任者の採用・口だけでなく手を動かしてくれるか   新しく工場を建設するのに伴い体制強化の支援をしている中国企業で、工場主要部門の責任者を...

1. 部門責任者の採用・口だけでなく手を動かしてくれるか   新しく工場を建設するのに伴い体制強化の支援をしている中国企業で、工場主要部門の責任者を...


‐経営理念と顧客満足の経営‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その40)

1.経営理念と経営者の行動  前回の事例その39に続いて解説します。経営理念とは、その企業の行動の規範を示したもので、経営者が事業に取り組むに際して...

1.経営理念と経営者の行動  前回の事例その39に続いて解説します。経営理念とは、その企業の行動の規範を示したもので、経営者が事業に取り組むに際して...


人的資源マネジメント:モチベーションを支える自律性とは(その2)

   寛容だったときを考えてもらいましたが、どんな気持ちになりましたか? 寛容になるためには我慢や忍耐が必要だったかもしれませんが、寛容な態度...

   寛容だったときを考えてもらいましたが、どんな気持ちになりましたか? 寛容になるためには我慢や忍耐が必要だったかもしれませんが、寛容な態度...