共通価値(CSV)の概念:新環境経営(その1)

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【新環境経営 連載 主要目次】

 

1. 新環境経営

 
 CSR環境経営は、『環境』をマネジメントするところから始まりました。その手段としての「環境マネジメントシステム」「環境報告書」「環境会計」などは、すでに普及し当たり前となりましたが、今後は低炭素社会に向けた法整備も含めた『環境』に関わる経営リスクがさらに高まることが予想されます。このため『環境』を考慮して経営に取り組むことが持続可能な企業経営に必要不可欠です。そこで、21世紀に求められる環境経営を「新環境経営」としました。
 
 本連載ではテーマを「新環境経営」とします。そして、環境経営を超えた21世紀の経営の視点で戦後のこれまでの取組みを振り返り、あるべき経営についての話題を提供したいと思います。4大公害病の歴史と現状、環境マネジメントシステムの歴史、CSRの歴史、共通価値、更にはポスト・コンピューター社会を順に取り上げて、過去と現在をいったりきたりしながら、これまでの環境経営とこれからのあるべき新環境経営について考えていきます。
 
 団塊の世代の活躍は、戦後の混乱を生きて日本の高度成長をなし得ましたが、戦前までに築かれてきた日本の良いところを切り捨ててきた面もあります。このような観点から、この連載を通して正の側面、負の側面を取り上げ、戦前までに築かれてきた日本の素晴らしい精神性を発掘、再評価し、次世代に継承していきたいと考えます。
 
 更には、3.11東日本大震災を受けて抜本的な軌道修正が必要となったエネルギー問題を踏まえ、環境の重要な要素であるエネルギー問題としての「再生可能エネルギー」「省エネ」「創エネ」「畜エネ」等についても取り上げていきます。
 

2. 共通価値(CSV)の概念

 
 日本は敗戦後の高度成長期を経て「バブルの崩壊」「停滞の20年」「リーマンショック」「東日本大震災」と未曾有の変革期を経験してきました。その潮流の中で「企業こそが社会を変革しうる」との確信のもと、企業の社会的責任への期待が高まっています。昨今、マイケル・E・ポーターの共通価値(CSV)の概念が広く知られる様になりました。企業が社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるという考え方が提唱されています。共通価値(CSV)の概念は、明治維新以前の日本には、理念としても存在していたと思います。又、明治維新以後も、松下幸之助さんの水道哲学のように経営のモデルとして引き継がれてきました。日本には「社会的価値の提供があってはじめて、企業の存在が許される」「社会的価値と経済的価値は、一体でなければならない」との国民的風土があり、日本人の意識の中にも深く刻み込まれている考え方です。
 
 しかしながら、明治維新の開国以来、欧米列強に追いつけ追い越せでひた走る中、日本が本来持っていた共通価値(CSV)の概念の遺伝子をどこかに置き去りにしてきました。特に太平洋戦争からの復興を目指し、ひたすら闇雲に突っ走る中で経済的価値に過度に傾斜した経営がなされ、社会的価値を毀損する公害等の社会的問題を生み出してきた部分があります。私利私欲に走る人や組織は、いつの時代にも存在しますが、特に太平洋戦争から今日までは、日本人が長年に亘り積みあげてきた精神性を毀損する、歴史的に大きく後戻りした時代と思います。
 

3. マイケルEポーターの共通価値(CSV)の定義

 
 社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチで、「共通価値」はCSRでもなければ、フィランソ...

 

【新環境経営 連載 主要目次】

 

1. 新環境経営

 
 CSR環境経営は、『環境』をマネジメントするところから始まりました。その手段としての「環境マネジメントシステム」「環境報告書」「環境会計」などは、すでに普及し当たり前となりましたが、今後は低炭素社会に向けた法整備も含めた『環境』に関わる経営リスクがさらに高まることが予想されます。このため『環境』を考慮して経営に取り組むことが持続可能な企業経営に必要不可欠です。そこで、21世紀に求められる環境経営を「新環境経営」としました。
 
 本連載ではテーマを「新環境経営」とします。そして、環境経営を超えた21世紀の経営の視点で戦後のこれまでの取組みを振り返り、あるべき経営についての話題を提供したいと思います。4大公害病の歴史と現状、環境マネジメントシステムの歴史、CSRの歴史、共通価値、更にはポスト・コンピューター社会を順に取り上げて、過去と現在をいったりきたりしながら、これまでの環境経営とこれからのあるべき新環境経営について考えていきます。
 
 団塊の世代の活躍は、戦後の混乱を生きて日本の高度成長をなし得ましたが、戦前までに築かれてきた日本の良いところを切り捨ててきた面もあります。このような観点から、この連載を通して正の側面、負の側面を取り上げ、戦前までに築かれてきた日本の素晴らしい精神性を発掘、再評価し、次世代に継承していきたいと考えます。
 
 更には、3.11東日本大震災を受けて抜本的な軌道修正が必要となったエネルギー問題を踏まえ、環境の重要な要素であるエネルギー問題としての「再生可能エネルギー」「省エネ」「創エネ」「畜エネ」等についても取り上げていきます。
 

2. 共通価値(CSV)の概念

 
 日本は敗戦後の高度成長期を経て「バブルの崩壊」「停滞の20年」「リーマンショック」「東日本大震災」と未曾有の変革期を経験してきました。その潮流の中で「企業こそが社会を変革しうる」との確信のもと、企業の社会的責任への期待が高まっています。昨今、マイケル・E・ポーターの共通価値(CSV)の概念が広く知られる様になりました。企業が社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるという考え方が提唱されています。共通価値(CSV)の概念は、明治維新以前の日本には、理念としても存在していたと思います。又、明治維新以後も、松下幸之助さんの水道哲学のように経営のモデルとして引き継がれてきました。日本には「社会的価値の提供があってはじめて、企業の存在が許される」「社会的価値と経済的価値は、一体でなければならない」との国民的風土があり、日本人の意識の中にも深く刻み込まれている考え方です。
 
 しかしながら、明治維新の開国以来、欧米列強に追いつけ追い越せでひた走る中、日本が本来持っていた共通価値(CSV)の概念の遺伝子をどこかに置き去りにしてきました。特に太平洋戦争からの復興を目指し、ひたすら闇雲に突っ走る中で経済的価値に過度に傾斜した経営がなされ、社会的価値を毀損する公害等の社会的問題を生み出してきた部分があります。私利私欲に走る人や組織は、いつの時代にも存在しますが、特に太平洋戦争から今日までは、日本人が長年に亘り積みあげてきた精神性を毀損する、歴史的に大きく後戻りした時代と思います。
 

3. マイケルEポーターの共通価値(CSV)の定義

 
 社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチで、「共通価値」はCSRでもなければ、フィランソロピー(社会貢献活動)でも、持続可能性でもありません。経済的に成功するための新しい方法。それは企業活動の周辺ではなく中心に位置付けられます。〔 ハーバードビジネスレビュー 2011.6 マイケル・E・ポーター:戦略と競争優位 P.10 〕
 
 CSR(Corporate Social Responsibility)は、まずは経済的価値を生み出す企業の存在が優先し、その上で企業が果たすべき社会的責任の捉え方であり、主は経済的価値、次いで社会的責任です。企業は、まずは存続のために経済的価値の追求があって、それを確保したうえでの余力で社会貢献活動に回す、という意味合いで使われています。
 
 次回は、公害の歴史の振り返りから始めます。
 
 

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この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

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