人工光合成: 新環境経営 (その53)

CSR
 
 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。今回は、化石燃料時代に大量に排出される二酸化炭素をリサイクルする夢の技術「人工光合成」について紹介します。
 

1. 植物の光合成のメカニズム

 実際の植物の光合成は、太陽光を使う「明反応」と光を使わない「暗反応」に分かれます。明反応では水から電子を奪って分解(酸化)し、エネルギーを蓄える物質(ATP)と、後の還元反応を促進する物質(NADPH)を作ります。暗反応では、明反応で作られた物質を使って、二酸化炭素を還元して炭水化物を作ります。植物のエネルギー変換効率は0.1~2.5%です。
 
 数十億年前の太古から、自然界の植物が行って来た「光合成」は、究極のエコロジーな循環型エネルギーシステムです。その太古からの地球の循環型エネルギーシステムを狂わせているのが我々人類です。わずか200年で大量の化石燃料を消費した結果、大気中の二酸化炭素が増え地球の温暖化を招いています。
 

2. 人工光合成へのアプローチ

 化石燃料を大量に消費し、大気中に放出される二酸化炭素をリサイクルするのが人工光合成へのアプローチです。
 
 「人工光合成」が目指す1つ目の反応は、太陽光エネルギーを取り込んで水を酸素と水素に完全分解する反応です。この反応は植物が行っている「明反応」です。そして、2つ目の反応は、二酸化炭素と水から有機物を合成する反応です。更に、窒素と水からアンモニアなどを合成する反応は、「人工光合成」が
目指す3つ目の反応と言われています。
 

3.人工光合成の研究成果

 2011年トヨタ自動車グループの「豊田中央研究所」は、「人工光合成」の実証実験に世界で初めて成功したと発表しました。同研究所は常温常圧の太陽光エネルギーの下で、二酸化炭素と水から「ギ酸」の合成に成功しました。水を酸化、分解する触媒と、二酸化炭素を還元する触媒の、2つの光触媒を用いて、「プロトン交換膜」という装置を用いて実現しました。その太陽光エネルギーからのエネルギー変換効率は0.03%~0.04%で、植物の「光合成」のエネルギー変換効率の1/5程度を実現しました。
 
 繰り返しになりますが、自然界に於ける植物の「光合成」のエネルギー変換効率は、一般的に0.1%~2.5%前後です。従って、太陽光から100のエネルギーを得た植物が「光合成」によって得られるエネルギーは0.1~2.5%です。
 
 現在の「人工光合成」のエネルギー変換効率は自然界に於ける植物の「光合成」のエネルギー変換効率に及ばないですが、日本のトップクラスの研究者達は2030年までに「人工光合成」のエネルギー変換効率を10%程度のレベルに持っていける様に日夜研究を続けています。
 
 次回は、本連載の最後として、「人工物の飽和」について、紹介します。
  

この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

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