デザインによる知的資産経営:「ブランドづくり」(その2)

投稿日

 前回のその1に続いて解説します。
 

(2)商標登録

 ブランド右記の商標出願は1982年10月、第1792034号として1985年に商標登録され、現在も存続しています。これに次いで、1984年に「手形」のない文字だけの「無印良品」を出願しますが、これは1993年にやっと登録されています。理由は、「無印良品」は「ノーブランドの品質の良い商品」を意味するにすぎず、登録することができない(商標法3条1項6号)という審査官の判断(拒絶理由)があったためです。
 
 この拒絶理由を覆すためには、出願商標が使用されていて、需要者の間に広く知られていることを、証拠を示して主張しなければなりません。ところが、「無印良品はブランドではない」という位置づけなので、商品のタグなどに表示されていません。特許庁が認めるような「使用の実績」がないのです。
 
 西友の商標担当者は堤社長、そしてデザイナーの田中氏に掛け合い、「無印良品」を「タグ」に表示することの許可を得ました。ここで、二つ留意点があります。
 
  (1)「『無印良品』はブランドではないのだから『商標』のように表示するな」という指示が徹底
     していたこと。
  (2)商標担当者が「商標登録」の重要性を理解し、社長に伝えて交渉したこと。
 
 この結果、各種商品に商標として「無印良品」を表示し、ほとんど全分類で商標登録され、「小売り」分野では証拠の提出を要求されることなく、全分野、防護標章登録(第3211951号)されています。
 
 拒絶理由通知を受けていたころ、「無印良品」は「ノーブランド商品」を意味する「普通の言葉」としては有名だったのです。1986年の弁理士試験の「商品学」において...
 前回のその1に続いて解説します。
 

(2)商標登録

 ブランド右記の商標出願は1982年10月、第1792034号として1985年に商標登録され、現在も存続しています。これに次いで、1984年に「手形」のない文字だけの「無印良品」を出願しますが、これは1993年にやっと登録されています。理由は、「無印良品」は「ノーブランドの品質の良い商品」を意味するにすぎず、登録することができない(商標法3条1項6号)という審査官の判断(拒絶理由)があったためです。
 
 この拒絶理由を覆すためには、出願商標が使用されていて、需要者の間に広く知られていることを、証拠を示して主張しなければなりません。ところが、「無印良品はブランドではない」という位置づけなので、商品のタグなどに表示されていません。特許庁が認めるような「使用の実績」がないのです。
 
 西友の商標担当者は堤社長、そしてデザイナーの田中氏に掛け合い、「無印良品」を「タグ」に表示することの許可を得ました。ここで、二つ留意点があります。
 
  (1)「『無印良品』はブランドではないのだから『商標』のように表示するな」という指示が徹底
     していたこと。
  (2)商標担当者が「商標登録」の重要性を理解し、社長に伝えて交渉したこと。
 
 この結果、各種商品に商標として「無印良品」を表示し、ほとんど全分類で商標登録され、「小売り」分野では証拠の提出を要求されることなく、全分野、防護標章登録(第3211951号)されています。
 
 拒絶理由通知を受けていたころ、「無印良品」は「ノーブランド商品」を意味する「普通の言葉」としては有名だったのです。1986年の弁理士試験の「商品学」において、「無印良品について説明せよ」という趣旨の問題が出題されており、いわゆる新語辞典にも掲載されていたと筆者は記憶しています。有名ではあるが「商標」(出所表示)としては有名でなかった。これを放置していたら、「無印良品」は誰もが使える名前になってしまい、今の「無印」の世界は築けなかったのではないかと思います。
 
 次回のその3では、2、ブランドづくりから、解説します。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

峯 唯夫

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。


「知的財産マネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術企業の高収益化:独自のものを作り出す教育を

◆ 高収益経営者に必要な人材開発の在り方 1、有資格者の集団が儲かるわけではない  「みんな優秀だけど、四角四面で面白くはないんですよね&hell...

◆ 高収益経営者に必要な人材開発の在り方 1、有資格者の集団が儲かるわけではない  「みんな優秀だけど、四角四面で面白くはないんですよね&hell...


パテント・ポートフォリオの構築方法とは 【連載記事紹介】

    ◆パテント・ポートフォリオとは パテント・ポートフォリオとは「事業目的に対して最適化された」特許群のことを言います。これを構築する...

    ◆パテント・ポートフォリオとは パテント・ポートフォリオとは「事業目的に対して最適化された」特許群のことを言います。これを構築する...


ビジネスモデルのデザイン

         過日、日本デザイン振興会のセミナー「ビジネスデザインの解剖 -グッドデザインラボ...

         過日、日本デザイン振興会のセミナー「ビジネスデザインの解剖 -グッドデザインラボ...


「知的財産マネジメント」の活用事例

もっと見る
特許出願とその後の展開

    研究開発の仕事の中で、特許を調査する、出てきた結果で特許出願を行う、ということは日常的に行われています。私の場合は、昔は多い...

    研究開発の仕事の中で、特許を調査する、出てきた結果で特許出願を行う、ということは日常的に行われています。私の場合は、昔は多い...


特許侵害訴訟のリスク事例(サトウの切り餅) 前編

1.はじめに  特許訴訟は、アップルとサムスンのような超巨大企業の間のみで起こるように思われがちですが、実際にはすべての企業が巻き込まれるおそれがありま...

1.はじめに  特許訴訟は、アップルとサムスンのような超巨大企業の間のみで起こるように思われがちですが、実際にはすべての企業が巻き込まれるおそれがありま...


特許からわかることとは

    基礎研究や開発の現場において、特許を出願するということはよくあります。   私自身、ここ10年ぐらいで100件以上の特許を...

    基礎研究や開発の現場において、特許を出願するということはよくあります。   私自身、ここ10年ぐらいで100件以上の特許を...