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デザインによる知的資産経営:「ブランドづくり」(その1)


 今回は「無印良品」を例に挙げて、ブランドのつくり方、ブランドの力を、解説していきたいと思います。「無印良品」はなぜ「家」までも売り出したのか。そして、なぜ、それが売れるのか。その源は企業理念に基づくデザイン経営とそれによって獲得したブランド力ではないでしょうか。
 
 「無印良品」(以下、適宜「無印」という)は、衣料品、食品、文房具、家電、家具、そして家までも包含する広範な商品を擁しており、その気になれば「無印良品」の商品だけで生活できるほどの商品群を展開しています。現在のアイテムは7000以上に上っています。商標法において商品区分は34あります。その多くを指定している登録商標は多々あると思いますが、そのほとんどの区分で現実に使用されている登録商標は、「無印良品」の他にはないのではないでしょうか。西友のプライベートブランド(PB)として、食品と日用雑貨から始まった「無印良品」が、「家」までも売ることができた原動力は、明確でぶれのない「コンセプト」と「ブランド力」であり、「ファン」の寄与です。そこで、どのようにコンセプトを進化させ、ブランド力を高め、ファンをつくってきたのかについて探っていきます。
 

1.誕生当時

(1)こだわりを強調したデビュー

 1980年、「無印良品」はスタートしました。傘が割れた乾燥椎茸や身が欠けたサケなど、生活者にとっては問題なく使えるにもかかわらず商品価値がないとして捨てられていたものを「商品」として取り上げ、「わけあって、安い」をキャッチコピーに登場しました。そのときの新聞広告が下図です。安い理由が詳細に説明されています。理屈(こだわり)の世界。
 
 
「わけあって、安い」というコピーには二つの意味合いが込められていると、筆者は理解しています。一つは、従前のPBは「安さ」だけを訴求しており、生活者も「安い」に惹かれて購入していた。「こちらの安さには合理的な理由があるぞ」という主張。「『安い』だけを望む人は他へどうぞ」という姿勢です。
 
 もう一つは、「生活者が本当に必要としている商品を提供しますよ」という生活者への主張であるとともに、自己への縛りです。しかし、当時、西友の社長であり「無印良品」の提案者であった故・堤清二氏は、「『無印良品』はブランドではない、ブランドへのアンチテーゼだ」と言っています。その心は、いわゆるブランド品というものは、その商品を持つこと自体が目的とされていて、商品本来の価値は脇に置かれている。
 
 「無印良品」は商品本来の「使用価値」を目指すのだ、ということでしょう。そこには単なる差異化・差別化ではなく、経営者として(当時のセゾンループの代表者として)自分が何をしたいのかという強い意志が込められています。このとき、参集したのがセゾングループをよく知るデザイナーの田中一光氏(故人)をはじめとする数人のデザイナーたちです。商標「無印良品」もそこで決定されました。
 
 堤社長は「生活文化産業」を目指していた。「生活文化」というこだわりがあるので「使用価値」が単に「使って便利」というところにとどまるはずがありません。「使用価値」という概念には「使った人がどういう生活をするか」というところまでが含まれていたはずです。まして、サポーターはそのあたりまで考えるデザイナーたちです。「成功した経営者の脇にデザイナーがいる」。今ではよくいわれることですが、そのとおりの体制です。
 
 「わけあって、安い」と、現在のコンセプト「これでいい」は同じベースです。根っこは「生活者の求める価値を提供する」ことであり、35年間全く変わっていません。
 
 次回のその2では、(2) 商標登録から、解説します。
  

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(みね ただお) / 専門家A / 特許業務法人レガート知財事務所

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