技術企業の高収益化:独自のものを作り出す教育を

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知的財産マネジメント

◆ 高収益経営者に必要な人材開発の在り方

1、有資格者の集団が儲かるわけではない

 「みんな優秀だけど、四角四面で面白くはないんですよね…」。私のクライアントで機械系の会社A社があります。A社の特徴は教育熱心なこと。社員に資格取得を奨励し、社員もそれに励んでいることでした。年に1回資格取得のレビューもありましたし、場合によっては試験休暇なんてものもあるそうです。

 冒頭の台詞はA社社長の言葉です。冬の寒い時期に打ち合わせをした際「独自性の高いテーマがうちにはないな~」という話をしていた流れで社長がこぼしたものでした。A社の社長は非常に頭が良い方でまだお若いにもかかわらず知識も豊富な方です。また、ご自分でも資格をいくつも取得されていて、◯◯士、◯◯技術者試験△級、◯◯検定△級などなど。そのことも影響したのでしょうか、社員には資格取得奨励をしていたようです。

 その甲斐もあって、A社の業績は順調に上がっていました。しかし、なぜかここ数年業績は頭打ちに・・・。市場全体の飽和感と共にA社の業績も推移していました。この状況を打破できるような新しい商品を生み出せず、会社全体に停滞感が出てきてしまいました。そんな中、私が支援することになったのですが確かに、社員は皆優秀でした。資格一覧表を目を通すと、社員がたくさんの資格を取得していることが確認できました。

 一方、肝心の次の商品テーマはといえば「どこにでもありそうな商品ばかり」と言っては悪いのですが「競合に追いつけ/追い越せ」的なテーマばかりで市場で勝ち抜けるような独自性のあるものはありませんでした。

2、当たり前のことでは意味がない

 収益に結びつけるためには独自性のある商品を作ることが重要ですが、どうすれば独自性のある商品を生み出せるような人を教育出来るのでしょうか?

 A社の教育は、資格取得の奨励と支援でしたが、A社では独自性のあるものを生み出すことは出来ていませんでした。よく考えると、機械系の会社なら「設計が上手にできる」、電気系の会社なら「回路設計が上手にできる」人を育成することは必要です。程度の差はあれ、この程度のことはA社に限らずどこの会社もやっていて、ある意味当然といえそうです。当然のことがいくら出来ても独自性には結びつきません。

 ただ、結果が出ていない時でも、A社社長のよう「うちの社員は優秀なんだ」という感覚を持つケースはあります。特に人事部門の担当者はこういう感覚を持つ人は多いです。しかし、繰り返しになりますが、社員の優秀さは商品の独自性にはつながりません。では何が商品の独自性に結びつくかといえば、、、私はこんなことだと断言します。

<< 経営者が独自性を面白がっていること >>

 考えてもみてください。資格をいっぱい持っていたとしても「ダメ出し」ばかりする上司の部下は独自性のあることをして面白がれるのでしょうか?そんな上司がいれば、部下は「どうせどんな案を出しても(上司に)ダメ出しされる」と萎縮するのが関の山です。

 逆に資格なんて持っていなくても、独自性を面白がってくれる人が上司ならば、部下はいきいきと自分の独自性を追求するでしょう。良い上司の部下は「上司はきっと自分の案を面白がってくれる」と思うはず。NG案が出ても、諦めないはずです。そう、独自性の教育とは、上司自身が面白がることなのです。

 あなたの上司にもあなたの個性を認めてくれる人が一人や二人はいたのではないでしょうか?逆の上司もいたと思いますが、それぞれの部下になったときのことを思い出していただくと、自分の個性が引き出された感じは理解していただけると思います。コンサルタントとして断言すると、社員の一人ひとりの個性を追求していくと会社の独自性につながるのです。

3、独自のものを作り出す教育を

 独自性を面白がる上司がいれば十分な訳ではありません。研修はした方が良いです。どんな研修かといえば、独自性のあるものを生み出すための研修です。

 「独自性のあるものを生み出す研修」と読んで「?」が浮かんだのではないでしょうか?そんな研修を見たことがないと思われると思います。しかし、独自性のあるテーマを出すための研修は世の中にあります。大企業の研究所では普通に行っており、決して珍しいものではありません。

 経営者の視点で書けば、研修は売っているから買ってくれば良いのですが、独自なものを生み出せていない会社の経営者や人事担当幹部はこうした研修のことを知らないことが多いのです。そして、A社の社長と同じように「うちの社員は独自性があるものを生み出せないから…」と嘆いている。当たり前です...

知的財産マネジメント

◆ 高収益経営者に必要な人材開発の在り方

1、有資格者の集団が儲かるわけではない

 「みんな優秀だけど、四角四面で面白くはないんですよね…」。私のクライアントで機械系の会社A社があります。A社の特徴は教育熱心なこと。社員に資格取得を奨励し、社員もそれに励んでいることでした。年に1回資格取得のレビューもありましたし、場合によっては試験休暇なんてものもあるそうです。

 冒頭の台詞はA社社長の言葉です。冬の寒い時期に打ち合わせをした際「独自性の高いテーマがうちにはないな~」という話をしていた流れで社長がこぼしたものでした。A社の社長は非常に頭が良い方でまだお若いにもかかわらず知識も豊富な方です。また、ご自分でも資格をいくつも取得されていて、◯◯士、◯◯技術者試験△級、◯◯検定△級などなど。そのことも影響したのでしょうか、社員には資格取得奨励をしていたようです。

 その甲斐もあって、A社の業績は順調に上がっていました。しかし、なぜかここ数年業績は頭打ちに・・・。市場全体の飽和感と共にA社の業績も推移していました。この状況を打破できるような新しい商品を生み出せず、会社全体に停滞感が出てきてしまいました。そんな中、私が支援することになったのですが確かに、社員は皆優秀でした。資格一覧表を目を通すと、社員がたくさんの資格を取得していることが確認できました。

 一方、肝心の次の商品テーマはといえば「どこにでもありそうな商品ばかり」と言っては悪いのですが「競合に追いつけ/追い越せ」的なテーマばかりで市場で勝ち抜けるような独自性のあるものはありませんでした。

2、当たり前のことでは意味がない

 収益に結びつけるためには独自性のある商品を作ることが重要ですが、どうすれば独自性のある商品を生み出せるような人を教育出来るのでしょうか?

 A社の教育は、資格取得の奨励と支援でしたが、A社では独自性のあるものを生み出すことは出来ていませんでした。よく考えると、機械系の会社なら「設計が上手にできる」、電気系の会社なら「回路設計が上手にできる」人を育成することは必要です。程度の差はあれ、この程度のことはA社に限らずどこの会社もやっていて、ある意味当然といえそうです。当然のことがいくら出来ても独自性には結びつきません。

 ただ、結果が出ていない時でも、A社社長のよう「うちの社員は優秀なんだ」という感覚を持つケースはあります。特に人事部門の担当者はこういう感覚を持つ人は多いです。しかし、繰り返しになりますが、社員の優秀さは商品の独自性にはつながりません。では何が商品の独自性に結びつくかといえば、、、私はこんなことだと断言します。

<< 経営者が独自性を面白がっていること >>

 考えてもみてください。資格をいっぱい持っていたとしても「ダメ出し」ばかりする上司の部下は独自性のあることをして面白がれるのでしょうか?そんな上司がいれば、部下は「どうせどんな案を出しても(上司に)ダメ出しされる」と萎縮するのが関の山です。

 逆に資格なんて持っていなくても、独自性を面白がってくれる人が上司ならば、部下はいきいきと自分の独自性を追求するでしょう。良い上司の部下は「上司はきっと自分の案を面白がってくれる」と思うはず。NG案が出ても、諦めないはずです。そう、独自性の教育とは、上司自身が面白がることなのです。

 あなたの上司にもあなたの個性を認めてくれる人が一人や二人はいたのではないでしょうか?逆の上司もいたと思いますが、それぞれの部下になったときのことを思い出していただくと、自分の個性が引き出された感じは理解していただけると思います。コンサルタントとして断言すると、社員の一人ひとりの個性を追求していくと会社の独自性につながるのです。

3、独自のものを作り出す教育を

 独自性を面白がる上司がいれば十分な訳ではありません。研修はした方が良いです。どんな研修かといえば、独自性のあるものを生み出すための研修です。

 「独自性のあるものを生み出す研修」と読んで「?」が浮かんだのではないでしょうか?そんな研修を見たことがないと思われると思います。しかし、独自性のあるテーマを出すための研修は世の中にあります。大企業の研究所では普通に行っており、決して珍しいものではありません。

 経営者の視点で書けば、研修は売っているから買ってくれば良いのですが、独自なものを生み出せていない会社の経営者や人事担当幹部はこうした研修のことを知らないことが多いのです。そして、A社の社長と同じように「うちの社員は独自性があるものを生み出せないから…」と嘆いている。当たり前ですが、自分の会社の社員を教育していないことに経営者が気付かないと、出来る研修も出来ません。 

 A社社長は、そんな研修があることを知ると早速導入されました。社長の行動は迅速でしたし、もともと独自性のあるものを面白がる体質でしたので、A社は今、独自性のあるテーマが結構ある状態です。

 社長のように、気付いたら速やかにアクションをしてほしいものですが、気付いても行動しない言い訳を次々と作る経営者や経営幹部もいます。「今期はコレがあるから、、、」などと言って次々と延期し、しまいには異動・退任してしまうタイプです。拙速なのはもちろんNGですが、結果を出すのはがどちらかといえば、思いたったら吉日と即行動するタイプの経営者であると考えています。もちろん拙速であるのはNGです。縷々(るる)と言い訳してなかなか決めない日和見経営者ではいけませんね。あなたの会社にもいませんか?

 次回は、高収益経営者の判断基準とは、から解説を続けます。


 【出典】株式会社 如水 HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

中村 大介

若手研究者の「教育」、研究開発テーマ創出の「実践」、「開発マネジメント法の導入」の3本立てを同時に実践する社内研修で、ものづくり企業を支援しています。

若手研究者の「教育」、研究開発テーマ創出の「実践」、「開発マネジメント法の導入」の3本立てを同時に実践する社内研修で、ものづくり企業を支援しています。


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