イノベーション創出 新規事業を実現する技術経営のあり方 (その1)

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知的財産権

◆ 特許活用によるイノベーション創出の提案

 

1. 技術経営: 研究開発/技術戦略部門の現場の嘆き

 
 企業のR&Dの現場では、新たな価値を生み出すために個々のレベルで、何を目指して研究するべきか、市場のニーズの取り込み日々考えて行動しています。しかしながら、事業部と関連しロードマップにあるテーマであれば開発すべき方向が明確ですが、基礎研究や開発の現場では、何を開発してよいのかテーマの選定に悩んでいるのが実情です。
 
 現場の声としては、「次に何を開発すべきか」、「市場のニーズがわからない」、「材料の研究をしているが、得られた材料の顧客のニーズを知りたい」、「保有技術のいい出口はないか」などがあるようです。これらの悩みは多くの大企業、中小企業から聞こえてきており、各社共通の課題であると思われます。
 

2. 技術経営: 特許情報の凄さ

 
 特許法の第1条では、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする」とあります。すなわち特許制度は、製造業においては、発明(技術的イノベーション)により商品化につなげ、利益を上げるために重要な役割を果たす制度です。特許は国内で、年間約30万件以上出願されています。(特許庁HPより)
 
 特許の中には、いわゆる「発明」が記載されているわけですので、国内でいろんな分野の発明がこの数だけ生産されていると考えられます。まさに発明の宝庫です。約30万件というのは年間の発明の数ですから、過去20年ぐらいを遡ると600万件以上の発明を調べることができるということです。30万件の中で自分の研究、開発、ビジネスに関連するものはその一部かもしれませんが、考え方やコンセプトなどは適用可能です。これらは他人の発明ですが、これらを有効に活用して自身または自社のイノベーションに繋げるにはどうしたらいいでしょうか。今回の連載では、そのやり方を解説します。
 
 

3. 技術経営: 自社の特許をみる

 
 技術をもとに利益を上げている会社の場合、特許を出願して知的財産権を確立しています。また知財を重視している大企業ですと、知財部が自社の特許の整理をして特許戦略や自社の知財充実を考えています。しかしながら、多くの企業では、自社の特許が十分に活用されていないのではないでしょうか。
 
 元キヤノンの丸島さんによると、「日本では現在、ものづくり産業が低迷しています。技術大国と言われながら、それが産業競争力の強化に結びついていない点で根深いものがあります。特に技術志向型である日本の企業においては、知的財産を活用した事業戦略・研究開発戦略・知的財産戦略の三位一体の経営戦略を実現することがグローバル競争で勝ち抜く唯一の手段であり、それを実現できる知的財産マネジメント人材は、まだまだ日本には少ない状況です。」とのことです。丸島さんのセミナーを受講させていただいたことが有りますが、私も知財の重要性を再認識しました。
 
 自社の特許からはいろんなことがわかりますが、自社技術を用いてイノベーション創出するために重要なことは、自社のコアコンピタンス(核となる能力・得意分野)が何であるかということです。登録された特許には、他社を排他できる技術があります。そして事業や製品を差別化するためのコアコンピタンスが特許に記載されているはずです。そ...
知的財産権

◆ 特許活用によるイノベーション創出の提案

 

1. 技術経営: 研究開発/技術戦略部門の現場の嘆き

 
 企業のR&Dの現場では、新たな価値を生み出すために個々のレベルで、何を目指して研究するべきか、市場のニーズの取り込み日々考えて行動しています。しかしながら、事業部と関連しロードマップにあるテーマであれば開発すべき方向が明確ですが、基礎研究や開発の現場では、何を開発してよいのかテーマの選定に悩んでいるのが実情です。
 
 現場の声としては、「次に何を開発すべきか」、「市場のニーズがわからない」、「材料の研究をしているが、得られた材料の顧客のニーズを知りたい」、「保有技術のいい出口はないか」などがあるようです。これらの悩みは多くの大企業、中小企業から聞こえてきており、各社共通の課題であると思われます。
 

2. 技術経営: 特許情報の凄さ

 
 特許法の第1条では、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする」とあります。すなわち特許制度は、製造業においては、発明(技術的イノベーション)により商品化につなげ、利益を上げるために重要な役割を果たす制度です。特許は国内で、年間約30万件以上出願されています。(特許庁HPより)
 
 特許の中には、いわゆる「発明」が記載されているわけですので、国内でいろんな分野の発明がこの数だけ生産されていると考えられます。まさに発明の宝庫です。約30万件というのは年間の発明の数ですから、過去20年ぐらいを遡ると600万件以上の発明を調べることができるということです。30万件の中で自分の研究、開発、ビジネスに関連するものはその一部かもしれませんが、考え方やコンセプトなどは適用可能です。これらは他人の発明ですが、これらを有効に活用して自身または自社のイノベーションに繋げるにはどうしたらいいでしょうか。今回の連載では、そのやり方を解説します。
 
 

3. 技術経営: 自社の特許をみる

 
 技術をもとに利益を上げている会社の場合、特許を出願して知的財産権を確立しています。また知財を重視している大企業ですと、知財部が自社の特許の整理をして特許戦略や自社の知財充実を考えています。しかしながら、多くの企業では、自社の特許が十分に活用されていないのではないでしょうか。
 
 元キヤノンの丸島さんによると、「日本では現在、ものづくり産業が低迷しています。技術大国と言われながら、それが産業競争力の強化に結びついていない点で根深いものがあります。特に技術志向型である日本の企業においては、知的財産を活用した事業戦略・研究開発戦略・知的財産戦略の三位一体の経営戦略を実現することがグローバル競争で勝ち抜く唯一の手段であり、それを実現できる知的財産マネジメント人材は、まだまだ日本には少ない状況です。」とのことです。丸島さんのセミナーを受講させていただいたことが有りますが、私も知財の重要性を再認識しました。
 
 自社の特許からはいろんなことがわかりますが、自社技術を用いてイノベーション創出するために重要なことは、自社のコアコンピタンス(核となる能力・得意分野)が何であるかということです。登録された特許には、他社を排他できる技術があります。そして事業や製品を差別化するためのコアコンピタンスが特許に記載されているはずです。それらは企業の収益性の源泉になる(なっている)はずです。これらは、知財部による分析でとどめることなく、技術者と経営者が一体となって考えることが重要です。
 
 パテントマップは作っただけでは何ににもなりません。自社の特許を見て、自社のコアコンピタンス(核となる能力・得意分野)は何かということを認識することが重要です。モノづくりに関係する企業の収益性はイノベーション創出力に関係します。イノベーション力は現状の特許に現れているということです。その特許から自社の強みを認識することが重要です。
 
 次回は、「特許に何が書いてあるか」から、解説を続けます。
 
 

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この記事の著者

藤井 隆満

基礎研究から商品化まで一直線の開発。 目指す市場と技術のマッチング、知財戦略、バリューチェーンをどうするかということを論理的に考え、開発を加速させましょう。

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