在庫を置けなくしてしまうこと 物流業と在庫管理(その2)

更新日

投稿日

サプライチェーンマネジメント

◆ 在庫と利益の関係

 在庫が増えれば利益も増えるということが論議の的になることがあります。「在庫が利益につながるなんて」と思われるかもしれません。しかしそれは次の算式でも明らかなのです。

利益 = 売上 - 売上原価

売上原価 = 期首在庫 + 期中仕入 - 期末在庫

 たとえば売上が1000万、期首在庫が300万、期中仕入が450万、期末在庫が200万だったとしましょう。この時の利益は、1000万-(300万+450万-200万)=450万となります。もし期末在庫が300万だったとすると、利益は550万になります。つまり在庫が100万増えたら利益も100万増えたということになります。だから在庫を持つことは利益の視点から正しいのだ、ということをいう人がいるのです。

 しかし売りを伴わない在庫が増えるということは、会社のキャッシュを圧迫するだけではなく、本来なくてもよいはずのコストを生じさせてしまうのです。それが在庫を保管するための容器であり保管場所であり、在庫を横持ちするための費用であり管理であるわけです。

 このような付帯的に発生するコストなどを考慮せずに見掛け上の利益だけにとらわれてしまうことは危険ですから、物流の観点からも荷主に適切なアドバイスをすることが求められるのです。

 在庫のリスクとして廃棄リスクが挙げられます。売れる見通しのある在庫であればまだ良いのですが、その当てがなければリスクが大きいといえます。もしそれが売れなければ持っていても意味がありません。最終的にはお荷物に他なりませんので処分せざるを得ません。そのための処分コストがかかってくるのです。この在庫のことを「罪固」と呼びます。私たちは「財...

サプライチェーンマネジメント

◆ 在庫と利益の関係

 在庫が増えれば利益も増えるということが論議の的になることがあります。「在庫が利益につながるなんて」と思われるかもしれません。しかしそれは次の算式でも明らかなのです。

利益 = 売上 - 売上原価

売上原価 = 期首在庫 + 期中仕入 - 期末在庫

 たとえば売上が1000万、期首在庫が300万、期中仕入が450万、期末在庫が200万だったとしましょう。この時の利益は、1000万-(300万+450万-200万)=450万となります。もし期末在庫が300万だったとすると、利益は550万になります。つまり在庫が100万増えたら利益も100万増えたということになります。だから在庫を持つことは利益の視点から正しいのだ、ということをいう人がいるのです。

 しかし売りを伴わない在庫が増えるということは、会社のキャッシュを圧迫するだけではなく、本来なくてもよいはずのコストを生じさせてしまうのです。それが在庫を保管するための容器であり保管場所であり、在庫を横持ちするための費用であり管理であるわけです。

 このような付帯的に発生するコストなどを考慮せずに見掛け上の利益だけにとらわれてしまうことは危険ですから、物流の観点からも荷主に適切なアドバイスをすることが求められるのです。

 在庫のリスクとして廃棄リスクが挙げられます。売れる見通しのある在庫であればまだ良いのですが、その当てがなければリスクが大きいといえます。もしそれが売れなければ持っていても意味がありません。最終的にはお荷物に他なりませんので処分せざるを得ません。そのための処分コストがかかってくるのです。この在庫のことを「罪固」と呼びます。私たちは「財庫」を持つことは許されますが「罪固」は決して持ってはならないのです。

 物流の観点から見て在庫は往々にして「場所があると保有してしまう」傾向があります。工場でも倉庫でも同じですが、場所があればものを置きたがるのです。そこでこれを逆手にとって考えてみることが必要です。つまり在庫を置けなくしてしまうことで必要以上の在庫を保有させないようにするのです。

 次回に続きます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
サプライチェーンにおけるリードタイムとは

     サプライチェーンにおけるリードタイムは、サプライチェーンの入口に部材が投入されてキャッシュフローとなる製品が顧客に納入さ...

     サプライチェーンにおけるリードタイムは、サプライチェーンの入口に部材が投入されてキャッシュフローとなる製品が顧客に納入さ...


SCM戦略とは サプライチェーンマネジメントによる全体最適化(その2)

  【サプライチェーンマネジメントによる全体最適化 連載記事目次】 1. SCMはなぜ難しい 2. SCM戦略とは 3. 変動メカニズム...

  【サプライチェーンマネジメントによる全体最適化 連載記事目次】 1. SCMはなぜ難しい 2. SCM戦略とは 3. 変動メカニズム...


SCM構築の必要性・目的を明確にすることの重要性 SCM最前線 (その3)

1. SCM構築の必要性・目的を明確化する重要性を取り上げる意味     読者の皆様にとって、「SCM構築の必要性・目的を明確化の...

1. SCM構築の必要性・目的を明確化する重要性を取り上げる意味     読者の皆様にとって、「SCM構築の必要性・目的を明確化の...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
カタログが物流サービスには無い 物流会社と荷主会社の関係性(その2)

  ◆ 物流カタログを作ろう  カタログには自社の製品と価格が載っています。それを見て購入者は買うかどうかを判断します。ところが物流会社...

  ◆ 物流カタログを作ろう  カタログには自社の製品と価格が載っています。それを見て購入者は買うかどうかを判断します。ところが物流会社...


物流ユーザーの役割:物流購買の勘所(その5)

  ◆ 物流ユーザーの役割 物流サプライヤーと直接接する部署として「購買部門」が挙げられます。購買部門の主な役割は物流サプライヤーの選定...

  ◆ 物流ユーザーの役割 物流サプライヤーと直接接する部署として「購買部門」が挙げられます。購買部門の主な役割は物流サプライヤーの選定...


 平準化できない物流業務 固定観念を捨てて取り組む重要性(その3)

  1. 物流管理業務の外転化  メーカーでは物流管理業務はノンコア業務という位置づけとなる可能性が高く、できればその仕事を外転化したい...

  1. 物流管理業務の外転化  メーカーでは物流管理業務はノンコア業務という位置づけとなる可能性が高く、できればその仕事を外転化したい...