メンテナンス業務の収益化とは

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 今回は、製造、販売事業に付随するアフターサービス事業のうち、メンテナンス業務をどのようにして収益化を図っていくかについて解説します。
 

1. ビジネスモデルの見直し・再構築

 
 実はアフターサービス事業は、この部分に注力すれば、大きな利益を生み出す可能性を秘めています。なぜならば、アフターサービス事業はストック ビジネスとして、毎年安定した収益が見込め、経営の安定化に大いに貢献します。一方、製品の製造販売事業は、フロービジネスであり、今年売れた製品が来年売れる保証はありません。また多数の競合メーカーがひしめき合う中で、価格競争に陥り利益に結び付きません。
 
 この環境変化の激しい世の中で、フロー ビジネスだけに頼って事業を進めることは、本来リスクを伴うことなのです。では、どのような手順でアフターサービスの事業化を進めて行くかを考えてみましょう。
 
 メンテナンス業務
 
 「モノを売るから、サービスを売る」という考えに方向転換します。「モノも作れるサービス業」という視点で、ビジネスモデルを全面的に見直し、スマイルカーブの上流から下流の工程の中でより付加価値の高い工程へ経営資源を集中的に投入していきます。
 

2. 事業の黒字化の具体的手順

 
「モノを売るから、サービスを売る」という考えに方向転換するためには、どのような手順で進めていけば良いかを考えてみます。
 

◆ 第1ステップ(アフターサービスの事業化)

 
 これまでは、保守部品販売、修理や定期点検などのメンテナンスはお客様へのサービス扱いで、次の注文を獲得する意味として、モノを売るための販売促進効果を狙っていました。但し、この考えの下では、収益は見込めず、したがって顧客満足につながるアフターサービスとはなり得ない状況となっています。
 
 そこで、アフターサービス事業のさらなる発展、競争力強化のため、この事業を製造事業から分離独立させ、将来子会社として独立させることを念頭に、独立採算の組織を発足させます。2800社以上の顧客を抱えているのですから、子会社としての独立採算は十分に可能と思われます。
 
 そのためには、製造事業を効率化し、生産性を高め余剰となった人材を徐々に本事業へ投入します。そうすることによって、固定費を増加させずに、また製造事業とのコミュニケーションを取りながら事業展開が可能となります。新たな人材の採用は、採算性を見ながら行っていきます。新組織では、以下のような目標を立て、人材の強化、サービスツールの整備を行います。
 
  • 顧客に密着した営業体制や業務体制の確立
  • 顧客および、サービス業務の可視化
  • 顧客対応のスピードアップ化
  • サービスメニューの見直しによる内容のレベルアップ化
 
 事業の安定性や効率性を考え、顧客との年間保守契約を結び、事務処理や価格交渉などの工数を減らし、いかに早く顧客対応を行うか?また予防保全やコールセンターの設置等によって、スピード感をもって対応を行い、いかに顧客満足度を高めていくか?に注力していきます。このような高いレベルのサービスの実施によっても、従来顧客からも納得し受け入れられる、リーズナブルな料金体系を構築していきます。
 

◆ 第2ステップ(顧客情報の収集と分析)

 
 収集が必要な共有化情報として、以下のような項目を設定し、情報を分析します。
 
  • 保守情報(故障情報、点検内容、交換部品と周期)
  • 設置情報(設置地域・場所、設置環境)
  • 製品情報(設置日、製品種類、バージョン、部品交換・修理履歴)
  • お客様情報(売上高と利益)
 
 分析した結果、サービスの仕組みの見直しや、製品へのフィードバック項目として設計部門との情報共有を図ります。
 
  • 予防保全の考えから、部品の寿命や作業性などの改良設計へ反映
  • 製品別・部位別の不具合兆候の収集と兆候の正確性向上
  • お客様を階層分類して階層レベルに適合したサービス対応
  • メンテナンス作業時間のトレンド分析、作業員別の作業時間分析
  • 今後不足する人員の技能と人数
  • 技術・技能で強化が必要な作業スキル
  • 交換部品、予備品、使用ツールなどの必要在庫
 

◆ 第3ステップ(予防保全体制の確立)

 
 不具合履歴の分析結果を設計フェーズにフィードバックして製品品質を向上させる仕組みを確立します。また稼動情報の取得により、不具合の兆候を見極め、その予兆から不具合発生前に消耗部品の交換を行うことが可能になります。その結果、お客様が安定した設備稼動ができるようになり、製品そのものに対する信頼度もア...
 
 今回は、製造、販売事業に付随するアフターサービス事業のうち、メンテナンス業務をどのようにして収益化を図っていくかについて解説します。
 

1. ビジネスモデルの見直し・再構築

 
 実はアフターサービス事業は、この部分に注力すれば、大きな利益を生み出す可能性を秘めています。なぜならば、アフターサービス事業はストック ビジネスとして、毎年安定した収益が見込め、経営の安定化に大いに貢献します。一方、製品の製造販売事業は、フロービジネスであり、今年売れた製品が来年売れる保証はありません。また多数の競合メーカーがひしめき合う中で、価格競争に陥り利益に結び付きません。
 
 この環境変化の激しい世の中で、フロー ビジネスだけに頼って事業を進めることは、本来リスクを伴うことなのです。では、どのような手順でアフターサービスの事業化を進めて行くかを考えてみましょう。
 
 メンテナンス業務
 
 「モノを売るから、サービスを売る」という考えに方向転換します。「モノも作れるサービス業」という視点で、ビジネスモデルを全面的に見直し、スマイルカーブの上流から下流の工程の中でより付加価値の高い工程へ経営資源を集中的に投入していきます。
 

2. 事業の黒字化の具体的手順

 
「モノを売るから、サービスを売る」という考えに方向転換するためには、どのような手順で進めていけば良いかを考えてみます。
 

◆ 第1ステップ(アフターサービスの事業化)

 
 これまでは、保守部品販売、修理や定期点検などのメンテナンスはお客様へのサービス扱いで、次の注文を獲得する意味として、モノを売るための販売促進効果を狙っていました。但し、この考えの下では、収益は見込めず、したがって顧客満足につながるアフターサービスとはなり得ない状況となっています。
 
 そこで、アフターサービス事業のさらなる発展、競争力強化のため、この事業を製造事業から分離独立させ、将来子会社として独立させることを念頭に、独立採算の組織を発足させます。2800社以上の顧客を抱えているのですから、子会社としての独立採算は十分に可能と思われます。
 
 そのためには、製造事業を効率化し、生産性を高め余剰となった人材を徐々に本事業へ投入します。そうすることによって、固定費を増加させずに、また製造事業とのコミュニケーションを取りながら事業展開が可能となります。新たな人材の採用は、採算性を見ながら行っていきます。新組織では、以下のような目標を立て、人材の強化、サービスツールの整備を行います。
 
  • 顧客に密着した営業体制や業務体制の確立
  • 顧客および、サービス業務の可視化
  • 顧客対応のスピードアップ化
  • サービスメニューの見直しによる内容のレベルアップ化
 
 事業の安定性や効率性を考え、顧客との年間保守契約を結び、事務処理や価格交渉などの工数を減らし、いかに早く顧客対応を行うか?また予防保全やコールセンターの設置等によって、スピード感をもって対応を行い、いかに顧客満足度を高めていくか?に注力していきます。このような高いレベルのサービスの実施によっても、従来顧客からも納得し受け入れられる、リーズナブルな料金体系を構築していきます。
 

◆ 第2ステップ(顧客情報の収集と分析)

 
 収集が必要な共有化情報として、以下のような項目を設定し、情報を分析します。
 
  • 保守情報(故障情報、点検内容、交換部品と周期)
  • 設置情報(設置地域・場所、設置環境)
  • 製品情報(設置日、製品種類、バージョン、部品交換・修理履歴)
  • お客様情報(売上高と利益)
 
 分析した結果、サービスの仕組みの見直しや、製品へのフィードバック項目として設計部門との情報共有を図ります。
 
  • 予防保全の考えから、部品の寿命や作業性などの改良設計へ反映
  • 製品別・部位別の不具合兆候の収集と兆候の正確性向上
  • お客様を階層分類して階層レベルに適合したサービス対応
  • メンテナンス作業時間のトレンド分析、作業員別の作業時間分析
  • 今後不足する人員の技能と人数
  • 技術・技能で強化が必要な作業スキル
  • 交換部品、予備品、使用ツールなどの必要在庫
 

◆ 第3ステップ(予防保全体制の確立)

 
 不具合履歴の分析結果を設計フェーズにフィードバックして製品品質を向上させる仕組みを確立します。また稼動情報の取得により、不具合の兆候を見極め、その予兆から不具合発生前に消耗部品の交換を行うことが可能になります。その結果、お客様が安定した設備稼動ができるようになり、製品そのものに対する信頼度もアップすることになります。
 

3. シナジー効果の発揮

 
 アフターサービス事業の強化は、より顧客サイドに立った情報収集が可能となるため、顧客ニーズにマッチした製品の企画・開発が可能になります。このことは、製品差別化による競争力の強化、そして新たな顧客獲得へもつながり、製造・販売事業も拡大するといった、シナジー効果が期待できます。そのためには、縦割り組織とならない様に、事業間での人材交流、情報交換を密にしていく必要があります。
 
 冒頭に述べたように、製造主体の事業構造から付加価値の高い事業へシフトしていくためには、生産性を飛躍的に高め、そこでの余剰となった人材を付加価値業務へ割り当てていくという考え方がこれからの製造業の生きるための一つの手段であると確信しています。
 

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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