品質コストマネジメント導入について

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  品質マネジメント
 

1. 想定事例

 従業員1000人の印刷会社です。会社は、QMSのマネジメントシステムの認証を取得していますが、QMS活動は営業部門及び経営層の理解が低く、低調です。生産部門も生産量、生産性が右肩さがりで低調ですが、クレーム件数は増加傾向です。経営品質改革を目的に「品質コストマネジメント」を導入したいと企画提案しようと考えています。品質コストマネジメントの企画、運用で有効な手段またはアドバイスをお願いします。
 

2. 品質コストマネジメント導入について

 経営層の理解を上げるには、2つの理由で積極的な関与を期待します。
 
 1つ目は、ISO9000-基本及び用語に「品質目標の達成は、製品品質、運用の有効性及び財務実績に良い影響を与え、その結果として、利害関係者の満足及び信頼関係にも良い影響を与える」と記載しています。この“運用の有効性及び財務実績に良い影響に”は経営層の最大の関心事と思います。
 
 2つ目は、改訂された品質ISOの“4.1組織及びその状況の理解”や“利害関係者のニーズ及び期待の理解”は、認証審査では経営層に質問することになると思われます。文書化までは求められていませんが、何らかの回答を用意しておくことが必要になると考えます。
 
 経営層の理解が低いのは、高品質の追求と顧客満足の向上だけになっている為でないかと推測します。品質目標は同じくISO9000に「品質目標は、組織の他の目標、例えば、組織の発展、資金、収益性、環境及び労働安全衛生に関するものを補完する」と記載されています。更に「この規格では“もの”という用語が削除されているが、製品やサービスに限定せず、活動、工程、組織、人などの質をも意味することは変化していない」と記しています。品質マネジメントシステムのすべての経営活動が対象になります。
 
 すなわち、組織の発展の事業目標、財務目標の収益性を保管する、製品・サービス、製造活動・製造工程の品質目標の設定を求めているのです。
 
 品質目標の設定に“品質コスト抽出・集計”はよい影響を与える指針となることが期待され、工程や作業の改善につながり、品質マネジメントシステムの運用が容易で確実で且つコストにも良い影響を与えるものとなることが期待できます。
 
 コストも品質マネジメントシステムです。“品質”の用語に規定にあるように考えられるもの全て要求事項を満たした程度になり、コストの要求事項が満たした程度も品質マネジメントシステムといえます。
 
 また、顧客の明示した要求事項だけでなく、明示していないが意図した用途に応じた要求事項の推測並びに組織が追加する要求事項も合わせて明確にしていくことで、顧客クレームは減少させることができるのではないかと考えます。たとえば、社内の顧客である次工程の作業者にも顧客満足を考えることができます。
 
 顧客クレームが“組織をとりまく人に生じた有害な影響”によりもたらされたものと考えれば、環境マネジメントシステムの応用ができるようになります。
 
 組織の活動は、事業目標や財務目標を含めて品質、環境、情報セキュリティ、個人情報保護並びに労働安全衛生が一体とな...
 
  品質マネジメント
 

1. 想定事例

 従業員1000人の印刷会社です。会社は、QMSのマネジメントシステムの認証を取得していますが、QMS活動は営業部門及び経営層の理解が低く、低調です。生産部門も生産量、生産性が右肩さがりで低調ですが、クレーム件数は増加傾向です。経営品質改革を目的に「品質コストマネジメント」を導入したいと企画提案しようと考えています。品質コストマネジメントの企画、運用で有効な手段またはアドバイスをお願いします。
 

2. 品質コストマネジメント導入について

 経営層の理解を上げるには、2つの理由で積極的な関与を期待します。
 
 1つ目は、ISO9000-基本及び用語に「品質目標の達成は、製品品質、運用の有効性及び財務実績に良い影響を与え、その結果として、利害関係者の満足及び信頼関係にも良い影響を与える」と記載しています。この“運用の有効性及び財務実績に良い影響に”は経営層の最大の関心事と思います。
 
 2つ目は、改訂された品質ISOの“4.1組織及びその状況の理解”や“利害関係者のニーズ及び期待の理解”は、認証審査では経営層に質問することになると思われます。文書化までは求められていませんが、何らかの回答を用意しておくことが必要になると考えます。
 
 経営層の理解が低いのは、高品質の追求と顧客満足の向上だけになっている為でないかと推測します。品質目標は同じくISO9000に「品質目標は、組織の他の目標、例えば、組織の発展、資金、収益性、環境及び労働安全衛生に関するものを補完する」と記載されています。更に「この規格では“もの”という用語が削除されているが、製品やサービスに限定せず、活動、工程、組織、人などの質をも意味することは変化していない」と記しています。品質マネジメントシステムのすべての経営活動が対象になります。
 
 すなわち、組織の発展の事業目標、財務目標の収益性を保管する、製品・サービス、製造活動・製造工程の品質目標の設定を求めているのです。
 
 品質目標の設定に“品質コスト抽出・集計”はよい影響を与える指針となることが期待され、工程や作業の改善につながり、品質マネジメントシステムの運用が容易で確実で且つコストにも良い影響を与えるものとなることが期待できます。
 
 コストも品質マネジメントシステムです。“品質”の用語に規定にあるように考えられるもの全て要求事項を満たした程度になり、コストの要求事項が満たした程度も品質マネジメントシステムといえます。
 
 また、顧客の明示した要求事項だけでなく、明示していないが意図した用途に応じた要求事項の推測並びに組織が追加する要求事項も合わせて明確にしていくことで、顧客クレームは減少させることができるのではないかと考えます。たとえば、社内の顧客である次工程の作業者にも顧客満足を考えることができます。
 
 顧客クレームが“組織をとりまく人に生じた有害な影響”によりもたらされたものと考えれば、環境マネジメントシステムの応用ができるようになります。
 
 組織の活動は、事業目標や財務目標を含めて品質、環境、情報セキュリティ、個人情報保護並びに労働安全衛生が一体となって実施されるものです。それぞれが別々のマネジメントシステムで構成されていると、活動が低調になり、重複作業が生じて無駄が生じる恐れがあります。
 
 マネジメントシステムのそれぞれで、規格の対応を考えることなく、多面的に分けて考えることです。2重管理になることは避けてください。
 
 品質目標の設定は、事業の発展や収益性並びに環境及び情報セキュリティのそれぞれの目標を補完するものが策定され、作業工程や作業手順が継続して改善のための品質目標になることを期待します。
 
 その品質マネジメントシステムの運用により、容易で確実な生産体制が整い、コストダウンや売り上げ増加並びに顧客クレームの減少につながり、経営層にシステム運用の有効性を説明できるようになると確信しています。
 

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この記事の著者

竹田 将文

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