Improveフェイズの目的 シックスシグマ (その7)

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 前回のその6に続いて解説します。Improveフェイズでは、特性Yと、Analyzeフェイズの最後で抽出した影響力の大きい要因Xとの関係を伝達関数とします。Yは、主要な要因Xの変化で決まるという考えに基いており、要因Xを制御する事で実際にYの改善効果が観られるか検証していきます。
 

・Improveフェイズの、取り組み。

1. Y=f(x)関数の構築

2. Y=f(x)関数のXの制御範囲を決定する

3. 検証実験を行いYの改善を確認する

 
 Yは、問題を解決するための改善指標であり、XはYに影響を与える要因を表します。f(x)は全ての要因xの、Yに対する影響の大きさ(寄与度)を表しています。要因X全てを管理するのは効率が悪いので、効果が低い要因は誤差と見なし、効果の大きい要因の制御に注力します。
 

1.Y=f(x)関数の構築

 
 特性Yを欠陥数、Xを欠陥に影響する製造要因とすると、Y=f(X)の関係は図1の様に考える事が出来ます。因みに要因Xがn個の場合、Y=f(x1,x2,x3,・・・xn) と表されます。Yのばらつきに著しい影響を与える要因がX1,X3,X4の3つであれば、Yは要因X1,X3,X4の効果f(x1,x2,x3)とその他の要因全ての効果(誤差e)で表す事が出来ます。
 
            im1 
図1.特性Yと要因Xの関係
 
 上式は特性Yは、主にx1,x3,x4の3つの要因と、その他誤差要因で決定するという意味で、厳密な数学公式とは異なります。因みにYに与える影響が大きい順にX1⇒X3⇒X4であるなら、Yを構成するf(xn)と誤差の大きさイメージは、図2のような感じとなります。
 
         im2
図2.特性Yと3つの主要因との関係
 
 Yと複数の要因xの関係は、実際に対応したデータを解析する事により、回帰式の形で近似する事が出来ます。但し、実際の現場では要因xを直接制御出来ないケースもあり、この場合要因Xを制御するための因子zを制御し、間接的にYをコントロールします(図3.参照)
 
    im3
図3.特性値Yの要因XとXの効果を決める因子
 
 例えば、事例のX3は研磨レートですが、研磨レートが砥液流量(z1)と研磨時間(z2)で決まっているなら、z1とz2を制御する事で間接的に欠陥数Yもコントロール出来ます。同様にX3とX4に対応している因子z3~6を制御する事でも、Yをコントロール出来ます。即ち、Yを制御する伝達関数は要因Xを制御する因子Zを用いて次の様に表すことが出来ます(図4)
 
        im4
図4.伝達関数
 

2.Y=f(x)関数のXの制御範囲を決定する

 
 Yの変化の大半を、要因X1,X3,X4で説明出来るなら、これら主要因を一定の範囲に制御する事で、Yの分布の抑制も可能と考えます。即ち、顧客が要求する規格範囲の中に、Yの分布の大半が十分収まるようなXの可変域を決定します(図5)
 
     im5
図5.伝達関数イメージ
 
 要因X(インプット)の制御と特性Y(アウトプット)のイメージは、図5の様になります。Xの分布を管理する事で、間接的に特性値Yの工程能力を改善する事になります。つまりY品質を管理する為に、主要因Xの管理を徹底する必要がある事を説明しています。
 
 図5の伝達関数イメージは、特性Yを要因Xでコントロールする場合ですが、特性Yが要因Xを支配する因子Zで制御できるなら、同様にYを規格範囲に収めるために、Zの可変領域を決定します。
 

3.検証実験を行いYの改善を確認する

 
 特性Yを改善する為の条件が整えば、それが効果的に機能するかどうか検証作業を行います。伝達関数の仮説が立てられれば、それが成り立つかどうか、統計的仮説検定や推定、分散分析法などの手法を用いて確認します。
 
 検証データ数が稼げるようなら、短期性能の工程能力を算出し、改善前と比較します。検証の結果、期待した効果が得られないようなら、状況に応じ...
 前回のその6に続いて解説します。Improveフェイズでは、特性Yと、Analyzeフェイズの最後で抽出した影響力の大きい要因Xとの関係を伝達関数とします。Yは、主要な要因Xの変化で決まるという考えに基いており、要因Xを制御する事で実際にYの改善効果が観られるか検証していきます。
 

・Improveフェイズの、取り組み。

1. Y=f(x)関数の構築

2. Y=f(x)関数のXの制御範囲を決定する

3. 検証実験を行いYの改善を確認する

 
 Yは、問題を解決するための改善指標であり、XはYに影響を与える要因を表します。f(x)は全ての要因xの、Yに対する影響の大きさ(寄与度)を表しています。要因X全てを管理するのは効率が悪いので、効果が低い要因は誤差と見なし、効果の大きい要因の制御に注力します。
 

1.Y=f(x)関数の構築

 
 特性Yを欠陥数、Xを欠陥に影響する製造要因とすると、Y=f(X)の関係は図1の様に考える事が出来ます。因みに要因Xがn個の場合、Y=f(x1,x2,x3,・・・xn) と表されます。Yのばらつきに著しい影響を与える要因がX1,X3,X4の3つであれば、Yは要因X1,X3,X4の効果f(x1,x2,x3)とその他の要因全ての効果(誤差e)で表す事が出来ます。
 
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図1.特性Yと要因Xの関係
 
 上式は特性Yは、主にx1,x3,x4の3つの要因と、その他誤差要因で決定するという意味で、厳密な数学公式とは異なります。因みにYに与える影響が大きい順にX1⇒X3⇒X4であるなら、Yを構成するf(xn)と誤差の大きさイメージは、図2のような感じとなります。
 
         im2
図2.特性Yと3つの主要因との関係
 
 Yと複数の要因xの関係は、実際に対応したデータを解析する事により、回帰式の形で近似する事が出来ます。但し、実際の現場では要因xを直接制御出来ないケースもあり、この場合要因Xを制御するための因子zを制御し、間接的にYをコントロールします(図3.参照)
 
    im3
図3.特性値Yの要因XとXの効果を決める因子
 
 例えば、事例のX3は研磨レートですが、研磨レートが砥液流量(z1)と研磨時間(z2)で決まっているなら、z1とz2を制御する事で間接的に欠陥数Yもコントロール出来ます。同様にX3とX4に対応している因子z3~6を制御する事でも、Yをコントロール出来ます。即ち、Yを制御する伝達関数は要因Xを制御する因子Zを用いて次の様に表すことが出来ます(図4)
 
        im4
図4.伝達関数
 

2.Y=f(x)関数のXの制御範囲を決定する

 
 Yの変化の大半を、要因X1,X3,X4で説明出来るなら、これら主要因を一定の範囲に制御する事で、Yの分布の抑制も可能と考えます。即ち、顧客が要求する規格範囲の中に、Yの分布の大半が十分収まるようなXの可変域を決定します(図5)
 
     im5
図5.伝達関数イメージ
 
 要因X(インプット)の制御と特性Y(アウトプット)のイメージは、図5の様になります。Xの分布を管理する事で、間接的に特性値Yの工程能力を改善する事になります。つまりY品質を管理する為に、主要因Xの管理を徹底する必要がある事を説明しています。
 
 図5の伝達関数イメージは、特性Yを要因Xでコントロールする場合ですが、特性Yが要因Xを支配する因子Zで制御できるなら、同様にYを規格範囲に収めるために、Zの可変領域を決定します。
 

3.検証実験を行いYの改善を確認する

 
 特性Yを改善する為の条件が整えば、それが効果的に機能するかどうか検証作業を行います。伝達関数の仮説が立てられれば、それが成り立つかどうか、統計的仮説検定や推定、分散分析法などの手法を用いて確認します。
 
 検証データ数が稼げるようなら、短期性能の工程能力を算出し、改善前と比較します。検証の結果、期待した効果が得られないようなら、状況に応じてMeasureやAnalyzeフェイズに戻ってやり直します。期待した効果が見られず他の要因効果を探るなら、再度実験計画法を用いて評価してみるのも効果的です。また、Yの改善の為に行う変更が、他の品質特性の低下や工数増加、安全性など、ネガティブな副作用を及ぼしていないかも確認する必要があります。
 
 
 

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この記事の著者

眞名子 和義

ムダ・ムラ・ムリの「3ムの撤廃が企業収益向上に繋がる」を信条とし、お客様の"視座"に立ったご提案を致します

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