第2回 2025年ものづくり白書から~なぜ日本の製造業は「設計」で再び競争力を取り戻せるのか、現場起点の強みを構造から読み解く

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第2回2025年ものづくり白書から~なぜ日本の製造業は「設計」で再び競争力を取り戻せるのか、現場起点の強みを構造から読み解く

【目次】

    前回は、2025年版ものづくり白書を手がかりに、2026年に向けた日本の製造業の構造変化を概観した。そこから浮かび上がった共通点は明確である。『人手不足、DX、脱炭素、技能伝承』これらは、ばらばらの課題に見えるが、すべて「設計のあり方」へ収束しているという事実である。ではなぜ日本は、いま再び「設計」によって競争力を取り戻せる可能性を持つのか。今回は、現場に根差した日本型ものづくりの構造的強みを、機械部門技術士の視点から読み解いていく。現場・設計・工程が一体となって最適化される、日本の製造業が持つ「すり合わせ構造」は、DX時代において再び競争力の源泉となる。図面と実物を突き合わせ、因果を読み解く設計者の思考こそ、品質・再現性・信頼性を決定づける核心である。

     

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    1. 誤解されがちな国際比較

    しばしば日本の製造業は、人件費が高い、デジタル化が遅い、市場対応が遅い、といった表層的な指摘で語られる。しかし現場で見える実態は異なる。日本の真の競争力は、設計・加工・品質を一体で最適化する“すり合わせ構造”にある。これは単なる熟練技能ではなく、図面解釈力、工程理解、不具合因果の共有、といった設計起点の統合能力で成立している。

     

    2. 分業モデルとの本質的な違い

    海外の多くは、設計=仕様決定、製造=実行、という分業型である。一方、日本...

    第2回2025年ものづくり白書から~なぜ日本の製造業は「設計」で再び競争力を取り戻せるのか、現場起点の強みを構造から読み解く

    【目次】

      前回は、2025年版ものづくり白書を手がかりに、2026年に向けた日本の製造業の構造変化を概観した。そこから浮かび上がった共通点は明確である。『人手不足、DX、脱炭素、技能伝承』これらは、ばらばらの課題に見えるが、すべて「設計のあり方」へ収束しているという事実である。ではなぜ日本は、いま再び「設計」によって競争力を取り戻せる可能性を持つのか。今回は、現場に根差した日本型ものづくりの構造的強みを、機械部門技術士の視点から読み解いていく。現場・設計・工程が一体となって最適化される、日本の製造業が持つ「すり合わせ構造」は、DX時代において再び競争力の源泉となる。図面と実物を突き合わせ、因果を読み解く設計者の思考こそ、品質・再現性・信頼性を決定づける核心である。

       

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      1. 誤解されがちな国際比較

      しばしば日本の製造業は、人件費が高い、デジタル化が遅い、市場対応が遅い、といった表層的な指摘で語られる。しかし現場で見える実態は異なる。日本の真の競争力は、設計・加工・品質を一体で最適化する“すり合わせ構造”にある。これは単なる熟練技能ではなく、図面解釈力、工程理解、不具合因果の共有、といった設計起点の統合能力で成立している。

       

      2. 分業モデルとの本質的な違い

      海外の多くは、設計=仕様決定、製造=実行、という分業型である。一方、日本では、設計と製造が相互に修正し合う循環構造を持つ。この違いこそが、高信頼・高耐久・低不良率を生み出してきた源泉である。そして重要なのは、この構造はDX時代にむしろ価値を増すという点である。

       

      3. DX時代に「日本型設計」が再評価される理由

      (1) データだけでは品質は上がらない

      近年、製造DXは、IoT、AI解析、デジタルツインといった技術中心で語られがちである。しかし現場で明らかなのは、因果を理解しないデータ活用は品質改善につながらないという現実である。ここで必要となるのが、設計と現象を結びつける思考、すなわち機械設計者の構造理解力である。

       

      (2)日本の強みは「意味づけできる設計」

      日本の設計者は伝統的に

      • なぜこの公差なのか?
      • なぜこの形状なのか?
      • なぜこの工程順なのか?


      を説明できる文化を持つ。これは単なる経験ではなく、設計知の体系化能力である。DXとは本来、この設計知を再現可能な形で共有する仕組みであり、日本はその基盤をすでに持っている。

       

      4. 工程設計力こそ次の競争軸になる

      (1)製品差別化から工程差別化へ

      グローバル市場では、製品機能だけでの差別化は急速に難しくなっている。代わって重要になるのが、

      • 安定供給
      • 品質再現性
      • 低環境負荷


      といった工程起点の競争力である。これはまさに、日本が長年培ってきた領域である。

       

      (2)機械設計者の役割変化

      ここで設計者に求められるのは、形状設計だけではない。

      • 加工ばらつきの吸収
      • 調整不要構造
      • 長期信頼性


      を初期段階で決める工程内包型設計である。つまり設計とは、図面を描く行為ではなく、品質を先に決める行為へと変化している。

       

      5. 技能依存から構造再現へ ― 日本が先行できる領域

      (1)世界共通の課題としての技能消失

      技能者不足は日本特有ではない。むしろ先進国共通の問題である。だからこそ重要になるのは、技能を不要にする設計思想である。

       

      (2)日本の現場が持つヒント

      日本の改善活動は本質的に、

      • 調整を減らす
      • 誤作業を防ぐ
      • 再現性を高める


      方向で進化してきた。これはすなわち、技能の構造化に他ならない。この蓄積こそが、次世代設計の土台となる。

       

      6. 設計回帰は「過去への後退」ではない

      (1)デジタルと設計は対立しない

      設計重視という言葉は、しばしばアナログ回帰と誤解される。しかし実際は逆である。設計を中心に据えることで、DX・GX・自動化が初めて統合される。

       

      (2)2026年以降の本質的競争

      これから問われるのは、最新ツールの導入速度ではない。変化条件を読み、構造を定義し再現性を設計できるかという、設計者の本質的力量である。そしてこの領域において、日本は依然として強い潜在力を持つ。

       

      7. おわりに

      日本の製造業が直面する危機は、単なる衰退ではない。それはむしろ、設計中心へ回帰する転換点とも言える。

      • すり合わせ構造
      • 工程設計力
      • 再現性思想

       

      これらはすべて、日本が長年積み重ねてきた資産である。2026年以降の競争は、安さでも速さでもなく、構造を描けるかどうかで決まる。その主役は、再び機械設計者である。

       

       次回予告(第3回)

      次回は、「これからの機械設計者に求められる役割と能力」をテーマに、「描く人」から「構造を定義する人」への転換、若手設計者に必要な思考力、現場と経営をつなぐ設計言語について、実務事例を交えながら具体的に考察する。

       

       

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      この記事の著者

      森内 眞

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