【2025年ものづくり白書から】2026年 日本の製造業・機械産業の注目動向と展望~機械部門技術士が読み解く次の一手~

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【2025年ものづくり白書から】2026年 日本の製造業・機械産業の注目動向と展望~機械部門技術士が読み解く次の一手~

【目次】

    日本の製造業は今、大きな転換点に立っている。人手不足、エネルギー制約、地政学リスク、そして急速に進むデジタル化と脱炭素化。こうした複合課題に対し、従来の「改善の積み重ね」だけでは限界が見え始めている。2025年版ものづくり白書は、こうした環境変化を背景に、製造業の構造転換と人・技術・データの再定義を強く示唆している。今回は、機械部門の技術士としての現場視点を交えながら、2026年に向けて日本の製造業、特に機械産業が注目すべき動向と展開を考える。2026年に向けて日本の製造業は、個別の自動化やDXではなく、機械設計者による『工程・構造・条件の再定義』が問われるフェーズに入っている。人手不足、DX、脱炭素、技能伝承は、設計の上流判断によって初めて統合される。

    2025年版 ものづくり白書(令和6年度 ものづくり基盤技術の振興施策)令和7年5月  経済産業省 厚生労働省 文部科学省 概 要

    1.  人手不足は「自動化」から「再設計」のフェーズへ

    1.1 労働力不足は構造問題として固定化

    白書が繰り返し指摘する通り、製造現場の人手不足は一時的な現象ではない。少子高齢化により、技能者が自然に戻ってくる未来は想定できない。

     

    1.2 2026年のキーワードは「部分最適から工程再設計へ」

    2026年に向けて重要なのは、ロボット導入・自動機追加といった点の自動化ではなく、工程全体を見直すプ...

    【2025年ものづくり白書から】2026年 日本の製造業・機械産業の注目動向と展望~機械部門技術士が読み解く次の一手~

    【目次】

      日本の製造業は今、大きな転換点に立っている。人手不足、エネルギー制約、地政学リスク、そして急速に進むデジタル化と脱炭素化。こうした複合課題に対し、従来の「改善の積み重ね」だけでは限界が見え始めている。2025年版ものづくり白書は、こうした環境変化を背景に、製造業の構造転換と人・技術・データの再定義を強く示唆している。今回は、機械部門の技術士としての現場視点を交えながら、2026年に向けて日本の製造業、特に機械産業が注目すべき動向と展開を考える。2026年に向けて日本の製造業は、個別の自動化やDXではなく、機械設計者による『工程・構造・条件の再定義』が問われるフェーズに入っている。人手不足、DX、脱炭素、技能伝承は、設計の上流判断によって初めて統合される。

      2025年版 ものづくり白書(令和6年度 ものづくり基盤技術の振興施策)令和7年5月  経済産業省 厚生労働省 文部科学省 概 要

      1.  人手不足は「自動化」から「再設計」のフェーズへ

      1.1 労働力不足は構造問題として固定化

      白書が繰り返し指摘する通り、製造現場の人手不足は一時的な現象ではない。少子高齢化により、技能者が自然に戻ってくる未来は想定できない。

       

      1.2 2026年のキーワードは「部分最適から工程再設計へ」

      2026年に向けて重要なのは、ロボット導入・自動機追加といった点の自動化ではなく、工程全体を見直すプロセス再設計(工程思想の刷新)である。機械設計者には「この作業は本当に人がやるべきか」「そもそもこの構造・公差は必要か」という上流からの設計判断が強く求められる。

       

      【2025年ものづくり白書から】2026年 日本の製造業・機械産業の注目動向と展望~機械部門技術士が読み解く次の一手~

       

      2.  DXは「IT化」ではなく「設計と現場をつなぐ言語」

      2.1 進まなかった理由は技術ではない

      DXが進まなかった最大の理由は、ツール不足ではなく、設計・現場・経営の言語が分断されていたことにある。

       

      2.2 2026年は“設計DX”が主戦場になる

      2026年に進展が期待されるのは、設計根拠のデータ化・図面と製造条件の紐づけ・不具合履歴の設計フィードバックです。つまり、設計知のデジタル継承である。機械設計者は「形を決める人」から「情報を構造化する人」へと役割を広げる必要がある。

       

      3.脱炭素は“コスト制約”ではなく“設計条件”になる

      3.1 環境対応は避けられない設計前提

      白書では、GX(グリーントランスフォーメーション)が単なる環境対策ではなく、競争条件そのものになりつつあることが示されている。

       

      3.2 機械設計に求められる視点の変化

      2026年以降、設計では次の視点が重要になる。

      • 材料選定(再生材・軽量化)
      • 寿命設計・修理性
      • エネルギー効率

      これは「制約が増える」のではなく、設計の評価軸が増えるということである。

       

      4.技能伝承は「教える」から「再現できる設計」へ

      4.1 属人技能の限界

      ベテラン技能者の引退は避けられない。白書は、暗黙知依存の危うさを明確に示している。

       

      4.2 2026年の解は“技能を前提にしない設計”

      重要なのは、誰が作っても品質が出る・調整が最小化される、ロバストな機械設計である。これは設計者の責任範囲が広がる一方で、設計価値が再評価される流れでもある。

       

      5.2026年、機械設計者に求められる姿勢

      5.1 技術士視点での結論

      2026年の製造業で問われるのは、最新技術を知っているかではなく、変化を前提に設計を組み立てられるかである。

       

      5.2 「描ける設計者」が価値を持つ

      構想を図で示し、現場・経営と対話できる設計者こそが、次の製造業を支える存在となる。

       

      6.  まとめ

      2025年ものづくり白書が示しているのは、日本の製造業の悲観論ではない。むしろ、設計と現場をつなげられる人材への強い期待である。2026年は「設計者が再び主役に立つ年」になる可能性を秘めている。本稿では、日本の製造業が直面する複数の課題が、いずれも「設計のあり方」に収束しつつあることを概観した。次回は「なぜ日本の製造業は“設計”で再び競争力を取り戻せるのか」をテーマに、現場起点のすり合わせ力、工程設計力、再現性のある技術体系といった視点から、日本型ものづくりが持つ構造的な強みを掘り下げていく。さらに第3回では、これからの機械設計者に求められる役割と能力、すなわち「描く人」から「構造を定義する人」への転換について、設計実務の具体例を交えながら考察する予定である。

      ※本連載は、筆者の経験と見解に基づくものである。

       

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      この記事の著者

      森内 眞

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