テンプレート方式・データベース方式の図面管理とは

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  今回は、金型メーカー・機械装置製造メーカーなど、社内で継続的に図面を更新していく場合の管理方法について解説します。ターゲットとしているのは、機械装置を、別々の顧客ユーザー向けに、さらに別々の設計者がアレンジして設計し、それをまた更にアレンジ設計して使いまわしていくようなケースです。1人で管理していくのでしたら、他者に申し伝えることは必要ないので、自分のメモやWordかEXCELで管理するなど、自己管理だけで済むのですが、今回の前提条件として、複数の設計者で、管理・更新していく場合に限定します。
 
 企業として本来考えていかなければならない統一ルールを共有していかなければならない場合において必要となる運用方法について、まとめて解説します。図面を、複数設計者で管理していく場合、アレンジ設計した図面は、それぞれ個人の管理のように見えますが、例えば、社内で締結方法を統一したいとか、市販部品の種類や購入先を統一し、購買部門の効率化・ムダ削減を図りたいなど、これらの運用方法をまとめてみました。  
 
 実際に運用していく方法としては、テンプレート方式と、データベース方式の2つがあります。
 

1. テンプレート方式

 
 テンプレート方式は、顧客ごとや、製品ごとで、図面の種類がさほど多くない場合に採用します。逆に、後述するデータベース方式は、仕様により管理する図面の種類が多いときに採用します。
 
 具体的には、金型や機械装置ごとに、アレンジ設計の基礎となるべき図面(これをテンプレートを言います)を定義し、サーバーなどに保存しておき、設計者はそこからコピーして再利用設計します。
 
 運用上、必要となるルールとしては、新たに採用したサブアセンブリ部品や市販部品などがあれば、テンプレートに盛り込んで更新します。ただし、それは誰でも好き勝手にやっていいというものではなく、社内でその作業が許されるテンプレートの管理責任者を選任することと、そのテンプレートを再利用する設計者それぞれに対する編集権限の管理が必要になります。
 
 具体的にテンプレートを使って再利用設計する状況を考えてみますと、下図のようになると思います。
 図面管理
 
 まず、テンプレートどおりで、そのまま流用できるのであれば、そのまま使いますし、例えば、その金型や機械装置の中で、以前よりもロット販売などで安くなった市販部品などがあれば、その時点で変更し、テンプレートを更新します。もちろん、テンプレート図面の更新作業は許可制とし、権限がある設計者だけが行います。
 
 次に、テンプレートどおりでは設計できない場合ですが、この場合はテンプレート図面を元に、アレンジして設計を行うことになりますが、これも好き勝手にアレンジして良いというわけではありません。例えば、市販部品の使い方や、サブアセンブリ部品の寸法の決め方についても、一定のルールを設けなければ、自己流図面が社内にどんどん出来ていってしまいます。
 
 そこで、上図に記されているように、「派生のやり方にルールが必要」となるわけで、ここで社内で統一された設計基準が必要になります。通常、こうしたルールは、設計企画書とか設計標準書といった名称で、100ページとか200ページといったボリュームのものを各社作っております。
 
 また、この設計標準書には、部品形状だけではなく、なぜそういった仕様を採用したのかについて説明が記載されている必要があります。いわゆる「設計意図」です。これにより、アレンジ設計の意思ベクトルを統一することができます。また、もし自社が外注設計を使っている場合には、この設計標準書を外注先にも横展開する必要があります。
 

2. データベース方式

 
 データベース方式は、前述したように、顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多いときに採用します。具体的には、下図の事例のような流れの中で、共有するべき情報を管理していく際に採用します。
 
 図面管理
 
 具体的な運用方法としては、設計者が自分の設計が終った時点で、どの親品番の図面を使ったか、またどのような変更を行ったかをデータベースに登録していきます。
 
 図面管理
 
 例えば、上図では、新たに派生品Dから派生品Hの図面をアレンジ設計しています。そのときに、他の派生品で発生した、不具合の修正や、顧客ユーザーや組立て現場から上がってきた仕様変更の要望などを盛り込まなければならない場合があります。そうした情報を、残らず新規の設計に盛り込むため、各設計者は自分の設計が終った時点で、どのような変更・修正を行ったかをデータベースに登録していきます。
 
 また、新たにアレンジ設計を行う際には、設計者は、過去にさかのぼって親品番とする派生品図面を検索し、その子や孫となる派生品図面に登録されている情報(修正・変更した内容)を参照しながら、最新の市販部品やサブアセンブリ部品を使って設計を行っていきます。データベースは、このように活用しながら、複数の設計者で情報を共有していくために利用します。
 
 この方式のメリットとして、図の一番上位にあるテンプレートというべき「マスター」図面について、基本的には、最新の状態に更新して管理していく必要がありません。顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多い場合には、テンプレート(マスター)を作っても、管理するべきテンプレート図面が多くなるだけで、せっかく更新しても、それぞれのテンプレートは使う頻度は少なく、手間をかけ...
  
  今回は、金型メーカー・機械装置製造メーカーなど、社内で継続的に図面を更新していく場合の管理方法について解説します。ターゲットとしているのは、機械装置を、別々の顧客ユーザー向けに、さらに別々の設計者がアレンジして設計し、それをまた更にアレンジ設計して使いまわしていくようなケースです。1人で管理していくのでしたら、他者に申し伝えることは必要ないので、自分のメモやWordかEXCELで管理するなど、自己管理だけで済むのですが、今回の前提条件として、複数の設計者で、管理・更新していく場合に限定します。
 
 企業として本来考えていかなければならない統一ルールを共有していかなければならない場合において必要となる運用方法について、まとめて解説します。図面を、複数設計者で管理していく場合、アレンジ設計した図面は、それぞれ個人の管理のように見えますが、例えば、社内で締結方法を統一したいとか、市販部品の種類や購入先を統一し、購買部門の効率化・ムダ削減を図りたいなど、これらの運用方法をまとめてみました。  
 
 実際に運用していく方法としては、テンプレート方式と、データベース方式の2つがあります。
 

1. テンプレート方式

 
 テンプレート方式は、顧客ごとや、製品ごとで、図面の種類がさほど多くない場合に採用します。逆に、後述するデータベース方式は、仕様により管理する図面の種類が多いときに採用します。
 
 具体的には、金型や機械装置ごとに、アレンジ設計の基礎となるべき図面(これをテンプレートを言います)を定義し、サーバーなどに保存しておき、設計者はそこからコピーして再利用設計します。
 
 運用上、必要となるルールとしては、新たに採用したサブアセンブリ部品や市販部品などがあれば、テンプレートに盛り込んで更新します。ただし、それは誰でも好き勝手にやっていいというものではなく、社内でその作業が許されるテンプレートの管理責任者を選任することと、そのテンプレートを再利用する設計者それぞれに対する編集権限の管理が必要になります。
 
 具体的にテンプレートを使って再利用設計する状況を考えてみますと、下図のようになると思います。
 図面管理
 
 まず、テンプレートどおりで、そのまま流用できるのであれば、そのまま使いますし、例えば、その金型や機械装置の中で、以前よりもロット販売などで安くなった市販部品などがあれば、その時点で変更し、テンプレートを更新します。もちろん、テンプレート図面の更新作業は許可制とし、権限がある設計者だけが行います。
 
 次に、テンプレートどおりでは設計できない場合ですが、この場合はテンプレート図面を元に、アレンジして設計を行うことになりますが、これも好き勝手にアレンジして良いというわけではありません。例えば、市販部品の使い方や、サブアセンブリ部品の寸法の決め方についても、一定のルールを設けなければ、自己流図面が社内にどんどん出来ていってしまいます。
 
 そこで、上図に記されているように、「派生のやり方にルールが必要」となるわけで、ここで社内で統一された設計基準が必要になります。通常、こうしたルールは、設計企画書とか設計標準書といった名称で、100ページとか200ページといったボリュームのものを各社作っております。
 
 また、この設計標準書には、部品形状だけではなく、なぜそういった仕様を採用したのかについて説明が記載されている必要があります。いわゆる「設計意図」です。これにより、アレンジ設計の意思ベクトルを統一することができます。また、もし自社が外注設計を使っている場合には、この設計標準書を外注先にも横展開する必要があります。
 

2. データベース方式

 
 データベース方式は、前述したように、顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多いときに採用します。具体的には、下図の事例のような流れの中で、共有するべき情報を管理していく際に採用します。
 
 図面管理
 
 具体的な運用方法としては、設計者が自分の設計が終った時点で、どの親品番の図面を使ったか、またどのような変更を行ったかをデータベースに登録していきます。
 
 図面管理
 
 例えば、上図では、新たに派生品Dから派生品Hの図面をアレンジ設計しています。そのときに、他の派生品で発生した、不具合の修正や、顧客ユーザーや組立て現場から上がってきた仕様変更の要望などを盛り込まなければならない場合があります。そうした情報を、残らず新規の設計に盛り込むため、各設計者は自分の設計が終った時点で、どのような変更・修正を行ったかをデータベースに登録していきます。
 
 また、新たにアレンジ設計を行う際には、設計者は、過去にさかのぼって親品番とする派生品図面を検索し、その子や孫となる派生品図面に登録されている情報(修正・変更した内容)を参照しながら、最新の市販部品やサブアセンブリ部品を使って設計を行っていきます。データベースは、このように活用しながら、複数の設計者で情報を共有していくために利用します。
 
 この方式のメリットとして、図の一番上位にあるテンプレートというべき「マスター」図面について、基本的には、最新の状態に更新して管理していく必要がありません。顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多い場合には、テンプレート(マスター)を作っても、管理するべきテンプレート図面が多くなるだけで、せっかく更新しても、それぞれのテンプレートは使う頻度は少なく、手間をかけて管理するほどメリットがありません。
 
 そこで、どの世代の派生品図面を使っても、最新の状態の情報を、別途データベースから参照することで、設計者全員が最新の情報を参照できる方法の方を採用します。
 
 データベースのテーブル設計としては、次のような構成になると思います。
 
図面管理
 
  留意すべき点としては、検索する設計者が正しい情報にたどり着けるなど、検索性の良いデータベース設計に配慮することでしょう。実際に運用がはじまると、データベースへの登録など間接工数は増える傾向になりますが、後工程である加工や組立てで発見される設計ミスによる修正ロスなど、会社全体でのロス削減など、導入効果は全体最適で考えていくべきでしょう。
 
 以上、複数設計者により、継続的に更新していく図面を社内で共有管理していく方法についてでした。企業として本来考えていかなければならない統一ルールを共有して全体最適で考えましょう。
 

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この記事の著者

村上 英樹

金型・部品加工業専門コンサルティングです!販路開拓・生産改善・外注費削減の3つを支援するトライアングル支援パッケージ、技術を起点とする新しい経営コンサルタント

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