SCMで優位に立つ

更新日

投稿日

1.「つなぎ」としてのSCMが必要とされる理由 

 時間の進みが早くなるとどのようなことが起きるでしょうか? ゆっくり役割分担を決めて回すような余裕がなくなり、経営業務のつなぎの部分に問題が現れてきます。時間の進みが早くなることにより、今までの役割分担が全体最適ではなく、すべてのパラダイムが部分最適でしかなかったことに気づきはじめるのです。具体的には、生産・販売・資材調達・製品開発のそれぞれがそれぞれの世界で部分最適のみに邁進していることを指します。このことで露呈してくる問題は売れ残りの過剰在庫、モノの到着と業務のタイミングのずれによる機会損失などです。植物の成長速度を早送りのフィルムで見ることと同様に、全体のスピードが速くなることでサプライチェーンの現象や問題を観察しやすくなります。 

 人間の一生(80年)の変化が犬の一生(8年)の時間で変わるとされる、いわゆるドッグイヤーのスピードは、情報複写のスピードに起因しています。ビジネスが高速で回転する時代では、業務全体のスピードを顧客を起点に制御し、全体を調整(同期化)する「つなぎ」のマネジメントとしてのSCMが不可欠となりました。  

 

2.ITソリューションとしてのSCM 

 IT経営が注目されています。その中でITソフトウェアベンダーによりSCMは新しい発展をもたらされています。SCMに関して、ERP(エンタープライズ・リソース・プラニング)ベンダーや、現実の能力制約を盛り込んだ計画系の意思決定ツール専門のAPS(アドバンスド・プラニング&スケジューリング)ベンダーなど、多くのソフトウェアベンダーがSCMソリューションを提供し、実用化されています。欧米を含めたサプライチェーンマネジメントのブームは、これらのITベンダーによる新しいコンセプトが起点となっているといえます。 

 経営の可視性(ビジビリティ)は、経営指標に対する最適化への意思決定を情報システムに支援させるもっとも重要な機能です。具体的には、在庫や販売・出荷・生産・資材調達の供給速度の状況把握と予測、そしてキャッシュフローや利益についての全体最適の目標を、サプライチェーンマネジメントの関係者が共有することといえます。これらの実現には、企業全体でデータベースに最新の状況をリアルタイムに反映させることが必要となります。ERPは計測装置の役割を持っており、状況をモニタリングし表示します。最適化のアルゴリズムは最適な判断を自動的に行うドライバー、又はオペレーターを補助する自動制御装置に相当します。 

 ERPAPSベンダーによるソリューションの提案は...

1.「つなぎ」としてのSCMが必要とされる理由 

 時間の進みが早くなるとどのようなことが起きるでしょうか? ゆっくり役割分担を決めて回すような余裕がなくなり、経営業務のつなぎの部分に問題が現れてきます。時間の進みが早くなることにより、今までの役割分担が全体最適ではなく、すべてのパラダイムが部分最適でしかなかったことに気づきはじめるのです。具体的には、生産・販売・資材調達・製品開発のそれぞれがそれぞれの世界で部分最適のみに邁進していることを指します。このことで露呈してくる問題は売れ残りの過剰在庫、モノの到着と業務のタイミングのずれによる機会損失などです。植物の成長速度を早送りのフィルムで見ることと同様に、全体のスピードが速くなることでサプライチェーンの現象や問題を観察しやすくなります。 

 人間の一生(80年)の変化が犬の一生(8年)の時間で変わるとされる、いわゆるドッグイヤーのスピードは、情報複写のスピードに起因しています。ビジネスが高速で回転する時代では、業務全体のスピードを顧客を起点に制御し、全体を調整(同期化)する「つなぎ」のマネジメントとしてのSCMが不可欠となりました。  

 

2.ITソリューションとしてのSCM 

 IT経営が注目されています。その中でITソフトウェアベンダーによりSCMは新しい発展をもたらされています。SCMに関して、ERP(エンタープライズ・リソース・プラニング)ベンダーや、現実の能力制約を盛り込んだ計画系の意思決定ツール専門のAPS(アドバンスド・プラニング&スケジューリング)ベンダーなど、多くのソフトウェアベンダーがSCMソリューションを提供し、実用化されています。欧米を含めたサプライチェーンマネジメントのブームは、これらのITベンダーによる新しいコンセプトが起点となっているといえます。 

 経営の可視性(ビジビリティ)は、経営指標に対する最適化への意思決定を情報システムに支援させるもっとも重要な機能です。具体的には、在庫や販売・出荷・生産・資材調達の供給速度の状況把握と予測、そしてキャッシュフローや利益についての全体最適の目標を、サプライチェーンマネジメントの関係者が共有することといえます。これらの実現には、企業全体でデータベースに最新の状況をリアルタイムに反映させることが必要となります。ERPは計測装置の役割を持っており、状況をモニタリングし表示します。最適化のアルゴリズムは最適な判断を自動的に行うドライバー、又はオペレーターを補助する自動制御装置に相当します。 

 ERPAPSベンダーによるソリューションの提案は、インターネットをプラットフォームにしたマーケットプレースや売り手と買い手がeマーケットで売り買いするB2Bのインフラ作りに移っています。このことで企業組織の設計は大きく進化しつつあります。ソレクトロン、シスコ・システムズなどの名高いサプライチェーンマネジメントのモデル成功企業は、インターネットやWAN(広域ネットワーク)による企業間の情報ネットワークをサプライチェーンマネジメントのインフラとして活用するビジネスモデルの見本となっています。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

今岡 善次郎

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
SCM効率を評価するKPIの新提案 SCM最前線 (その14)

 前回のその13に続いて解説します。   1. SCMの改善・改革    前回までの連載では、現在SCMには効率を適切に評価す...

 前回のその13に続いて解説します。   1. SCMの改善・改革    前回までの連載では、現在SCMには効率を適切に評価す...


配送のジャストインタイム、クロスドッキングとは

   物流は、メーカーの工場から小売店への小口配送までの間に、卸またはメーカーの物流倉庫という大口の配送・保管工程が介在するのが一般的です...

   物流は、メーカーの工場から小売店への小口配送までの間に、卸またはメーカーの物流倉庫という大口の配送・保管工程が介在するのが一般的です...


格差が拡がるSCM   SCM最前線(その2)

 SCM最前線、前回のその1に続いて解説します。   1.SCM達成度は範囲よりも質が重要     これまで、SCM...

 SCM最前線、前回のその1に続いて解説します。   1.SCM達成度は範囲よりも質が重要     これまで、SCM...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
顧客のコストダウンのための選択肢 顧客のニーズをつかむには(その3)

  ◆ 物流形態の変更  意識の高い顧客は価格だけの改定で物流コストダウンを行うことの限界を知っています。もちろん、価格についてもその仕...

  ◆ 物流形態の変更  意識の高い顧客は価格だけの改定で物流コストダウンを行うことの限界を知っています。もちろん、価格についてもその仕...


21世紀ものづくり日本のサプライチェーンマネジメント

 1980年代から1990年代の20世紀末は日本のものづくり経営が世界で注目されましたが、バブル崩壊で日本経済が低迷し、日本的経営への自虐的批判が噴出して...

 1980年代から1990年代の20世紀末は日本のものづくり経営が世界で注目されましたが、バブル崩壊で日本経済が低迷し、日本的経営への自虐的批判が噴出して...


部下育成と作業観察 物流技術標準と物流作業標準を設定する(その3)

       1. 作業要件一覧表、管理項目一覧表  作業要件一覧表を作成することで、物流監督者は自身の職場にどのような仕事があり、それをこな...

       1. 作業要件一覧表、管理項目一覧表  作業要件一覧表を作成することで、物流監督者は自身の職場にどのような仕事があり、それをこな...