偶然のばらつきでも因子を絞れば解析できる 慢性不良への対応 (その2)

投稿日

 慢性不良の要因の一つが偶然のばらつきであることを、アルミダイカストの例で前回説明しました。その例では11の因子を自動測定しており、すべてが規則性を持たずばらついていました。影響の大きい因子の数が絞り込めたならば、次は数値(データ)解析を試みることになります。

 フィルムコンデンサーはアルミを蒸着した樹脂のフィルムを2枚上下にずらして重ね、丸めて両端にリード線を取り付けエポキシ樹脂をコーティングして作られていました。最大の慢性不良は「容量不良」で全体の半数を占めていて、そのため最終工程で全数容量測定をしていました。±〇〇μFという規格は許容範囲が大きい程等級が低く評価されます。長い間慢性不良とあきらめていたのは、この品質特性を決める因子がたくさんあり、かつ管理が出来ない(ばらつきがランダムに発生する)と思われていたからです。

 ところが1つずつ実際の各因子のばらつきそれぞれ100データを測定してみると、樹脂の比誘電率のばらつきはほとんど測定誤差レベルであることがわかりました。アルミの蒸着厚みもまったく問題なかったのです。 

 最終的に「面積」が残りましたので、100個の製品を壊して測定したところ、フィルムのズラし幅とフィルムの巻長が両方とも大きくばらついていることが分かりました。ばらついている因子がわかれば改善は大きく前進です。

 驚くべきことに、製造規格にこのズラし幅と巻長の許容範囲が規定されていました。先人はその重要性を知っていたのでしょう。しかしまったく伝えられていませんでした。これによってその後のデータ解析は楽になりました。

 「面積=ズラし幅×巻長」であり、面積はきれいに容量値と比例関係にありました。今までは段取り時に数個壊して(ばらして)測定してOKを出していたので、この2つの因子は大きくばらつくことは無いと考えられていたのです。

 巻き工程の係長は、...

 慢性不良の要因の一つが偶然のばらつきであることを、アルミダイカストの例で前回説明しました。その例では11の因子を自動測定しており、すべてが規則性を持たずばらついていました。影響の大きい因子の数が絞り込めたならば、次は数値(データ)解析を試みることになります。

 フィルムコンデンサーはアルミを蒸着した樹脂のフィルムを2枚上下にずらして重ね、丸めて両端にリード線を取り付けエポキシ樹脂をコーティングして作られていました。最大の慢性不良は「容量不良」で全体の半数を占めていて、そのため最終工程で全数容量測定をしていました。±〇〇μFという規格は許容範囲が大きい程等級が低く評価されます。長い間慢性不良とあきらめていたのは、この品質特性を決める因子がたくさんあり、かつ管理が出来ない(ばらつきがランダムに発生する)と思われていたからです。

 ところが1つずつ実際の各因子のばらつきそれぞれ100データを測定してみると、樹脂の比誘電率のばらつきはほとんど測定誤差レベルであることがわかりました。アルミの蒸着厚みもまったく問題なかったのです。 

 最終的に「面積」が残りましたので、100個の製品を壊して測定したところ、フィルムのズラし幅とフィルムの巻長が両方とも大きくばらついていることが分かりました。ばらついている因子がわかれば改善は大きく前進です。

 驚くべきことに、製造規格にこのズラし幅と巻長の許容範囲が規定されていました。先人はその重要性を知っていたのでしょう。しかしまったく伝えられていませんでした。これによってその後のデータ解析は楽になりました。

 「面積=ズラし幅×巻長」であり、面積はきれいに容量値と比例関係にありました。今までは段取り時に数個壊して(ばらして)測定してOKを出していたので、この2つの因子は大きくばらつくことは無いと考えられていたのです。

 巻き工程の係長は、「後工程での取り扱いでズラし幅が延びたり縮んだりするのではないか」「熱を掛けるのでその熱履歴でフィルム自体が伸びるのではないか」などと主張されました。ここまでくれば巻き工程の係長の経験から因子は絞られます。

 偶然のばらつきと思っていてもそのばらつきの大きさを調べて、ばらついている要因を見つけることができれば、数値解析が有効になります。問題が分かれば半分以上解決したも同じで、あとは対策を考えだけですね。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石塚 健志

330件の指導実績/工場管理全般、中でも省エネルギー、歩留り・品質改善を得意とします

330件の指導実績/工場管理全般、中でも省エネルギー、歩留り・品質改善を得意とします


「品質マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
設計システム:守りの設計品質改善を前提とした場合

 守りの設計品質改善を前提とした設計システムとはどのようなものでしょうか。設計システムは、図1で示すように、設計プロセスと設計技術から成り立っています。I...

 守りの設計品質改善を前提とした設計システムとはどのようなものでしょうか。設計システムは、図1で示すように、設計プロセスと設計技術から成り立っています。I...


その他の統計手法  その1、箱ひげ図 / Box and Whisker plot

 ヒストグラムは分布形状を知る上で非常に有効なツールですが、形状を形作るにはそれなりのデータ数が必要となります。サンプル数が5~20程度と少ないと歪な...

 ヒストグラムは分布形状を知る上で非常に有効なツールですが、形状を形作るにはそれなりのデータ数が必要となります。サンプル数が5~20程度と少ないと歪な...


【快年童子の豆鉄砲】(その117)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(4)

  前回の【快年童子の豆鉄砲】(その116)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(3)からの続きです。 2. 何故QCサークル活動が必要...

  前回の【快年童子の豆鉄砲】(その116)QCサークル活動スパイラルアップ戦略(3)からの続きです。 2. 何故QCサークル活動が必要...


「品質マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
品質管理をやさしく実践し、極意に至る

  ある企業から、品質向上に向けて新たなスタートを切るべく、「品質管理をやさしく実践し、極意に至る」道について講演してほしいとの要請を受けました。難しい話...

  ある企業から、品質向上に向けて新たなスタートを切るべく、「品質管理をやさしく実践し、極意に至る」道について講演してほしいとの要請を受けました。難しい話...


品質コストマネジメント導入について

       1. 想定事例  従業員1000人の印刷会社です。会社は、QMSのマネジメントシステムの認証を取得していますが、QMS活動は営業...

       1. 想定事例  従業員1000人の印刷会社です。会社は、QMSのマネジメントシステムの認証を取得していますが、QMS活動は営業...


掃除のおばさんの持つ貴重な情報

 私が昔半導体の工場でクリーン化を担当していた頃の話です。頻繁に現場に入っていましたので、時間によってはクリーン廊下で掃除をしているおばさんに会うことも度...

 私が昔半導体の工場でクリーン化を担当していた頃の話です。頻繁に現場に入っていましたので、時間によってはクリーン廊下で掃除をしているおばさんに会うことも度...