中国工場での品質管理

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1. 教育は教える人の方が勉強になる

 
 中国工場の管理者に対する品質管理教育を実施してわかったのは、工場の管理者の多くは系統だった教育を受けたことがないこと。そのために言葉は知っているが、表面的な理解になっていることでした。ですから教育で必要なのは、本質を理解させることです。
 
 さて、管理者教育の次は作業者への教育に取り組みます。どんなに立派なマニュアルがあっても、最終的には作業者の意識を高めなければ、品質は確保できません。
 
 通常作業者への教育をわたしが実施することはありません。管理者に先生役となって実施してもらいます。管理者に自分たちが受けた教育内容を今度は自分が作業者に対して教えてもらいます。これは管理者にとって、負担になります。ここで言う負担とは、工数的な面もありますが大きいのは精神的な負担です。要するにプレッシャーになるということです。
 
 皆さんも経験があると思いますが、教育は受ける人よりも教える人の方が勉強になります。
 
 教育を受ける側はいたって気楽ですが、立場が変わって教える側に回ると、その準備、特に教える内容についてしっかり理解していないと相手には伝わりません。朝礼で注意事項を話すときとは、まったく違います。
 
 以前支援していた中国工場で作業者教育の段階になり、管理者に先生役をやってもらい、その教育現場を見学しました。その日は何人かいる組長の内のある1人の組長が先生役をやっていました。
 
 一生懸命話しているのはよくわかりましたが印象的だったのは、その日の教育が終ったあとでした。組長は自分の机に戻るなり「ふー」と息をつきました。実は緊張していたことがわかりました。
 
 組長の机の上には、彼が必死で手書きした原稿がありました。教育で話す内容を彼なりに必死でまとめて、原稿として準備していたのです。それを見たときは、組長の頑張りと管理者に先生をやってもらった狙いが見事にはまったことにうれしくなりました。
 
 教育というのは、受ける側の成長も促しますが、それ以上に教育する側の成長を促すのです。先生役を管理者がやることによって管理者が成長すれば、工場全体のレベルが上がることつながります。
 
品質管理教育
  

2. 中国企業には目指す品質を具体的に示すこと

 
 中国企業(メーカー)の品質がよくない理由は、企業によっていろいろあります。特に感じているのは、顧客が求めている品質がどういうものかを知らない、それが最大の理由ではないかと思っています。つまり自分たちが作っているものよりもよいものを見たことがない、その存在を知らないということなのです。
 
 もっとよい品質のものが欲しいと、いくらこちらから要求しても、よい品質がどういうものかを知らなければ、そういうものが存在していることを知らなければ、作ることはできません。
 
 中国企業の現場の責任者やスタッフに「大事なことは何か?」と質問すると、10人中9人は品質が大事だと言います。上層部からも顧客からも品質、品質と言われているので、それが大事だという認識は持っているのです。
 
 しかし、実際の製品の品質は、一向によくなりません。理由は、前述したようによい品質とはどういうものかを知らないからです。中国企業の現場の人たちも、自分たちが作った製品の品質が最高のものだとは思っていないようですが、悪いとも思っていないのです。
 
 日系の中国工場であれば、目指す品質は日本人がわかっていますし、よいものを中国人スタッフ見せることもできます。しかし、中国企業の場合、作るものによってはそれが簡単ではないのです。目指すべきよい品質のものを見ることが出来るとは限らないのです。
 
 この点を取引している日本企業は理解しておく必要があります。日本企業が頭で描いているよい品質の状態や製品を...

1. 教育は教える人の方が勉強になる

 
 中国工場の管理者に対する品質管理教育を実施してわかったのは、工場の管理者の多くは系統だった教育を受けたことがないこと。そのために言葉は知っているが、表面的な理解になっていることでした。ですから教育で必要なのは、本質を理解させることです。
 
 さて、管理者教育の次は作業者への教育に取り組みます。どんなに立派なマニュアルがあっても、最終的には作業者の意識を高めなければ、品質は確保できません。
 
 通常作業者への教育をわたしが実施することはありません。管理者に先生役となって実施してもらいます。管理者に自分たちが受けた教育内容を今度は自分が作業者に対して教えてもらいます。これは管理者にとって、負担になります。ここで言う負担とは、工数的な面もありますが大きいのは精神的な負担です。要するにプレッシャーになるということです。
 
 皆さんも経験があると思いますが、教育は受ける人よりも教える人の方が勉強になります。
 
 教育を受ける側はいたって気楽ですが、立場が変わって教える側に回ると、その準備、特に教える内容についてしっかり理解していないと相手には伝わりません。朝礼で注意事項を話すときとは、まったく違います。
 
 以前支援していた中国工場で作業者教育の段階になり、管理者に先生役をやってもらい、その教育現場を見学しました。その日は何人かいる組長の内のある1人の組長が先生役をやっていました。
 
 一生懸命話しているのはよくわかりましたが印象的だったのは、その日の教育が終ったあとでした。組長は自分の机に戻るなり「ふー」と息をつきました。実は緊張していたことがわかりました。
 
 組長の机の上には、彼が必死で手書きした原稿がありました。教育で話す内容を彼なりに必死でまとめて、原稿として準備していたのです。それを見たときは、組長の頑張りと管理者に先生をやってもらった狙いが見事にはまったことにうれしくなりました。
 
 教育というのは、受ける側の成長も促しますが、それ以上に教育する側の成長を促すのです。先生役を管理者がやることによって管理者が成長すれば、工場全体のレベルが上がることつながります。
 
品質管理教育
  

2. 中国企業には目指す品質を具体的に示すこと

 
 中国企業(メーカー)の品質がよくない理由は、企業によっていろいろあります。特に感じているのは、顧客が求めている品質がどういうものかを知らない、それが最大の理由ではないかと思っています。つまり自分たちが作っているものよりもよいものを見たことがない、その存在を知らないということなのです。
 
 もっとよい品質のものが欲しいと、いくらこちらから要求しても、よい品質がどういうものかを知らなければ、そういうものが存在していることを知らなければ、作ることはできません。
 
 中国企業の現場の責任者やスタッフに「大事なことは何か?」と質問すると、10人中9人は品質が大事だと言います。上層部からも顧客からも品質、品質と言われているので、それが大事だという認識は持っているのです。
 
 しかし、実際の製品の品質は、一向によくなりません。理由は、前述したようによい品質とはどういうものかを知らないからです。中国企業の現場の人たちも、自分たちが作った製品の品質が最高のものだとは思っていないようですが、悪いとも思っていないのです。
 
 日系の中国工場であれば、目指す品質は日本人がわかっていますし、よいものを中国人スタッフ見せることもできます。しかし、中国企業の場合、作るものによってはそれが簡単ではないのです。目指すべきよい品質のものを見ることが出来るとは限らないのです。
 
 この点を取引している日本企業は理解しておく必要があります。日本企業が頭で描いているよい品質の状態や製品を見せるなどして中国企業に理解してもらわなくてはなりません。それがスタート地点と言えます。
 
 例えば、溶接作業の場合、中国人同士で優劣をつけることはできます。でも、もしかしたら中国工場の中国人の優秀な溶接工は、日本人溶接工と比べたら最低限のレベルということもあり得ます。本当に腕の良い溶接工が溶接したものを見たことがなければ、それに近づくことはできません。
 
 「知らないことはできない」これは、中国企業や中国人と仕事をするときに頭に入れておくべき言葉です。「知らないことでも勉強してできるようになる」こんな企業ばっかりだったら苦労はしないですね。
  

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

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