コア・コンピタンスを再定義する

更新日

投稿日

 大手企業・完成品セットメーカーのコア・コンピタンスは、量産立ち上げの早い生産技術かも知れないし、熟練した開発設計技師の開発スピードや会社のハイテク技術製品の企業イメージかもしれないし、あるいは張り巡らされた販売網かもしれません。

 広域のロードサイドでの量販店経由にシフトしたため、全国津々浦々に張り巡らした家電の販売網へのサプライチェーンが重荷になっている場合もあり、従来のコア・コンピタンスが逆に作用することもあります。市場での競争に自社のコア・コンピタンスが、経済環境の激変によってあまり役に立たなくなっているかもしれないのです。

 顧客の利便性は、従来の小規模ストア販売網を持たない量販店の流通力によって、強化されます。従来通りの人口比に基づく営業力の配分では、それ自体が流通上のボトルネックを作り出しかねず、量販店の流通力によってできつつあるサプライチェーンの太いパイプの重荷となります。このことは、作業環境が変わっても昔のやり方を踏襲し、工場内のサプライチェーン(工程)に非効率を生んでいるようなものです。

 最終消費者まで範囲を拡大し認識することで、サプライチェーンの真のボトルネックを探さなければなりません。時代とともに、自社の強みであったものでも捨てる覚悟をすることが、すなわち自社のコア・コンピタンスの再定義です。グループとして自動車メーカーの下請け系列、ディーラー系列が護送船団を組んでいれば安泰という時代は過ぎました。自分の頭と心で周到に行動することが生き残りの条件であり、全員を大事故に巻き込むかもしれない「みんなでわたれば怖くない」という集団心理に対し恐怖心を持つことが重要です。自社が生き残ることは冷徹かもしれないが重要なのです。時代は、「死より地獄」を選択せざるを得なくなっています。

 かつて国民を巻き込んで「死」を選んでしまった日本の軍部という官僚機構もありました。半世紀前の日露戦争のコア・コンピタンス...

 大手企業・完成品セットメーカーのコア・コンピタンスは、量産立ち上げの早い生産技術かも知れないし、熟練した開発設計技師の開発スピードや会社のハイテク技術製品の企業イメージかもしれないし、あるいは張り巡らされた販売網かもしれません。

 広域のロードサイドでの量販店経由にシフトしたため、全国津々浦々に張り巡らした家電の販売網へのサプライチェーンが重荷になっている場合もあり、従来のコア・コンピタンスが逆に作用することもあります。市場での競争に自社のコア・コンピタンスが、経済環境の激変によってあまり役に立たなくなっているかもしれないのです。

 顧客の利便性は、従来の小規模ストア販売網を持たない量販店の流通力によって、強化されます。従来通りの人口比に基づく営業力の配分では、それ自体が流通上のボトルネックを作り出しかねず、量販店の流通力によってできつつあるサプライチェーンの太いパイプの重荷となります。このことは、作業環境が変わっても昔のやり方を踏襲し、工場内のサプライチェーン(工程)に非効率を生んでいるようなものです。

 最終消費者まで範囲を拡大し認識することで、サプライチェーンの真のボトルネックを探さなければなりません。時代とともに、自社の強みであったものでも捨てる覚悟をすることが、すなわち自社のコア・コンピタンスの再定義です。グループとして自動車メーカーの下請け系列、ディーラー系列が護送船団を組んでいれば安泰という時代は過ぎました。自分の頭と心で周到に行動することが生き残りの条件であり、全員を大事故に巻き込むかもしれない「みんなでわたれば怖くない」という集団心理に対し恐怖心を持つことが重要です。自社が生き残ることは冷徹かもしれないが重要なのです。時代は、「死より地獄」を選択せざるを得なくなっています。

 かつて国民を巻き込んで「死」を選んでしまった日本の軍部という官僚機構もありました。半世紀前の日露戦争のコア・コンピタンスである大鑑巨砲主義に拘泥したことが、日本帝国の陸海軍の失敗とした『失敗の本質』(1984年ダイヤモンド社、1991年中央公論社)による分析は有名です。自社にカネとモノが流れるようにするために、サプライチェーンのなかでゲームのルールや環境をよく見て分析する必要が、どの企業にもあります。コア・コンピタンスの再定義によるサプライチェーン視点からの成功事例を表1に示します。

サプライチェーンマネジメント・コアコンピタンス特化の成功事例

   続きを読むには・・・


この記事の著者

今岡 善次郎

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
サプライチェーンマネジメントと情報共有

       1. サプライチェーンマネジメント   サプライチェーンというキーワードが出回り始めたのは1990年代中頃からだったと思います。...

       1. サプライチェーンマネジメント   サプライチェーンというキーワードが出回り始めたのは1990年代中頃からだったと思います。...


サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?メリットや注目される背景を簡単に解説

インターネットの普及やグローバル化などによる事業環境の変化に伴い、サプライチェーンマネジメント(SCM)が改めて注目を集めています。ものづくりに関わる...

インターネットの普及やグローバル化などによる事業環境の変化に伴い、サプライチェーンマネジメント(SCM)が改めて注目を集めています。ものづくりに関わる...


サプライチェーンマネジメントの背景と効果実現に向けた考え方(その1)

1. サプライチェーン・マネジメントの狙い  サプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management・以下SCM)は、ITシス...

1. サプライチェーン・マネジメントの狙い  サプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management・以下SCM)は、ITシス...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
物流改善スキルと交渉力 効果的な物流人財育成(その3)

       物流人財育成の中でも最も重要なスキルとして物流改善スキルが挙げられます。物流企画力と同じくらい大切です。...

       物流人財育成の中でも最も重要なスキルとして物流改善スキルが挙げられます。物流企画力と同じくらい大切です。...


輸送:物流KPIについて考える(その2)

  ◆トラック積載率 今回は、物流重要機能の輸送と保管機能についてパフォーマンスを明確化できるKPIを考えます。   輸送...

  ◆トラック積載率 今回は、物流重要機能の輸送と保管機能についてパフォーマンスを明確化できるKPIを考えます。   輸送...


役割に応じた給与体系 物流業センター長の役割(その2)

       (1) 永続的改善活動  物流センター長の第三の役割は「永続的な改善活動」です。これは現場収益の向上に通じるものがあります。今の...

       (1) 永続的改善活動  物流センター長の第三の役割は「永続的な改善活動」です。これは現場収益の向上に通じるものがあります。今の...