リーン製品開発の全体像 – ビジュアルプロジェクトボード

投稿日

 

 前回の「リーン製品開発の全体像 – 可視化ワークフロー管理」に続けて解説します。

 

◆ ビジュアルプロジェクトボード – 2週間計画

 ビジュアルプロジェクトボードのひとつの要素が、2週間計画 (Two-Week Action Plan)です。

 チームメンバーそれぞれが、この2週間の自分のタスク(仕事や作業)を付箋(ふせん)に書き、ボードに貼り付けます。チームが2週間で完了すべきタスクが全て「見える化」され、チームの小日程となります。

技術マネジメント

図1. 2週間計画の取り組み例

 

 付箋にはタスクの責任者と、ID (識別番号)、内容、開始日、完了日が記載されています。「誰が、何を、いつから始めて、いつまでにするのか」といった内容が、明確に短く記載されています。

技術マネジメント

図2. 付箋への記載例

 付箋は、色分けします。

 図に示した赤の付箋は、最優先のタスクです。クリティカルパス上にあるタスクです。クリティカルパスとは、そのタスクが遅延すると、それに依存するタスクに影響して、その結果、主なマイルストーン(例えば、製品出荷日など)が遅延するものです。チーム一丸となって、クリティカルパス上のタスクが予定通りに完了することができるように、あらゆる障害に対処しなくてはなりません。

 

 黄色は優先度中のタスクを、青色は予定外作業 (Unplanned Work) を表しています。

 例えば、西村さんのタスクは1週目の月曜日に、赤の付箋が一枚貼られています。これは、最優先のタスクが一つあって、月曜日のスタンドアップミーティングまでに完了予定であることを意味しています。1週の水曜日には、黄色のタスクが貼られていますがこれは、優先度中のタスクが二つあり、水曜日のスタンドアップミーティングまでに完了しなくてはならない[1]という意味です。1週目の金曜日は何も貼られていませんので、完了しなくてはならないタスクはありません。

 もしあなたが、スケジュール管理や人員管理でお悩みあれば、このボードを見て何かお気づきになったことでしょう。

 例えば、上野さんは1週目の金曜日に最優先のタスクを一つ完了しなくてはなりませんが、水曜日には予定外の作業が割り込んできているため、この予定外の作業が悪影響して、最優先のタスクが遅延するおそれがあるのです。この懸念材料を回避するため、予定外の作業の計画を変えることを検討すべきです。例えば青山さんは、この2週間、最優先タスクを担っていないので、この予定外の作業に取り組める余地があるかもしれません。もしくは、上野さんが担当するとしても、この予定外作業の完了予定を遅らせることができないか検討すべきです。

 

 このビジュアルボードを用いると、この先に遭遇するかもしれない障害が浮き彫りになります。問題となる前に、そうした障害に対処するためのダイナミックなプランニングが可能となります。また、クリティカルパス上にあるタスクを「見える化」することで、チームは一丸となって、そのスケジュールを守ろうとするのです。

 

 次回...

 

 前回の「リーン製品開発の全体像 – 可視化ワークフロー管理」に続けて解説します。

 

◆ ビジュアルプロジェクトボード – 2週間計画

 ビジュアルプロジェクトボードのひとつの要素が、2週間計画 (Two-Week Action Plan)です。

 チームメンバーそれぞれが、この2週間の自分のタスク(仕事や作業)を付箋(ふせん)に書き、ボードに貼り付けます。チームが2週間で完了すべきタスクが全て「見える化」され、チームの小日程となります。

技術マネジメント

図1. 2週間計画の取り組み例

 

 付箋にはタスクの責任者と、ID (識別番号)、内容、開始日、完了日が記載されています。「誰が、何を、いつから始めて、いつまでにするのか」といった内容が、明確に短く記載されています。

技術マネジメント

図2. 付箋への記載例

 付箋は、色分けします。

 図に示した赤の付箋は、最優先のタスクです。クリティカルパス上にあるタスクです。クリティカルパスとは、そのタスクが遅延すると、それに依存するタスクに影響して、その結果、主なマイルストーン(例えば、製品出荷日など)が遅延するものです。チーム一丸となって、クリティカルパス上のタスクが予定通りに完了することができるように、あらゆる障害に対処しなくてはなりません。

 

 黄色は優先度中のタスクを、青色は予定外作業 (Unplanned Work) を表しています。

 例えば、西村さんのタスクは1週目の月曜日に、赤の付箋が一枚貼られています。これは、最優先のタスクが一つあって、月曜日のスタンドアップミーティングまでに完了予定であることを意味しています。1週の水曜日には、黄色のタスクが貼られていますがこれは、優先度中のタスクが二つあり、水曜日のスタンドアップミーティングまでに完了しなくてはならない[1]という意味です。1週目の金曜日は何も貼られていませんので、完了しなくてはならないタスクはありません。

 もしあなたが、スケジュール管理や人員管理でお悩みあれば、このボードを見て何かお気づきになったことでしょう。

 例えば、上野さんは1週目の金曜日に最優先のタスクを一つ完了しなくてはなりませんが、水曜日には予定外の作業が割り込んできているため、この予定外の作業が悪影響して、最優先のタスクが遅延するおそれがあるのです。この懸念材料を回避するため、予定外の作業の計画を変えることを検討すべきです。例えば青山さんは、この2週間、最優先タスクを担っていないので、この予定外の作業に取り組める余地があるかもしれません。もしくは、上野さんが担当するとしても、この予定外作業の完了予定を遅らせることができないか検討すべきです。

 

 このビジュアルボードを用いると、この先に遭遇するかもしれない障害が浮き彫りになります。問題となる前に、そうした障害に対処するためのダイナミックなプランニングが可能となります。また、クリティカルパス上にあるタスクを「見える化」することで、チームは一丸となって、そのスケジュールを守ろうとするのです。

 

 次回に続きます。

 【出典】ピディアック株式会社 HPより、筆者のご承諾により編集して掲載
 【用語解説】リーン開発:製造業を中心に行われているリーン生産方式の考え方(リーン思考)を、開発に応用した手法。

 [1]スタンドアップミーティングでは、タスクが完了したかどうかについて確認を行います。ですから、もしそのタスクが、その日のうちに完了する予定でも、同ミーティングの時に完了していない場合は、次のミーティングが開かれる日のところに、そのタスクを貼り付けます。例えば、月曜完了予定のタスクで、その日のミーティング時に完了できないものについては、その週の水曜日にそのタスクを貼り付けます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

西村 裕司

開発チームトレーナー。リーン製品開発、アジャイル・スクラムの手法をトレーニングすると、新製品開発の納期を守ることができるようになる。20人の開発プロジェクトで、年間1億円の利益創出の機会を提供する。

開発チームトレーナー。リーン製品開発、アジャイル・スクラムの手法をトレーニングすると、新製品開発の納期を守ることができるようになる。20人の開発プロジェク...


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
思考パターン 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その75)

 現在、関係性の種類を解説しています。前回は関係性の種類の一つ「原因と結果」の中の「逆ピラミッド(複数の原因→一つの結果)」が起こる3つの要...

 現在、関係性の種類を解説しています。前回は関係性の種類の一つ「原因と結果」の中の「逆ピラミッド(複数の原因→一つの結果)」が起こる3つの要...


技術系ビジネスリーダー養成とは 【連載記事紹介】

  技術系ビジネスリーダー養成の連載全てが無料でお読みいただけます!   ◆こんな方におすすめ!=技術者がリードすべき重要な...

  技術系ビジネスリーダー養成の連載全てが無料でお読みいただけます!   ◆こんな方におすすめ!=技術者がリードすべき重要な...


IS/ISNOT思考法は、問題分析の基本

 多くの場合、問題が起きて原因を推定する際には、何が起きたか、どこで起きたか、いつ起きたか、どの程度起きたかといった事実を頭の中に入れた上で、可能性のある...

 多くの場合、問題が起きて原因を推定する際には、何が起きたか、どこで起きたか、いつ起きたか、どの程度起きたかといった事実を頭の中に入れた上で、可能性のある...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
進捗の可視化は必要最小限にするのがポイント(その2)

  3. アクティビティとプロダクトの2軸管理    基本メトリクスセットの4指標(基本メトリクスと呼びます)について計画と実績...

  3. アクティビティとプロダクトの2軸管理    基本メトリクスセットの4指標(基本メトリクスと呼びます)について計画と実績...


システム設計3 プロジェクト管理の仕組み (その35)

 前回はシステム設計を、開発工程上はシステムエンジニアリングと、ハードやソフトなどのサブシステムのエンジニアリングの両方と定義しました。ここで、システムエ...

 前回はシステム設計を、開発工程上はシステムエンジニアリングと、ハードやソフトなどのサブシステムのエンジニアリングの両方と定義しました。ここで、システムエ...


‐現場観察のチェックポイント‐  製品・技術開発力強化策の事例(その8)

 前回の事例その7に続いて解説します。現場観察はどのような場合でも非常に大切です。 価値ある情報をくみ上げる観察力を絶えず自己啓発する必要があります。現場...

 前回の事例その7に続いて解説します。現場観察はどのような場合でも非常に大切です。 価値ある情報をくみ上げる観察力を絶えず自己啓発する必要があります。現場...