SDGsへの取組み例 SDGsの考察(その2)

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SDGs

 

【SDGsの考察 連載目次】

1. 17の目標と取り組み方

2. トヨタ:豊田綱領の理念はSDGsと同期する

3. サントリー:2030年までにマテリアルリサイクル率100%

 

 2020年9月に開かれた日経SDGsフェスティバルから、トヨタ自動車と帝人2社のSDGsへの取り組みについて紹介します。

1、トヨタ:豊田綱領の理念はSDGsと同期する

 同フェスティバル初日に行われたトヨタと日経の方との対談視聴も含めて、SDGsへの取り組みについてお話します。

 トヨタでは2020年から専任のサステナビリティオフィサーを設定しています。この日の方は、Deputy Chief Sustainability Officerの大塚友美さんでした。このような動きも含め、豊田章男社長が決算発表時「SDGsに本気で取り組む」と発言しています。豊田社長の会見ビデオから私なりにポイントを抜粋します。

 「今回のコロナ危機で、人間として、企業としてどう生きるのかを考えました。ふるさと、ホームタウンのように、地球はホームプラネットです。このコロナ危機に際して、当たり前などない、どこかで誰かが頑張っているからということに気づきました。医療従事者はもちろんのこと、すべての人に感謝の気持ちを伝えます。そして、今は企業も人間も、行動を考えるチャンスです。それはラストチャンスかもしれません。トヨタの使命は「幸せの量産」です。自分で考えて行動できるトヨタパーソンを作ること(自分の視点ではなく相手の立場)“Youの視点”も持ったトヨタパーソンとしていくことです。そのことは、誰一人取りこぼさない、SDGsへの対応となります」。

 私も素直にその通りだと思います。重要な点は、SDGsのこれらの活動は利益とも連動するように戦略化している点です。この対談の最後に、しっかりとそのような趣旨の発言がありました。SDGsが利益にも結び付く活動という重要な点が示唆されています。

 対談の中では、豊田綱領を話題にしてました。

 大友さんは、これらトヨタの歴史的、伝統的理念を共有することは、同時にSDGsへの同期となると説明してました。「Youの視点を持つ人財」、相手のことを考える人は豊田綱領の理念そのものということです。

 豊田佐吉は母親の機織り(はたおり)の苦労を見て、楽にさせてやりたいとの思いから自動織機の開発に至りました。トヨタ生産方式の原点はここにあるともいわれています。この発明を特許化し、大きな利益を上げました。その資金の投入がトヨタ自動車設立へとつながっています。

 大友さんは「人のために知恵を出すと、それは特許になり、企業の利益にもつながる」とご説明されてました。まさに、企業として取り組むSDGsの価値そのものでしょう。この対談を聞いて、企業のSDGsへの取り組み方とその価値が大変によく理解できました。

 

2、帝人:未来社会を支える会社~投資の85%をSDGsに

 帝人は、鈴木純社長自らの講演でした。

 説明の流れは、企業理念 ⇒ 長期ビジョン ⇒ 行動規範でした。従業員の行動規範は、SDGsと結び付けた活動となっています。

 企業理念からの導入になる点は、トヨタが豊田綱領に紐づけてSDGsを説明していたことと通じると感じました。いきなりSDGsに取り組むのではなく、企業の本質の理念からの活動とすることなのでしょう。

 帝人グローバルでの外国人割合は50%とのことで、いずれのメッセージも英語で同時発信です。この辺りは、今や当たり前の取り組みでしょうが、私自身もサムスン(Samsung SDI)勤務時代には、主要情報は英語でアクセス可能でした。日本の大手電気通信メーカからサムスン電子に移ってきた方がいました。その方の日本の本社時代も、外国人が一人でも参加している場合は英語を使ったコミュニケーションということでした。話が横道にそれました。

 

 2017年策定の長期ビジョンのキャッチフレーズは「未来の社会を支える会社になる」です。

 この意味合いは「今ではなく未来に」知らず知らずに使ってもらうことで「社会を支える会社」になるということだそうです。

 2018年改定の行動規範は、TEIJINの文字をもじった遊び心のある説明でした。詳細は、帝人のウエブサイトで確認できます。TEIJINの言葉遊びは、アクセスしたページの中ほどにあります。{ベンゼン環、亀の甲}とともに説明している点も「化学の会社」帝人らしい、これまた遊び心です。

 帝人としての具体例ですが環境面では、軽量化で自動車に貢献、リサイクル可能な熱可塑(ねつかそ)中心。安全防災の面では、防弾チョッキ材料の提供。少子高齢化・健康対応の面では、帝人ファーマなどとなります。

 下記のSDGsの全17Goalsのうち、特に8Goalsに結び付けた目標としています。より具体的、定量的な目標とするために、向う3年間の投資3500億円のうち、85%をSDGsに結び付けています。

 個々の製品まで落とし込んでの活動ということで非常に細かな表の提示がありました。

 私の興味の範疇(はんちゅう)で目についた内容は、Libセパレータ ...

SDGs

 

【SDGsの考察 連載目次】

1. 17の目標と取り組み方

2. トヨタ:豊田綱領の理念はSDGsと同期する

3. サントリー:2030年までにマテリアルリサイクル率100%

 

 2020年9月に開かれた日経SDGsフェスティバルから、トヨタ自動車と帝人2社のSDGsへの取り組みについて紹介します。

1、トヨタ:豊田綱領の理念はSDGsと同期する

 同フェスティバル初日に行われたトヨタと日経の方との対談視聴も含めて、SDGsへの取り組みについてお話します。

 トヨタでは2020年から専任のサステナビリティオフィサーを設定しています。この日の方は、Deputy Chief Sustainability Officerの大塚友美さんでした。このような動きも含め、豊田章男社長が決算発表時「SDGsに本気で取り組む」と発言しています。豊田社長の会見ビデオから私なりにポイントを抜粋します。

 「今回のコロナ危機で、人間として、企業としてどう生きるのかを考えました。ふるさと、ホームタウンのように、地球はホームプラネットです。このコロナ危機に際して、当たり前などない、どこかで誰かが頑張っているからということに気づきました。医療従事者はもちろんのこと、すべての人に感謝の気持ちを伝えます。そして、今は企業も人間も、行動を考えるチャンスです。それはラストチャンスかもしれません。トヨタの使命は「幸せの量産」です。自分で考えて行動できるトヨタパーソンを作ること(自分の視点ではなく相手の立場)“Youの視点”も持ったトヨタパーソンとしていくことです。そのことは、誰一人取りこぼさない、SDGsへの対応となります」。

 私も素直にその通りだと思います。重要な点は、SDGsのこれらの活動は利益とも連動するように戦略化している点です。この対談の最後に、しっかりとそのような趣旨の発言がありました。SDGsが利益にも結び付く活動という重要な点が示唆されています。

 対談の中では、豊田綱領を話題にしてました。

 大友さんは、これらトヨタの歴史的、伝統的理念を共有することは、同時にSDGsへの同期となると説明してました。「Youの視点を持つ人財」、相手のことを考える人は豊田綱領の理念そのものということです。

 豊田佐吉は母親の機織り(はたおり)の苦労を見て、楽にさせてやりたいとの思いから自動織機の開発に至りました。トヨタ生産方式の原点はここにあるともいわれています。この発明を特許化し、大きな利益を上げました。その資金の投入がトヨタ自動車設立へとつながっています。

 大友さんは「人のために知恵を出すと、それは特許になり、企業の利益にもつながる」とご説明されてました。まさに、企業として取り組むSDGsの価値そのものでしょう。この対談を聞いて、企業のSDGsへの取り組み方とその価値が大変によく理解できました。

 

2、帝人:未来社会を支える会社~投資の85%をSDGsに

 帝人は、鈴木純社長自らの講演でした。

 説明の流れは、企業理念 ⇒ 長期ビジョン ⇒ 行動規範でした。従業員の行動規範は、SDGsと結び付けた活動となっています。

 企業理念からの導入になる点は、トヨタが豊田綱領に紐づけてSDGsを説明していたことと通じると感じました。いきなりSDGsに取り組むのではなく、企業の本質の理念からの活動とすることなのでしょう。

 帝人グローバルでの外国人割合は50%とのことで、いずれのメッセージも英語で同時発信です。この辺りは、今や当たり前の取り組みでしょうが、私自身もサムスン(Samsung SDI)勤務時代には、主要情報は英語でアクセス可能でした。日本の大手電気通信メーカからサムスン電子に移ってきた方がいました。その方の日本の本社時代も、外国人が一人でも参加している場合は英語を使ったコミュニケーションということでした。話が横道にそれました。

 

 2017年策定の長期ビジョンのキャッチフレーズは「未来の社会を支える会社になる」です。

 この意味合いは「今ではなく未来に」知らず知らずに使ってもらうことで「社会を支える会社」になるということだそうです。

 2018年改定の行動規範は、TEIJINの文字をもじった遊び心のある説明でした。詳細は、帝人のウエブサイトで確認できます。TEIJINの言葉遊びは、アクセスしたページの中ほどにあります。{ベンゼン環、亀の甲}とともに説明している点も「化学の会社」帝人らしい、これまた遊び心です。

 帝人としての具体例ですが環境面では、軽量化で自動車に貢献、リサイクル可能な熱可塑(ねつかそ)中心。安全防災の面では、防弾チョッキ材料の提供。少子高齢化・健康対応の面では、帝人ファーマなどとなります。

 下記のSDGsの全17Goalsのうち、特に8Goalsに結び付けた目標としています。より具体的、定量的な目標とするために、向う3年間の投資3500億円のうち、85%をSDGsに結び付けています。

 個々の製品まで落とし込んでの活動ということで非常に細かな表の提示がありました。

 私の興味の範疇(はんちゅう)で目についた内容は、Libセパレータ → グリーンエネルギー。樹脂グレージング → 軽量化。炭素繊維 → 航空機・自動車の軽量化。炭素繊維、圧力容器・風力発電の羽根として → グリーンエネルギー。など、かなり沢山ありました。

 もちろん、炭酸ガスの削減貢献量としては、提供までに要する(製造+輸送など)の総排出 < 削減量との確認が前提となってます。

 最後に利益確保、株主還元などの経営計画を示されてました。SDGsに取り組みながらも、従来同等かそれ以上の企業活動を進めるという力強さを、総合的にコミットメントしていました。

 

 最後に私見をまとめます。

 帝人のご講演の最後に、企業がSDGsへ取り組む考え方が集約されています。SDGsを見据えた経営計画とし、対応方策に知恵を絞ることで新たな利益を生み出すということです。SDGsの9番目のゴールの「産業と技術革新の基盤をつくろう」が手段となり、8番目のゴール「働きがいも 経済成長も」の達成につながることとなります。

 

 【出典】技術オフィスTech-T HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

◆関連解説『SDGs』

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この記事の著者

高原 忠良

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