ものづくりと環境技術

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◆共通テーマは「グリーン製造」~ 環境産業の動向と環境技術

 ものづくり企業は従来環境技術を周辺技術とみなして、工場の省エネや公害防止・廃棄物の処理委託等に取り組んできました。しかし近年SDGs(国連持続可能な解発目標)やESG投資(Environment・Social・Governance要素を考慮した投資)が企業経営と製品に大きな影響を与えるようになり、「グリーン製造」が共通テーマになると同時に、環境技術を深めてコア技術に取り込むことが成長の条件となりつつあります。そこで環境産業の動向と環境技術の概要を紹介します。

1.「SDGs」と「ESG投資」

 2015年の持続可能な地球環境に向けた「SDGs」の国連採択とパリ協定締結によって、全ての企業が「SDGs」のゴールに沿った活動を奨励され、かつ環境産業の業際化と「温暖化適応ビジネス」がクローズアップされてきています。そんな中グローバル企業はいまやESG投資への対応なしには企業価値の持続的成長が果たせない状況にもなっています。

図表)適応ビジネスの事業分野
出典「企業のための温暖化対応ビジネス入門」(経済産業省)

2.環境産業の動向

 (1)環境産業の市場規模

 地球規模の環境への関心と取り組みから、わが国でも環境産業は規模の拡大と共に業際化の進展が著しく2017年には、製造業のGDPが113兆円なのに対し、環境産業の市場規模は105兆円まで拡大してきました。内訳としては「廃棄物処理・資源有効利用」と「地球温暖化対策」が大きく、しかも伸びも大きくなっています。

(図表)出典「環境産業報告書」(環境省)

 2050年には環境産業は134兆円となり製造業を上回ると推計されています(2019年環境省市場規模検討会答申)。特に「地球温暖化対策」は61兆円、「廃棄物処理・資源有効利用」は56兆円に成長すると推計されています。

(図表)出典「環境産業報告書」(同省)

 (2)地球温暖化対策分野

 2050年の「地球温暖化対策」産業は、クリーンエネルギー利用が24兆円、自動車の低燃費化が21兆円と大きく伸び、その他省エネルギー建築や省エネ輸送サービス等があります。これらの成長産業分野では、技術・商品開発や事業化がグローバル規模で過熱化しており、再生可能エネルギーの発電見込み量は2050年には4~6倍に拡大すると見込まれています。

(図表)出典「環境産業報告書」(同省)

 (3)廃棄物処理・資源有効利用

 プラスチックごみが社会問題化していますが、世界のプラスチック発生量55億トン/年の内50億トンが自然投機されています。今後プラスチック発生量が250億トン/年に激増する予測の中、マテリアルリサイクル率を上げていく課題は喫緊のテーマです。世界の中でリサイクル率の高い日本にあっても、マテリアルリサイクル率は23%に過ぎず、58%がサーマルリサイクルとして地球温暖化対策に貢献しない資源利用です。リサイクル率を一般廃棄物で20%→30%に、産業廃棄物で54→59%に引き上げていく取り組み、選別技術開発や資源循環社会システム構築が期待されています。

(図表)出典「環境産業報告書」(同省)

3.環境技術の開発と活用

 (1)環境技術の6大分野

 環境技術といえば従来は、測定・分析・アセスメントの技術でした。しかし昨今の環境産業の業際化の中で、国立環境研究所は環境技術を右図の6つに整理しています。これらの環境技術とものづくりとの関りについて述べてみたいと思います。http://tenbou.nies.go.jp/science/

 (2)地球環境・大気環境

 「地球環境」は、従来から工場やオフィスの省エネ技術として関係し日本企業の優位性でもありましたが、近年クリーンエネルギー化とパリ協定のCO2排出削減目標への達成度評価が重視される「ESG投資」の中で、必ずしも優位ではなくなってきました。再生可能エネルギー比率やグリーン調達比率の更なる上昇が求められています。
 大気環境技術テーマは、20世紀の工場エミッションから21世紀は排ガス処理技術・燃料電池電気自動車・ITS(高度道路交通システム)・光触媒等に移ってきました。この大気環境技術と地球環境技術が「地球温暖化対策」として、21世紀前半に最も伸長する産業のコア技術テーマです。

 (3)3R・廃棄物

 3R技術は特にマテリアルリサイクル技術が重要で、レアメタル・容器包装・家電・自動車・建設等産業商品ごとに独自技術が培われています。3Rや廃棄物技術領域で大切なのは、ものづくり企業の「環境配慮製品設計」や「リデュース技術」です。LCA(ライフサイクルアセスメント)が推奨されてリサイクル性を多少配慮した設計になってきてはいるものの、大半の家電が廃雑品として回収された後素材別の分解選別が困難なことから、混載破砕されてSR(シュレッダーダスト)として焼却や路盤材に回されていることをどれだけの設計者が知っているでしょうか?リサイクルは素材種類ごとの分別さえできれば資源化できますが、通常の廃棄物は雑多の素材が混じったゴミで...

 

◆共通テーマは「グリーン製造」~ 環境産業の動向と環境技術

 ものづくり企業は従来環境技術を周辺技術とみなして、工場の省エネや公害防止・廃棄物の処理委託等に取り組んできました。しかし近年SDGs(国連持続可能な解発目標)やESG投資(Environment・Social・Governance要素を考慮した投資)が企業経営と製品に大きな影響を与えるようになり、「グリーン製造」が共通テーマになると同時に、環境技術を深めてコア技術に取り込むことが成長の条件となりつつあります。そこで環境産業の動向と環境技術の概要を紹介します。

1.「SDGs」と「ESG投資」

 2015年の持続可能な地球環境に向けた「SDGs」の国連採択とパリ協定締結によって、全ての企業が「SDGs」のゴールに沿った活動を奨励され、かつ環境産業の業際化と「温暖化適応ビジネス」がクローズアップされてきています。そんな中グローバル企業はいまやESG投資への対応なしには企業価値の持続的成長が果たせない状況にもなっています。

図表)適応ビジネスの事業分野
出典「企業のための温暖化対応ビジネス入門」(経済産業省)

2.環境産業の動向

 (1)環境産業の市場規模

 地球規模の環境への関心と取り組みから、わが国でも環境産業は規模の拡大と共に業際化の進展が著しく2017年には、製造業のGDPが113兆円なのに対し、環境産業の市場規模は105兆円まで拡大してきました。内訳としては「廃棄物処理・資源有効利用」と「地球温暖化対策」が大きく、しかも伸びも大きくなっています。

(図表)出典「環境産業報告書」(環境省)

 2050年には環境産業は134兆円となり製造業を上回ると推計されています(2019年環境省市場規模検討会答申)。特に「地球温暖化対策」は61兆円、「廃棄物処理・資源有効利用」は56兆円に成長すると推計されています。

(図表)出典「環境産業報告書」(同省)

 (2)地球温暖化対策分野

 2050年の「地球温暖化対策」産業は、クリーンエネルギー利用が24兆円、自動車の低燃費化が21兆円と大きく伸び、その他省エネルギー建築や省エネ輸送サービス等があります。これらの成長産業分野では、技術・商品開発や事業化がグローバル規模で過熱化しており、再生可能エネルギーの発電見込み量は2050年には4~6倍に拡大すると見込まれています。

(図表)出典「環境産業報告書」(同省)

 (3)廃棄物処理・資源有効利用

 プラスチックごみが社会問題化していますが、世界のプラスチック発生量55億トン/年の内50億トンが自然投機されています。今後プラスチック発生量が250億トン/年に激増する予測の中、マテリアルリサイクル率を上げていく課題は喫緊のテーマです。世界の中でリサイクル率の高い日本にあっても、マテリアルリサイクル率は23%に過ぎず、58%がサーマルリサイクルとして地球温暖化対策に貢献しない資源利用です。リサイクル率を一般廃棄物で20%→30%に、産業廃棄物で54→59%に引き上げていく取り組み、選別技術開発や資源循環社会システム構築が期待されています。

(図表)出典「環境産業報告書」(同省)

3.環境技術の開発と活用

 (1)環境技術の6大分野

 環境技術といえば従来は、測定・分析・アセスメントの技術でした。しかし昨今の環境産業の業際化の中で、国立環境研究所は環境技術を右図の6つに整理しています。これらの環境技術とものづくりとの関りについて述べてみたいと思います。http://tenbou.nies.go.jp/science/

 (2)地球環境・大気環境

 「地球環境」は、従来から工場やオフィスの省エネ技術として関係し日本企業の優位性でもありましたが、近年クリーンエネルギー化とパリ協定のCO2排出削減目標への達成度評価が重視される「ESG投資」の中で、必ずしも優位ではなくなってきました。再生可能エネルギー比率やグリーン調達比率の更なる上昇が求められています。
 大気環境技術テーマは、20世紀の工場エミッションから21世紀は排ガス処理技術・燃料電池電気自動車・ITS(高度道路交通システム)・光触媒等に移ってきました。この大気環境技術と地球環境技術が「地球温暖化対策」として、21世紀前半に最も伸長する産業のコア技術テーマです。

 (3)3R・廃棄物

 3R技術は特にマテリアルリサイクル技術が重要で、レアメタル・容器包装・家電・自動車・建設等産業商品ごとに独自技術が培われています。3Rや廃棄物技術領域で大切なのは、ものづくり企業の「環境配慮製品設計」や「リデュース技術」です。LCA(ライフサイクルアセスメント)が推奨されてリサイクル性を多少配慮した設計になってきてはいるものの、大半の家電が廃雑品として回収された後素材別の分解選別が困難なことから、混載破砕されてSR(シュレッダーダスト)として焼却や路盤材に回されていることをどれだけの設計者が知っているでしょうか?リサイクルは素材種類ごとの分別さえできれば資源化できますが、通常の廃棄物は雑多の素材が混じったゴミでしかないことを改善する設計姿勢が今や求められています。
 また廃棄物処理技術は、高度選別技術・安価マテリアルリサイクル技術・廃棄物燃料・廃棄物発電・汚泥処理技術等多様ですが、一般に日本製環境機器は先端技術で欧州企業に、量産機器で中国企業に遅れをとっています。筆者はこの要因を、日本の大企業がリサイクル事業に消極的で、国内市場中心の中小企業では欧州大企業や中国企業に太刀打ちできないせいだと捉えています。2050年には2,427兆円に爆張する世界の環境産業の中で日本の環境産業がガラパゴス化しないために、今こそ企業間連携と大企業参入が必要だと感じています。

 (4)健康化学物質、水土壌環境

 健康・化学物質技術は、グリーン調達や「REACH対応」として全てのものづくり企業に関係が深い。年々追加される有害物質に機敏に対応する仕組みは、社内外の専門家を活用・適応しないと事業の継続性を保ちえないテーマとなっています。
 水・土壌環境は、水処理や土壌汚染調査等があり、日本の技術の優位性が語られています。
 以上全ての企業がグリーン製造や環境適応事業に関わる必要性が高まる中、環境への取り組み姿勢を強化積極化され、グローバル潮流に乗ることを望んでやみません。 

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この記事の著者

遠山 純夫

ものづくり企業の経営・技術課題をワンストップで解決・支援します。商品開発・工場経営革新・海外進出はもとより、知財・販路開拓・M&Aまでコンサルファームによる総合的支援を行います。

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