DSM 設計構造マトリックス(その1) 概要

 

 これから3回に渡り、設計構造マトリックス(DSM: Design Structure Matrix)を使った業務プロセスの改善方法について説明したいと思います。第1回目は 、設計構造マトリックス の概要について簡単に説明します。

1. 設計構造マトリックス(DSM)とは

 設計構造マトリックス はDesign Structure Matrix(DSM)の訳ですが、DSMはDependency Structure Matrixと呼ばれることもあります。この場合、DSMは依存構造マトリックスと訳されます。つまりDSMは設計物を構成する各要素間(構成物間)の相互関係または依存関係を表す(モデル化する)ためのツールだと言えます。設計物にはモノやプロセス、組織など様々な対象が含まれます。例えば、モノには電気製品や電機システム、建物、自動車、航空機などが、プロセスには業務プロセスや製造プロセス、ソフトウェアなどが、そして組織には会社組織やプロジェクトチームなどがDSMの対象として含まれます。それらは様々な構成物が複雑に絡み合い(依存し合い)ながら一つのシステムを構成しています。システムに含まれる構成物の数がNの時、DSMはその構成物の依存関係をN対Nの正方行列として表します。

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図1. DSM(設計構造マトリックス)とは

2. DSMの読み方

 簡単な例を用いてDSMの読み方を説明します。以下はあるシステムが8つの要素(AからHまで)から構成されており、それぞれの構成物が相互に依存関係がある場合を示しています。依存関係はシステムによって物体が接触して力や電力などを伝達している場合もあれば、情報などをやり取りしている場合などもあり様々です。

DSM

図2. DSMの読み方

 一般に構成物の依存関係は上図のようなネットワーク図で表現されますが、構成物の数が多くなったり依存関係が複雑になると、ネットワーク図による表現では限界が出てきます。そこでDSMは構成物やその依存関係を簡潔にN対Nの正方行列として表現します(依存関係のモデル化)。行と列にはすべての構成物が同じ順序で並べられます。依存関係は行と列が交わるセルに印として表現されます。この例では11個のセルに印が付けられているため、8つの構成物に11の依存関係があることが分かります。セルに印が付いている時、その行はその列から入力があることを示しています(逆に、その列はその行に出力がある)。例えば構成物Bには3つの入力が構成物D、F、Gからあることが分かります。また構成物Fには2つの出力を構成物BとDに与えていることが分かります。正方行列N対Nの対角線上には依存関係がないため( 同じ構成物のため )、そのセルは使いません。

3. DSM分析の進め方

 構成物の行と列の並び方を変えることでDSMの表現が変わります。「表現」と書いた理由は、構成物も依存関係も何も変わっていないにも関わらず、DSM上の印(依存関係を表すセル)の位置が変わるためです。行と列を同時に並び替えてDSM上の印の位置を変えることでDSMの分析を進めていきます。DSM分析には大きく分けて2つの方法があります。一つは集合分析(Clustering Method)、もう一つは順序分析(Sequencing Method)です。集合分析は、入力する構成物と出力する構成物を 対角線上近くに 近づけることを目的としています。これは主に製品構造や建物構造、ソフトウェア構造などの分析に用いられる方法です。入力点と出力点が近い場合、それらを一つの構成物にまとめることができるため、部品点数を減らすことができるからです(モジュール化)。下の例では、構成物の順序をG、F、B、D、A、E、H、Cと並び替えることで、いくつかの集合(Cluster)に依存関係をまとめることができました。

 順序分析は、対角線の上側にある依存関係の印を対角線の下側に移動させたり、依存関係の印を対角線の近くに移動させることを目的としています。これはプロセス構造(業務プロセス、プラント・システム、ソフトウェア・プロセスなど)の分析に用いられる方法です。下の例では、構成物の順序をF、H、C、G、B、E、A、Dと並び替えることで、8つあった対角線上の依存関係を2つに減らすことができました。依存関係の印を対角線の下側に移動させる理由については、次回、その2で説明します。

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図3.DSM分析の進め方

4. DSMの歴史

 DSMは世界各国でさまざまな産業で使われています。特に現在はソフトウェア産業での利用が広がっています。しかしDSMは決して新しいツールではなく、その歴史は1970年代、カルフォルニア州立大学のステュワード教授の研究まで遡ります。DSMが学会などで知られるようになると、1980年代にマサチューセッツ工科大学(MIT)がDSMを使って様々な産業を研究調査し始めました。そしてDSMを使った分析手法が発展していきました。それ以降DSMの利用が世界各国の様々な産業に広がり現在に至っています。

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図4.DSMの歴史

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5. DSMのタイプ

 DSMは大きく4つのタイプに分類できます。製品構造DSMは製品システムの構成物が物理的に接触しておりエネルギーの伝達や情報の伝達を行っている場合などに使われるDSMです。組織構造DSMは組織構成員が互いにコミュニケーションを通して依存し合っている場合などに使われるDSMです。プロセス構造DSMはプロセスの各要素(ステップやファンクション)が入力情報や出力情報を通して依存し合っている場合に使われるDSMです。製品構造DSM、組織構造DSM、そしてプロセス構造DSMをまとめて一つのDSMとして表したものが複数ドメインからなるDSMです。

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図5.DSMのタイプ

 業務プロセスや製造プロセスを改善する際はプロセス構造DSMが使われるため、以降ここではプロセス構造DSMを中心に説明していきます。


この記事の著者

津吉 政広

リーンやシックスシグマ、DFSSなど、問題解決のためのフレームワークを使った新製品の開発や品質の向上、プロセスの改善を得意としています。「ものづくり」に関する問題を一緒に解決してみませんか?

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