DSMの効用 - 設計プロジェクト管理編 - 

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 以下に設計プロジェクト管理を題材とした、フローチャート、設計タスクのDSM、ガントチャートのサンプルを示します。X,Y,Z3名の作業者によるチーム設計のタスクの流れを可視化しています。説明用ですからタスク数はごく少数ですが、DSMによるプロセス俯瞰のイメージをつかんで下さい。
 

1.設計タスクのフローチャート

 図1は、図面ごとの設計作業を1つのプロセスと見なして▢で囲ってあります。各プロセスを構成するタスクを丸角の▢で示します。タスク間は、情報(Output)授受を介して矢印で示す依存関係があります。矢印上の“重量”などが情報(Output)名です。つまり、プロセス・タスク・情報名の3階層で設計プロセスをモデリングしています。
 
  DSM
                図1.設計タスクのフローチャート
 

2.設計タスクのDSM

 図2は、図1の内容をタスクレベルでDSM表現したもので、進捗による色づけをしています。図1以外のタスクもいくつか含みます。DSMの行と列には設計タスクが同じ順番に並びます。マトリクスの行の◯は入力情報をどこの列からもらうかを示します。入力マーク◯が対角線より下にあれば、作業は上から下に順序良く流れますが、対角線より上にある◯は情報の逆流を示し、赤の囲み領域は作業がループ構造となるすり合わせ領域です。管理視点で言えば、トラブルの危険地帯でもあります。
 
     DSM
                    図2.設計タスクのDSM
 

3.設計タスクのガントチャート

 図3は、図2を基に描いたガントチャートです。タスク間の依存関係をDSMで確認済なので精度が高いと言えます。赤の囲み領域は前記ループ作業で、ここのすり合わせに手間取るとスケジュール遅延を招きます。よって、ベテランのアサインやアドヴァイス、ITツール導入など運営上の注意を払うべきです。
 
DSM
                  図3.設計タスクのガントチャート
 
 図1を眺めても、ループ構造=すり合わせ領域=危険地帯をすぐには把握でませんが、図2なら一目で判ります。複雑なプロジェクトのタスク数は本例の比ではなく、ループ構造があちこちに出現する可能性があります。よって、DSMの一覧性や簡潔性がより役立ちます。
 

 ただし、図2は対角線より上にある○の数を少なく、かつ対角線近傍に集まるようなタスク順序の(最適)DSMとなっているから一目で判るわけです。このような順序を導く事をパーティショニングと呼んでいて、DSM分析の特徴です。多数タスクでパーティショニングを行うにはパソコン演算が必要で、そのロジックは様々なものが提案されています。FEM(有限要素法)で多元連立方程式を解くロジックが必要なのと同様です。また、FEMで高応力域(危険地帯)を可視化して形状の最適化を検討するように、DSMで複雑プロセスの危険地帯を可視化して適切なマネジメントを検討できます。

 
 パーティショニング機能のおかげで、DSM作成においてタスク順序は気にする必要はなく、行の◯つけ(入力情報をどこからもらうか)に集中するだけです。フローチャートのように、蜘蛛の巣図にしないために順序で悩む必要はありません。(技法解説“複雑系システムをマネジメントする簡単手法DSMとは”も参照ください)
 

4.効用のまとめ

(1)複雑なプロジェクトであっても、計画段階でDSM分析を行う事で ループ構造=すり合わせ領域
   =危険地帯 やクリティカルパスを事前に把握できます。
 
(2)(1)により、人員投入、ベテラン配置、業務分担見直し(ループ作業は1人もしくは1チームに
   まとめる)やITツール導入といった対策を事前に準備できます。
 
(3)(1)によりDesig...
 以下に設計プロジェクト管理を題材とした、フローチャート、設計タスクのDSM、ガントチャートのサンプルを示します。X,Y,Z3名の作業者によるチーム設計のタスクの流れを可視化しています。説明用ですからタスク数はごく少数ですが、DSMによるプロセス俯瞰のイメージをつかんで下さい。
 

1.設計タスクのフローチャート

 図1は、図面ごとの設計作業を1つのプロセスと見なして▢で囲ってあります。各プロセスを構成するタスクを丸角の▢で示します。タスク間は、情報(Output)授受を介して矢印で示す依存関係があります。矢印上の“重量”などが情報(Output)名です。つまり、プロセス・タスク・情報名の3階層で設計プロセスをモデリングしています。
 
  DSM
                図1.設計タスクのフローチャート
 

2.設計タスクのDSM

 図2は、図1の内容をタスクレベルでDSM表現したもので、進捗による色づけをしています。図1以外のタスクもいくつか含みます。DSMの行と列には設計タスクが同じ順番に並びます。マトリクスの行の◯は入力情報をどこの列からもらうかを示します。入力マーク◯が対角線より下にあれば、作業は上から下に順序良く流れますが、対角線より上にある◯は情報の逆流を示し、赤の囲み領域は作業がループ構造となるすり合わせ領域です。管理視点で言えば、トラブルの危険地帯でもあります。
 
     DSM
                    図2.設計タスクのDSM
 

3.設計タスクのガントチャート

 図3は、図2を基に描いたガントチャートです。タスク間の依存関係をDSMで確認済なので精度が高いと言えます。赤の囲み領域は前記ループ作業で、ここのすり合わせに手間取るとスケジュール遅延を招きます。よって、ベテランのアサインやアドヴァイス、ITツール導入など運営上の注意を払うべきです。
 
DSM
                  図3.設計タスクのガントチャート
 
 図1を眺めても、ループ構造=すり合わせ領域=危険地帯をすぐには把握でませんが、図2なら一目で判ります。複雑なプロジェクトのタスク数は本例の比ではなく、ループ構造があちこちに出現する可能性があります。よって、DSMの一覧性や簡潔性がより役立ちます。
 

 ただし、図2は対角線より上にある○の数を少なく、かつ対角線近傍に集まるようなタスク順序の(最適)DSMとなっているから一目で判るわけです。このような順序を導く事をパーティショニングと呼んでいて、DSM分析の特徴です。多数タスクでパーティショニングを行うにはパソコン演算が必要で、そのロジックは様々なものが提案されています。FEM(有限要素法)で多元連立方程式を解くロジックが必要なのと同様です。また、FEMで高応力域(危険地帯)を可視化して形状の最適化を検討するように、DSMで複雑プロセスの危険地帯を可視化して適切なマネジメントを検討できます。

 
 パーティショニング機能のおかげで、DSM作成においてタスク順序は気にする必要はなく、行の◯つけ(入力情報をどこからもらうか)に集中するだけです。フローチャートのように、蜘蛛の巣図にしないために順序で悩む必要はありません。(技法解説“複雑系システムをマネジメントする簡単手法DSMとは”も参照ください)
 

4.効用のまとめ

(1)複雑なプロジェクトであっても、計画段階でDSM分析を行う事で ループ構造=すり合わせ領域
   =危険地帯 やクリティカルパスを事前に把握できます。
 
(2)(1)により、人員投入、ベテラン配置、業務分担見直し(ループ作業は1人もしくは1チームに
   まとめる)やITツール導入といった対策を事前に準備できます。
 
(3)(1)によりDesign Reviewの適切なタイミング(すり合わせ領域が決着した後)を設定できま
   す。
 
(4)図2図3を用いてプロジェクトを継続管理すれば、プロジェクト終了時に、どこのループ構造
   =すり合わせで手間取ったかなど設計タスク構造がビジュアルに記録されます。
 
(5)(4)は、次期プロジェクト計画の参考資料となります。
 
(6)(4)は、仕様変更に伴う設計工数増の費用交渉などの根拠となります。
 
 図2はタスクレベルでのDSMですが、重量や回転数など情報レベルの粒度で行うとパラメータDSMとなり、設計手順の可視化・最適化に応用でき、技術伝承やCAD自動作図システムの要件定義に役立ちます。逆に、粗い粒度(プロセスやその上位単位)のDSM分析は、ISO対応に伴う社内(部署間連携)プロセスの見直しに有用です。このように、DSMは複雑系の俯瞰と最適化に具体的な手段を提供します。
 

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この記事の著者

西本 明弘

設計プロセス設計コンサルタント。複雑な業務プロセスをDSM技法で効率的に俯瞰・分析し、全体最適の視点から手戻り削減、技術伝承、効果的 IT投資・運用を図ります!

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