不測事態への対応計画 新QC七つ道具: PDPC法の使い方(その1)

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  PDPC
 
【目次】
序論   ←掲載済
第5章  マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章  マトリックス図法の使い方
第7章  系統図法の使い方
第8章  アロー・ダイヤグラム法の使い方
第9章  PDPC法の使い方←今回
第10章 PDCA-TC法の使い方
 

第9章 PDPC法の使い方

 
 今回は、章を飛び越えて、記事リクエストの多い『 PDPC法 』を解説します。
 

9.1 PDPC法:不測事態への対応計画

 
 挑戦計画の前提として、「不確定要素の高い作業」に対する「不測事態への対応計画作成」に最もふさわしい「PDPC法」の説明に入ります。序論の中でN7活用上のポイントの最初にあげた「使用対象の的確な把握」論議を明確にした上で、PDPC法の挑戦管理の要諦といえる「不測事態への対応計画」にふさわしい側面を解説します。
 
 

9.2 PDPC法とは

 
 PDPC法は、ORで用いられる問題解決技法の1つで、近藤次郎氏(工学博士、東京大学名誉教授)開発の「過程決定計画法(Process Decision Program Chart:PDPC)」をTQC活動における不測事態を含む問題の解決に適用しようとするものです。
 
 PDPC法は、使用対象が「不測事態」という茫漠としたものである上、アウトプットである図形に関してもほとんど規制を持たない非常に柔軟性に富んだものであるだけに、アウトプットも多様で用途も広く、つかみどころの難しい手法といえますが、N7提唱の書「管理者・スタッフの新QC七つ道具」(日科技連出版、P.176)に、極めて簡潔にその本質を述べているので次に紹介します。
 
 「 PDPC法は、事態の進展とともに、いろいろな結果が想定される問題について、望ましい結果に至るプロセスを定める方法である。このため重大事故予測法などとも呼ばれる 」
 
 この「重大事故予測法」というのは、PDPCがQC手法として活用できることが実証された研究発表「品質システムにおけるPDPCの応用」八木重一・納谷嘉信(第10回品質管理学会研究発表会 1976)で紹介された事例が、不良対策への適用や、落石によるブレーキの故障での列車の暴走に対する対策などであったことから、当初そう呼ばれていたものです。
 
 ところが、その後の活用が生産性向上や新製品開発など幅広い展開をみせたことから、元のPDPCに戻り、他のN7手法と同様「法」をつけて「PDPC法」として現在に至っています。その特徴として同書(P.181-182)があげているのは、系統的思考の点では、系統図法のスタティックに対して「ダイナミック」、時系列的な点では、アロー・ダイヤグラム法が比較的確定状況下での事象が対象なのに対して、品質問題などで往々にしてある「不確定状況下」、故障解析的な点では、解析対象がFMEAが機能中心、FTAが事象中心に対して、人間的要素も含めた「システム中心」であり、余法では対応できない側面を持っていることが分かるのです。また、FTAとの詳細比較であげている次の4点はPDPC法の特徴を象徴的に表わしています。
 
(1) システムの挙動を全体としてとらえるので“大局的判断”ができる。
(2) システムの状態の推移を“時系列的”にとらえることができる。
(3) システムに対する入出力の関係を把握するので、①“好ましくない状態”を取り上げ、発生原因系をシステムの挙動とともに追うことができる。②“好ましくない状態”を、ある入力から出発して順次システムの挙動を追うことによって見いだすことができる。
(4) 事象中心なので、システムに対する基本的理解さえあれば、だれでも容易に使いこなすこと...
 
  PDPC
 
【目次】
序論   ←掲載済
第5章  マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章  マトリックス図法の使い方
第7章  系統図法の使い方
第8章  アロー・ダイヤグラム法の使い方
第9章  PDPC法の使い方←今回
第10章 PDCA-TC法の使い方
 

第9章 PDPC法の使い方

 
 今回は、章を飛び越えて、記事リクエストの多い『 PDPC法 』を解説します。
 

9.1 PDPC法:不測事態への対応計画

 
 挑戦計画の前提として、「不確定要素の高い作業」に対する「不測事態への対応計画作成」に最もふさわしい「PDPC法」の説明に入ります。序論の中でN7活用上のポイントの最初にあげた「使用対象の的確な把握」論議を明確にした上で、PDPC法の挑戦管理の要諦といえる「不測事態への対応計画」にふさわしい側面を解説します。
 
 

9.2 PDPC法とは

 
 PDPC法は、ORで用いられる問題解決技法の1つで、近藤次郎氏(工学博士、東京大学名誉教授)開発の「過程決定計画法(Process Decision Program Chart:PDPC)」をTQC活動における不測事態を含む問題の解決に適用しようとするものです。
 
 PDPC法は、使用対象が「不測事態」という茫漠としたものである上、アウトプットである図形に関してもほとんど規制を持たない非常に柔軟性に富んだものであるだけに、アウトプットも多様で用途も広く、つかみどころの難しい手法といえますが、N7提唱の書「管理者・スタッフの新QC七つ道具」(日科技連出版、P.176)に、極めて簡潔にその本質を述べているので次に紹介します。
 
 「 PDPC法は、事態の進展とともに、いろいろな結果が想定される問題について、望ましい結果に至るプロセスを定める方法である。このため重大事故予測法などとも呼ばれる 」
 
 この「重大事故予測法」というのは、PDPCがQC手法として活用できることが実証された研究発表「品質システムにおけるPDPCの応用」八木重一・納谷嘉信(第10回品質管理学会研究発表会 1976)で紹介された事例が、不良対策への適用や、落石によるブレーキの故障での列車の暴走に対する対策などであったことから、当初そう呼ばれていたものです。
 
 ところが、その後の活用が生産性向上や新製品開発など幅広い展開をみせたことから、元のPDPCに戻り、他のN7手法と同様「法」をつけて「PDPC法」として現在に至っています。その特徴として同書(P.181-182)があげているのは、系統的思考の点では、系統図法のスタティックに対して「ダイナミック」、時系列的な点では、アロー・ダイヤグラム法が比較的確定状況下での事象が対象なのに対して、品質問題などで往々にしてある「不確定状況下」、故障解析的な点では、解析対象がFMEAが機能中心、FTAが事象中心に対して、人間的要素も含めた「システム中心」であり、余法では対応できない側面を持っていることが分かるのです。また、FTAとの詳細比較であげている次の4点はPDPC法の特徴を象徴的に表わしています。
 
(1) システムの挙動を全体としてとらえるので“大局的判断”ができる。
(2) システムの状態の推移を“時系列的”にとらえることができる。
(3) システムに対する入出力の関係を把握するので、①“好ましくない状態”を取り上げ、発生原因系をシステムの挙動とともに追うことができる。②“好ましくない状態”を、ある入力から出発して順次システムの挙動を追うことによって見いだすことができる。
(4) 事象中心なので、システムに対する基本的理解さえあれば、だれでも容易に使いこなすことができる。
 
 以上のような特徴が相まって、次のような特徴的な効果が期待できる。
 
  1.  状態の推移と展開が多方向にわたっても思わぬ基本的問題点を指摘できる。
  2.  システム上での人間の存在を人間工学的に取り扱うことができる。
  3.  システム同士の複合的な干渉をうまく処理することができる。
 
 尚、次節で詳述するオリジナルの説明により、さらに理解が深まるものと思います。
 

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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