人的資源マネジメント:ダメな自分を学習しないために

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 今回は、やる気を失う原因のひとつとその対処方法を解説します。
 

1. 学習性無力感

 
 いろいろな事情はあるものの、やろうと思っていたことができなかったり、希望していたことが叶わなかったりすることを繰り返し経験していると、何に対してもやる気を失ってしまったり、どうせダメだからと最初から諦めてしまうことが普通になることがあります。
 
 このように、「努力しても良い結果に結びつけることはできないから何をやってもムダだ」という思いが強くなり、困難に立ち向かう意欲や目標を達成しようというモチベーションが小さくなる状態を「学習性無力感(Learned Helplessness)」といいます。
 
 学習性無力感に陥っていないか、自分の状態を確認することは大切です。ちなみに、学習性無力感は、ポジティブ心理学の創設者のひとりであり、アメリカ心理学会の会長であるマーティン・セリグマンの研究成果です。
 
人的資源マネジメント:ポジティブ感情図156. 学習性無力感
 
 学習性無力感は人間だけに限ったものではありません。イヌやネコなどの哺乳類はもちろんのこと、ノミにも見られるのです。ノミをビーカーに入れるとピョンピョン跳ねてビーカーの外に出てしまいますが、ガラス板で蓋をすると、はじめのうちはビーカーの外に出ようと飛び跳ねていたノミも、いつの間にか飛び跳ねることを止めてしまいます。そして、ガラス板を外しても飛び跳ねて外に出ることはありません。
 
 このノミのように、以前にダメだったからといって飛ぶことを諦めていないでしょうか。ノミのようにダメだった結果だけを学習してしまうのではなく、ダメだった原因がガラス板にあることを分析し、その原因を避ける工夫や、状況が変わっているのではないかという冷静な視野で、学習を続けることが大切なのです。
 
 せっかく持っている学習する能力なのに、ノミのようにダメだった結果だけを学習してそれ以上の学習を止めてしまい、変わる現実を見ようしない姿勢は残念です。いつでも、どんなときでも、やる前からあきらめてはいけません。
 

2. 自己効力感

 
 「何をしてもどうせムダなんだ」という学習性無力感から抜け出すには、自己効力感(Self Efficacy)を高める必要があります。自己効力感とは、心理学者アルバート・バンデューラが提供した概念で、外界の事柄に対し自分がなんらかの働きかけをすることが可能であるという感覚や、自分にはある目標に到達するための能力があるという感覚のことです。
 
人的資源マネジメント:ポジティブ感情図157. 自己効力理論
 
 図157 は、アルバート・バンデューラが提唱した人が自ら行動を起こすモデルで「結果期待」と「効力期待」とに分かれているのがポイントです。
 
 「結果期待」とは、ある行動がどのような結果を生み出すかという予測のことで、次に起こることや必要となるであろう方策をある程度イメージできる状態のことです。「効力期待」とは、結果を生み出すために必要な行動をうまく実行できるという予測のことです。つまり、結果はわからないけど、とにかくやってみようと思えるということです。
 
 学習性無力感とは、何かの行動を起こす前からあきらめてしまうのですから、とにかくやってみようという効力期待を高めることが自己効力感を高めることであり、学習性無力感に陥るのを避けることになるというのがわかります。
 

3. 自己効力感を高める方法

 
 それでは、自己効力感を高める方法について紹介しておきましょう。バンデューラによれば次に占める4つの経験が有効だということです。
 

(1) 達成体験

 
  自分の中で系統的に達成可能な目標を設定し、その成功体験を積み重ねていくことです。スモールステップ法とも言われています。
 

(2) 代理経験

 
  自分が望むことができている人やお手本にしたい人の行動を観察して、どんな行動がその人の達成や成功に影響しているのかを分析し、自分の行動に取り入れることです。
 

(3) 言語的説得

 
 自分の行動や努力を信頼している人から評価されるなど、自分に能力があることを言語的に励まされることです。
 

(4) 生理的情緒的高揚

 
 酒や薬物などを使って気分を高揚させることです。
 
 最後の生理的情緒的高揚は依存性があるのでできるだけ避ける必要がありますが、その他の3つについては普段から意識することが大切です。そして、この中で自己効力感を高めるのにもっとも...
 今回は、やる気を失う原因のひとつとその対処方法を解説します。
 

1. 学習性無力感

 
 いろいろな事情はあるものの、やろうと思っていたことができなかったり、希望していたことが叶わなかったりすることを繰り返し経験していると、何に対してもやる気を失ってしまったり、どうせダメだからと最初から諦めてしまうことが普通になることがあります。
 
 このように、「努力しても良い結果に結びつけることはできないから何をやってもムダだ」という思いが強くなり、困難に立ち向かう意欲や目標を達成しようというモチベーションが小さくなる状態を「学習性無力感(Learned Helplessness)」といいます。
 
 学習性無力感に陥っていないか、自分の状態を確認することは大切です。ちなみに、学習性無力感は、ポジティブ心理学の創設者のひとりであり、アメリカ心理学会の会長であるマーティン・セリグマンの研究成果です。
 
人的資源マネジメント:ポジティブ感情図156. 学習性無力感
 
 学習性無力感は人間だけに限ったものではありません。イヌやネコなどの哺乳類はもちろんのこと、ノミにも見られるのです。ノミをビーカーに入れるとピョンピョン跳ねてビーカーの外に出てしまいますが、ガラス板で蓋をすると、はじめのうちはビーカーの外に出ようと飛び跳ねていたノミも、いつの間にか飛び跳ねることを止めてしまいます。そして、ガラス板を外しても飛び跳ねて外に出ることはありません。
 
 このノミのように、以前にダメだったからといって飛ぶことを諦めていないでしょうか。ノミのようにダメだった結果だけを学習してしまうのではなく、ダメだった原因がガラス板にあることを分析し、その原因を避ける工夫や、状況が変わっているのではないかという冷静な視野で、学習を続けることが大切なのです。
 
 せっかく持っている学習する能力なのに、ノミのようにダメだった結果だけを学習してそれ以上の学習を止めてしまい、変わる現実を見ようしない姿勢は残念です。いつでも、どんなときでも、やる前からあきらめてはいけません。
 

2. 自己効力感

 
 「何をしてもどうせムダなんだ」という学習性無力感から抜け出すには、自己効力感(Self Efficacy)を高める必要があります。自己効力感とは、心理学者アルバート・バンデューラが提供した概念で、外界の事柄に対し自分がなんらかの働きかけをすることが可能であるという感覚や、自分にはある目標に到達するための能力があるという感覚のことです。
 
人的資源マネジメント:ポジティブ感情図157. 自己効力理論
 
 図157 は、アルバート・バンデューラが提唱した人が自ら行動を起こすモデルで「結果期待」と「効力期待」とに分かれているのがポイントです。
 
 「結果期待」とは、ある行動がどのような結果を生み出すかという予測のことで、次に起こることや必要となるであろう方策をある程度イメージできる状態のことです。「効力期待」とは、結果を生み出すために必要な行動をうまく実行できるという予測のことです。つまり、結果はわからないけど、とにかくやってみようと思えるということです。
 
 学習性無力感とは、何かの行動を起こす前からあきらめてしまうのですから、とにかくやってみようという効力期待を高めることが自己効力感を高めることであり、学習性無力感に陥るのを避けることになるというのがわかります。
 

3. 自己効力感を高める方法

 
 それでは、自己効力感を高める方法について紹介しておきましょう。バンデューラによれば次に占める4つの経験が有効だということです。
 

(1) 達成体験

 
  自分の中で系統的に達成可能な目標を設定し、その成功体験を積み重ねていくことです。スモールステップ法とも言われています。
 

(2) 代理経験

 
  自分が望むことができている人やお手本にしたい人の行動を観察して、どんな行動がその人の達成や成功に影響しているのかを分析し、自分の行動に取り入れることです。
 

(3) 言語的説得

 
 自分の行動や努力を信頼している人から評価されるなど、自分に能力があることを言語的に励まされることです。
 

(4) 生理的情緒的高揚

 
 酒や薬物などを使って気分を高揚させることです。
 
 最後の生理的情緒的高揚は依存性があるのでできるだけ避ける必要がありますが、その他の3つについては普段から意識することが大切です。そして、この中で自己効力感を高めるのにもっとも効果的なのは達成体験だといわれています。
 
 それでは、達成体験のためには何をすればいいのでしょうか? それは、普段からチャレンジを繰り返すことです。たとえば、挨拶する、感謝を伝える、親切にするなど、自分にとってちょっとだけ勇気のいることを何でもいいので、いつもチャレンジすることを意識して、とにかくやってみることをお勧めします。
 
 失敗したことでやる気を失ったり、できないことが続いて諦めてしまったりすることがあるかもしれません。そんなときは、学習性無力感に陥っていないか、自己効力感を高める工夫やチャレンジを忘れていないかと自分を客観的に振り返ってほしいと思います。
 
  

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この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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