人的資源マネジメント:「楽観性」を高めて逆境に強くなる(その1)

更新日

投稿日

 前回は、自分の持っている徳性を知り、それを日常生活に活かすことで、より高い成果に結びつけることができるという話でした。徳性を知るツールとして VIA アセスメントを紹介しましたが、やってみましたか? 自分の強みとなる徳性を把握することは大切です。
 

1. レジリエンス

 
 今回は、逆境から抜け出す力や落ち込んでいる状態から回復する力がテーマです。最近では「レジリエンス(resilience)」という単語が使われていて、「回復力」「逆境力」「復元力」などの訳語が当てられています。
 
 レジリエンスという言葉が流行っているということは、逆境から抜け出すのが難しい世の中になっているということかもしれません。私のクライアントの中にも、精神的な問題で中長期休暇をとっている技術者がいる組織が少なからずあり、そういう人を無くしたいとずっと思っています。まずは、技術者やマネジャーにレジリエンスについての基礎知識をもってもらいたいと考えています。
 
 レジリエンスの研究は、ペンシルベニア大学で開発されたペン・レジリエンシー・プログラムがもっとも有名で、これは、戦地から戻ってきた米国陸軍兵士の多くが鬱病などの精神的な問題を起こしていたため、通常の社会生活ができるようにと開発された抑鬱防止プログラムです。
 
 ペン・レジリエンシー・プログラム自体は現在、非公開となっているため全容を知ることはできないのですが、公開されている論文や資料などから把握できることも多いため、このコラムでも紹介していきたいと思います。今回はそのひとつである「楽観性」がテーマです。
 

2. 楽観性

 
 レジリエンス(回復力,逆境力)を高めるために大切なもののひとつが「楽観性」です。楽観性の定義に一義的なものはなく、心理学者の間でもその定義は様々なのですが、ここでの楽観性とは「気質的楽観 (Dispositional Optimism)」のことであり、自分にとっても社会にとっても望ましいと考えるものを期待し、追求する気分や態度のことと考えてください。
 
 様々な研究により、楽観的である方が逆境からの立ち直る力が高い、つまり、レジリエンスが高いことがわかっています。反対に楽観性が低い場合には、困難なことに直面したときに簡単にあきらめてしまう、無力感に陥ってしまうということが多くなる傾向があります。
 
 自分の強みである「徳性」を知ることと同様に、レジリエンスを高めるためには自分の楽観性を知ることが大切です。楽観性を客観的に測定する方法のひとつに「楽観性尺度」(図124)があります。
 
人的資源マネジメント図124. 楽観的尺度
 
 この10個の質問に答えることで、自分の楽観性傾向がわかります。測定は、他人と比較するものではなく自分の楽観性の傾向を見るためのものなので、ここでは点数づけの方法は解説しませんが、点数を知りたい方はご連絡ください。
 

3. 楽観的説明スタイル...

 前回は、自分の持っている徳性を知り、それを日常生活に活かすことで、より高い成果に結びつけることができるという話でした。徳性を知るツールとして VIA アセスメントを紹介しましたが、やってみましたか? 自分の強みとなる徳性を把握することは大切です。
 

1. レジリエンス

 
 今回は、逆境から抜け出す力や落ち込んでいる状態から回復する力がテーマです。最近では「レジリエンス(resilience)」という単語が使われていて、「回復力」「逆境力」「復元力」などの訳語が当てられています。
 
 レジリエンスという言葉が流行っているということは、逆境から抜け出すのが難しい世の中になっているということかもしれません。私のクライアントの中にも、精神的な問題で中長期休暇をとっている技術者がいる組織が少なからずあり、そういう人を無くしたいとずっと思っています。まずは、技術者やマネジャーにレジリエンスについての基礎知識をもってもらいたいと考えています。
 
 レジリエンスの研究は、ペンシルベニア大学で開発されたペン・レジリエンシー・プログラムがもっとも有名で、これは、戦地から戻ってきた米国陸軍兵士の多くが鬱病などの精神的な問題を起こしていたため、通常の社会生活ができるようにと開発された抑鬱防止プログラムです。
 
 ペン・レジリエンシー・プログラム自体は現在、非公開となっているため全容を知ることはできないのですが、公開されている論文や資料などから把握できることも多いため、このコラムでも紹介していきたいと思います。今回はそのひとつである「楽観性」がテーマです。
 

2. 楽観性

 
 レジリエンス(回復力,逆境力)を高めるために大切なもののひとつが「楽観性」です。楽観性の定義に一義的なものはなく、心理学者の間でもその定義は様々なのですが、ここでの楽観性とは「気質的楽観 (Dispositional Optimism)」のことであり、自分にとっても社会にとっても望ましいと考えるものを期待し、追求する気分や態度のことと考えてください。
 
 様々な研究により、楽観的である方が逆境からの立ち直る力が高い、つまり、レジリエンスが高いことがわかっています。反対に楽観性が低い場合には、困難なことに直面したときに簡単にあきらめてしまう、無力感に陥ってしまうということが多くなる傾向があります。
 
 自分の強みである「徳性」を知ることと同様に、レジリエンスを高めるためには自分の楽観性を知ることが大切です。楽観性を客観的に測定する方法のひとつに「楽観性尺度」(図124)があります。
 
人的資源マネジメント図124. 楽観的尺度
 
 この10個の質問に答えることで、自分の楽観性傾向がわかります。測定は、他人と比較するものではなく自分の楽観性の傾向を見るためのものなので、ここでは点数づけの方法は解説しませんが、点数を知りたい方はご連絡ください。
 

3. 楽観的説明スタイル

 
 自分の楽観性を知るもう一つの方法に「楽観的説明スタイル (Optimisitic Explanatory Style)」があります。嫌な出来事の原因について、それが具体的で一時的なものであるとして説明するバイアスのことです。
 
 自分の楽観的説明スタイルは、図125にあるように、嫌な出来事に対してその原因を3つの側面で分析することで把握することができます。
 
人的資源マネジメント図125. 楽観的説明スタイル
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術士第二次試験対策:解答を事前に考える(その1)

    【目次】 1. 解答を事前に考える 2. 論文の見出しを考える 3. 解答の主旨と解答の主旨の説明を考える ...

    【目次】 1. 解答を事前に考える 2. 論文の見出しを考える 3. 解答の主旨と解答の主旨の説明を考える ...


中間管理職に改善推進者になってもらうためには    人材育成・組織・マネジメント(その11)

  【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】 1. 間接部門のプロセス改善とは 2. 現場は全てを物語る 3. 明日の仕...

  【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】 1. 間接部門のプロセス改善とは 2. 現場は全てを物語る 3. 明日の仕...


なぜ「作りやすさ」は利益を生むのか?DFMAとフロントローディングの真価

  【目次】 製品開発において、市場投入までのスピードとコストは企業の競争力を左右する重要な要素です。多くの企業は、製品の機...

  【目次】 製品開発において、市場投入までのスピードとコストは企業の競争力を左右する重要な要素です。多くの企業は、製品の機...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
改善活動の共通言語

 コスト削減、品質改善、業務改善などの改善活動を行う時、アクションに携わるスタッフが改善の為の『共通言語』を身につけているかどうかで効率や効果が変わってき...

 コスト削減、品質改善、業務改善などの改善活動を行う時、アクションに携わるスタッフが改善の為の『共通言語』を身につけているかどうかで効率や効果が変わってき...


人的資源マネジメント:技術者育成のパフォーマンス(その6)

 前回のその5に続いて解説します。   3. 個人と組織とのエンゲージメント    組織の価値観と個人の価値観の重なりである共...

 前回のその5に続いて解説します。   3. 個人と組織とのエンゲージメント    組織の価値観と個人の価値観の重なりである共...


人的資源マネジメント:熟達(その1)

  1. 熟達とは    前回は、内発的動機づけ(モチベーション3.0)の3要素のひとつである「自律性」について解説しました。「...

  1. 熟達とは    前回は、内発的動機づけ(モチベーション3.0)の3要素のひとつである「自律性」について解説しました。「...