人的資源マネジメント:モチベーションを支える自律性とは(その1)

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 技術の世界に生きる私たちは、日々、技術力に磨きをかけ、生産性や品質を常に改善し、厳しい納期とコスト要求に答えて、商品開発に取り組んでいます。そして、組織としての様々な仕組みを構築、整備しています。ただ、忘れてはならないのがその組織を支えている個人のことです。個人のやる気がなければ組織の仕組みは機能しませんし、反対に個人のやる気が高まれば信じられないようなパフォーマンスを出すことができます。人の能力に限界はないのです。
 
 やる気には一時的、身体的な「テンション」と、継続的、精神的な「モチベーション」があり、モチベーションは「生存本能」に起因するものと、「外発的」なものに起因するもの、そして、「内発的」なものに起因するものがあるということをこれまで解説しました。
 
人的資源マネジメント図46. モチベーションの分類
 
 現在の日本は、多くの不確定要素の中で先のことに確信が持てない社会であり、個人も、簡単には解を出すことができない課題、さらには、何が課題なのかもわからないような、複雑な、そして、不確実な状況にあるという見方があります。こんな簡単ではない時代に必要なやる気とは、先ほどの分類のうちのどれでしょうか、 そうです、「内発的」な「モチベーション」です。給料や評価や肩書きというような「外発的」なモチベーションも依然として重要ですが、不確実で複雑な状況下であればあるほど重要になるのが、自分がやりたいからやる、楽しいからやる、価値があると思うからやるという、「内発的」なモチベーションです。今回は、その内発的モチベーションを高めるための要素のひとつである「自律性」について考えたいと思います。
 
 では、最初に質問です。「自律」とは何でしょうか? どんなときの自分は自律していると思いますか? 自律していると感じる人には誰がいますか? その人のどんなところが自律していると思うのですか?
 
 自律とは、「他人の言動や起きた出来事などの自分の外のことに支配されることなく、自分自身の判断基準にしたがって物事を判断し、自分の意志で自発的に行動する」ということです。人の世話にならない、自分一人でやっていけるという「自立」よりも高度な感じがしますね。先ほどの質問の答えはこの定義に合っているでしょうか? 違うときは、もう一度、自律した場面や自律した人のことを考えてみてください。
 
 自律性について考えるときに、私の中でいつも浮かんでくる言葉があります。それは、「寛容」です。寛容とは、辞書によれば「心が広くて、よく人の言動を受け入れること。他の罪や欠点などをきびしく責めないこと。また、そのさま。」(大辞泉)とあります。寛容と自律性には強い相関があると思うのです。先ほどの自律性の質問に答えることが難しかった場合は、寛容かどうかを考えてみると比較的わかりやすいのではないかと思います。
 
 たとえば、考え方や判断基準や行動が自分とは明らかに違う存在が身近にいるときの反応です。そういう相手に対してどういう感情を持つのか。多くの場合、おかしなヤツとかウザイとか生意気とか、そういう感情を持つのではないかと思います。そしてどういう行動をとるのか。できるだけかかわらないようにする、無視する、意地悪するなどです。反応によって寛容の度合いがわかります。
 
 自分とは考え方や行動が違う相手に対しても、他の人と同じように普通に接するというのが一番良い態度でしょう。もちろん、現実に人に迷惑をかけるような言動をとる人は問題外です。自分の好き嫌いを抑えて「そういうのもアリかな」と受け入れることができるかどうか、その度合いが寛容の度合いだと思います。ちなみに私は、避けてしまうと思います。まだまだです。
 
 この寛容という言葉、Wikipedia によれば明治時代に Tolerance の訳語としてできたということです。Tolerance にはもともと「耐える」とか「我慢する」という意味を含んでいるので、寛容は我慢を伴うといえるかもしれませ...
 技術の世界に生きる私たちは、日々、技術力に磨きをかけ、生産性や品質を常に改善し、厳しい納期とコスト要求に答えて、商品開発に取り組んでいます。そして、組織としての様々な仕組みを構築、整備しています。ただ、忘れてはならないのがその組織を支えている個人のことです。個人のやる気がなければ組織の仕組みは機能しませんし、反対に個人のやる気が高まれば信じられないようなパフォーマンスを出すことができます。人の能力に限界はないのです。
 
 やる気には一時的、身体的な「テンション」と、継続的、精神的な「モチベーション」があり、モチベーションは「生存本能」に起因するものと、「外発的」なものに起因するもの、そして、「内発的」なものに起因するものがあるということをこれまで解説しました。
 
人的資源マネジメント図46. モチベーションの分類
 
 現在の日本は、多くの不確定要素の中で先のことに確信が持てない社会であり、個人も、簡単には解を出すことができない課題、さらには、何が課題なのかもわからないような、複雑な、そして、不確実な状況にあるという見方があります。こんな簡単ではない時代に必要なやる気とは、先ほどの分類のうちのどれでしょうか、 そうです、「内発的」な「モチベーション」です。給料や評価や肩書きというような「外発的」なモチベーションも依然として重要ですが、不確実で複雑な状況下であればあるほど重要になるのが、自分がやりたいからやる、楽しいからやる、価値があると思うからやるという、「内発的」なモチベーションです。今回は、その内発的モチベーションを高めるための要素のひとつである「自律性」について考えたいと思います。
 
 では、最初に質問です。「自律」とは何でしょうか? どんなときの自分は自律していると思いますか? 自律していると感じる人には誰がいますか? その人のどんなところが自律していると思うのですか?
 
 自律とは、「他人の言動や起きた出来事などの自分の外のことに支配されることなく、自分自身の判断基準にしたがって物事を判断し、自分の意志で自発的に行動する」ということです。人の世話にならない、自分一人でやっていけるという「自立」よりも高度な感じがしますね。先ほどの質問の答えはこの定義に合っているでしょうか? 違うときは、もう一度、自律した場面や自律した人のことを考えてみてください。
 
 自律性について考えるときに、私の中でいつも浮かんでくる言葉があります。それは、「寛容」です。寛容とは、辞書によれば「心が広くて、よく人の言動を受け入れること。他の罪や欠点などをきびしく責めないこと。また、そのさま。」(大辞泉)とあります。寛容と自律性には強い相関があると思うのです。先ほどの自律性の質問に答えることが難しかった場合は、寛容かどうかを考えてみると比較的わかりやすいのではないかと思います。
 
 たとえば、考え方や判断基準や行動が自分とは明らかに違う存在が身近にいるときの反応です。そういう相手に対してどういう感情を持つのか。多くの場合、おかしなヤツとかウザイとか生意気とか、そういう感情を持つのではないかと思います。そしてどういう行動をとるのか。できるだけかかわらないようにする、無視する、意地悪するなどです。反応によって寛容の度合いがわかります。
 
 自分とは考え方や行動が違う相手に対しても、他の人と同じように普通に接するというのが一番良い態度でしょう。もちろん、現実に人に迷惑をかけるような言動をとる人は問題外です。自分の好き嫌いを抑えて「そういうのもアリかな」と受け入れることができるかどうか、その度合いが寛容の度合いだと思います。ちなみに私は、避けてしまうと思います。まだまだです。
 
 この寛容という言葉、Wikipedia によれば明治時代に Tolerance の訳語としてできたということです。Tolerance にはもともと「耐える」とか「我慢する」という意味を含んでいるので、寛容は我慢を伴うといえるかもしれません。寛容になるためには心の鍛錬が必要なのは事実ですし。
 
 寛容にかんしてちょっと気になるところがあります。それは、正しいのは自分という感じがあるところです。大辞泉の定義にも、自分の価値観を絶対的と考えている感じがします。人によって価値観や判断基準には違いがあると思っていなければ、いくら我慢を伴うといっても寛容になることは難しいのではないかと思います。自分が正しいと考えていることだけが正しい、とならないように気をつけたいですね。
 
 さて、改めて質問です。寛容だったなと思えるのはどんな出来事や場面でしたか? 相手は誰でしたか? どんなことを感じましたか?
 
 次回も、自分の感情に気づくことの重要性について解説を続けます。
 
  

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この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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