「物流業での困りごと」とは

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 SCM

1. 物流業と女性労働者

 急な雨が降り出し、台車を押しながら配達する宅配業者を見かけました。トラックから台車に荷降ろししている担当者は台車にビニールシートをかける作業を行っていました。一方で配達中の担当者は荷物を濡らしながら台車を押していました。当然段ボール箱は雨に打たれてしまっており、配達先で、一言二言小言を言われることでしょう。後者はリスクマネジメントが不十分と言われても仕方ありません。常に雨が心配されていた日なので、いつでも荷物を雨から守る準備が必要なのです。
 
 さてこの事例でも明らかなように物流業にとって天候は一つの困りごとです。こんな時にワンタッチで開く傘のように極力物流担当者の手を煩わせない“しかけ”があると助かります。大型トラックの場合はもっと大変です。平ボディーに荷を積んで走っている途中で雨が降り出したなんて時に、トラックを路肩に止めてシートをかけているドライバーを見かけたことがあるのではないでしょうか。このシート掛けは結構重労働です。男性の方であれば、今のままでも何とかなるかもしれません。しかし、今後の物流は女性の力も借りないと何ともなりません。ということは、女性の力でも難なく掛けられる、あるいは別の方法で雨を避けられるツールが欲しいところです。
 
 天候については致し方ないので、天候に変化があった時にいかに容易に対応ができるかを考えなければなりませんし、それが一つのビジネスにつながることも考えられます。急な積雪時に容易に滑り止めを付けられるには、これも困りごとに対する課題です。この場合もキーワードは女性です。かつて製造業で女性の活用について論議されたことがありました。実際に男の現場である製造現場に女性を参画させるためには何を準備しなければならないのか検討がなされたのです。女性更衣室やトイレなど、結構直さなければならないハードウエアが出てきました。それを直すのにもお金がかかります。これについては物流現場でも同じことが言えるのです。また将来的に発生する可能性として「外国人労働者」の物流現場への参入が考えられます。今まで日本人だけで運営してきた物流現場に外国人労働者が入ってくることを想像してみて下さい。
 

2. 物流業と外国人労働者

 海外で業務展開している物流会社であれば、外国人労働者の使い方は手慣れたものかもしれません。しかし、圧倒的多数の物流会社は、今まで外国人の方と一緒に仕事をした経験は無いと思われます。製造会社であれば監督者が海外に行って現場指導を行っているケースがありますので、ある程度は外国人労働者の扱いはわかっている可能性があります。しかし、そのような経験のない物流会社は最初は大変かもしれません。そこで、もし外国人労働者が入ってくることを想定し、あらかじめ何を準備しなければならないかを考えなければなりません。
 
 よく言われるものに「現場の各種表記」が挙げられます。日本語は世界でも極めて特殊であるため、それを理解できる人は少ないと思います。そこで、各国の人が読める表記が必要になります。標準作業書でも同じことが言えます。中国語での表記、スペイン語での表記、ポルトガル語での表記など、その作業者の母国語での表記が求められます。製造業ではこういった複数の言語での表示を工場のいたるところで見かけます。こういった対応が将来の物流業でも必要に迫られる可能性があることを認識し準備を進めましょう。
 
 次に将来の課題として挙げられるのが「従業員の高齢化」でしょう。物流業に若い人たちが入ってこないことが話題になっています。かつて3K職場が話題になりました。「きつい」「汚い」「危険」の3Kは物流業のみならずいろいろな業種で存在し、いずれも若者からは敬遠されています。もちろん、今の状態を少しでも改善し、入ってみたくなる会社にすることも大変重要です。しかし、現に若者がなかなか入ってこないと自然と高齢化していくことは避けられません。女性労働者でも重労働を軽減していく措置が求められるのと同様に高齢者への対応は必要になってきます。「今の荷役のやり方で良いのか」「作業指示書の文字の大きさは今のままで良いのか」「倉庫内の明るさは十分か」などなど高齢者の立場に立って考えてみる必要がありそうです。
 

3. 物流規制緩和も視野に入れる

 ハードウエアで困っていることはありませんでしょうか。積み込み場が狭いため、ウイング車の片側からしか荷役できない場合があります。このようなケースでは、フォークリフトで荷を押し込む形で積み込みをやっている場合が多いでしょう。もし、トラックの荷台の上で簡単に奥に荷を動かせるようになったとしたらきっと便利でしょう。普段困っていることを素直に抽出するところから、改善は始まります。機械も日々進歩していますから、大抵のことは実現が可能なのではないかと思います。要は、ニーズとコストの兼ね合いだと思います。意外と不便な状況を何とかやりくりしてしまっているケースも多々あるのではないでしょうか。
 
 しかし、こういった課題は常に声に出して言うことが大切ではないでしょう...
 SCM

1. 物流業と女性労働者

 急な雨が降り出し、台車を押しながら配達する宅配業者を見かけました。トラックから台車に荷降ろししている担当者は台車にビニールシートをかける作業を行っていました。一方で配達中の担当者は荷物を濡らしながら台車を押していました。当然段ボール箱は雨に打たれてしまっており、配達先で、一言二言小言を言われることでしょう。後者はリスクマネジメントが不十分と言われても仕方ありません。常に雨が心配されていた日なので、いつでも荷物を雨から守る準備が必要なのです。
 
 さてこの事例でも明らかなように物流業にとって天候は一つの困りごとです。こんな時にワンタッチで開く傘のように極力物流担当者の手を煩わせない“しかけ”があると助かります。大型トラックの場合はもっと大変です。平ボディーに荷を積んで走っている途中で雨が降り出したなんて時に、トラックを路肩に止めてシートをかけているドライバーを見かけたことがあるのではないでしょうか。このシート掛けは結構重労働です。男性の方であれば、今のままでも何とかなるかもしれません。しかし、今後の物流は女性の力も借りないと何ともなりません。ということは、女性の力でも難なく掛けられる、あるいは別の方法で雨を避けられるツールが欲しいところです。
 
 天候については致し方ないので、天候に変化があった時にいかに容易に対応ができるかを考えなければなりませんし、それが一つのビジネスにつながることも考えられます。急な積雪時に容易に滑り止めを付けられるには、これも困りごとに対する課題です。この場合もキーワードは女性です。かつて製造業で女性の活用について論議されたことがありました。実際に男の現場である製造現場に女性を参画させるためには何を準備しなければならないのか検討がなされたのです。女性更衣室やトイレなど、結構直さなければならないハードウエアが出てきました。それを直すのにもお金がかかります。これについては物流現場でも同じことが言えるのです。また将来的に発生する可能性として「外国人労働者」の物流現場への参入が考えられます。今まで日本人だけで運営してきた物流現場に外国人労働者が入ってくることを想像してみて下さい。
 

2. 物流業と外国人労働者

 海外で業務展開している物流会社であれば、外国人労働者の使い方は手慣れたものかもしれません。しかし、圧倒的多数の物流会社は、今まで外国人の方と一緒に仕事をした経験は無いと思われます。製造会社であれば監督者が海外に行って現場指導を行っているケースがありますので、ある程度は外国人労働者の扱いはわかっている可能性があります。しかし、そのような経験のない物流会社は最初は大変かもしれません。そこで、もし外国人労働者が入ってくることを想定し、あらかじめ何を準備しなければならないかを考えなければなりません。
 
 よく言われるものに「現場の各種表記」が挙げられます。日本語は世界でも極めて特殊であるため、それを理解できる人は少ないと思います。そこで、各国の人が読める表記が必要になります。標準作業書でも同じことが言えます。中国語での表記、スペイン語での表記、ポルトガル語での表記など、その作業者の母国語での表記が求められます。製造業ではこういった複数の言語での表示を工場のいたるところで見かけます。こういった対応が将来の物流業でも必要に迫られる可能性があることを認識し準備を進めましょう。
 
 次に将来の課題として挙げられるのが「従業員の高齢化」でしょう。物流業に若い人たちが入ってこないことが話題になっています。かつて3K職場が話題になりました。「きつい」「汚い」「危険」の3Kは物流業のみならずいろいろな業種で存在し、いずれも若者からは敬遠されています。もちろん、今の状態を少しでも改善し、入ってみたくなる会社にすることも大変重要です。しかし、現に若者がなかなか入ってこないと自然と高齢化していくことは避けられません。女性労働者でも重労働を軽減していく措置が求められるのと同様に高齢者への対応は必要になってきます。「今の荷役のやり方で良いのか」「作業指示書の文字の大きさは今のままで良いのか」「倉庫内の明るさは十分か」などなど高齢者の立場に立って考えてみる必要がありそうです。
 

3. 物流規制緩和も視野に入れる

 ハードウエアで困っていることはありませんでしょうか。積み込み場が狭いため、ウイング車の片側からしか荷役できない場合があります。このようなケースでは、フォークリフトで荷を押し込む形で積み込みをやっている場合が多いでしょう。もし、トラックの荷台の上で簡単に奥に荷を動かせるようになったとしたらきっと便利でしょう。普段困っていることを素直に抽出するところから、改善は始まります。機械も日々進歩していますから、大抵のことは実現が可能なのではないかと思います。要は、ニーズとコストの兼ね合いだと思います。意外と不便な状況を何とかやりくりしてしまっているケースも多々あるのではないでしょうか。
 
 しかし、こういった課題は常に声に出して言うことが大切ではないでしょうか。こんなものがあったらいいな、というところにヒット商品が生まれます。トラックの地上高も法令で決められていますが、これらもニーズによって規制緩和のチャンスも出てくると思います。これは重量制限も同様です。車幅も同じです。今の状態が本当にベストなのでしょうか。いろいろな状況が合って決められたことなのでしょうが、時代は変わってきています。
 
 時代に変化に応じて法令が変わってもいいのではないかと思います。もし規制によって不便なことがあるのであれば、それは声に出すべきでしょう。世の中の進歩はこの「困った出来事」がきっかけとなることが多いようです。長い時間同じことを続けていると、どうしてもその状況に慣れてしまいます。そうなると最初の内は何とか改善したいと思っていても、しだいに「こんなものか」と思うようになり、改善のきっかけが薄れてしまうことがあります。そのような時にはその仕事をよく知らない第三者に見てもらうと良いと思います。新鮮な目でその仕事を見ることで、新たに困りごとが浮上してくることが考えられます。その困りごとを関係者にぶつけていきましょう。それがハードであれソフトであれ、改善は不可能ではありません。常に問題点を発見し、それを発信していくことを心がけましょう。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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