作り過ぎる無駄を減らす :新環境経営 (その17)

 新環境経営の取組みについての話題を提供するにあたり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状をたどってきました。また、エネルギーマネジメントについても紹介してきました。前回から環境経営「エコを経営に活かす」です。前回は、以下の5つの観点で「エコロジーな経営」を捉える必要があると述べました。当たり前のことですが、源流から下流まで、動脈から静脈まで、空気や水も含めて、生体系には優しい経営が求められます。今回は、1の「作り過ぎる無駄を減らす」について解説します。
 
 1. 作り過ぎる無駄を減らす(オンデマンド生産)
 2. 生産工程で生じるロスを減らす(マテリアルフローコスト会計)
 3. 生産設備に関わる無駄を減らす(品質向上への影響)
 4. 廃棄物の処理(生産段階での低減/再資源化/汚染拡大の防止)
 5. 二酸化炭素排出を減らす(太陽光エネルギーの活用)
 

1. 作り過ぎる無駄を減らす

CSR
 作り過ぎない、在庫を抱えない、はトヨタのジャスト・イン・システムが有名です。高度成長期のように作れば売れる時代では、ベルトコンベアの量産ラインでスピードを上げて少しでも多く作ることにしのぎを削って競争、たくさんの在庫を持って対応し売れ残ると大量に廃棄の時代がありました。映画モダンタイムの、ベルトコンベアのスピードに人間が振り回されているチャップリンの映像は有名です。
 
 日本が豊かになって、皆が同じものを持つ時代から嗜好が多様化する時代へと変化しました。多品種少量生産の時代になると、トヨタのジャスト・イン・システムのように完成品出荷に応じて次の製品の部品を発注することで部品の在庫を極力持たないようにする取り組みが主流になりました。また、セル生産の様にベルトコンベアにたくさんの仕掛りを持つのではなく、1台ずつ完成品を作っていく方法が取り入れられてきました。
 
 ベルトコンベア方式でもセル生産でも、完成品が全て売り切れて消費者の手に渡れば作りすぎる無駄は発生しません。しかし、ベルトコンベア方式は考え方そのものが大量に作って在庫する方式であるため、消費者の嗜好の変化に対応できず、大量廃棄が生ずる可能性が大きいのです。ジャスト・イン・システムもセル生産も生産性を高めるための無駄を削る取り組みであったが、「エコロジーな経営」の点でも優れた方式です。
 
 一方、消費者の発注を受けて組立を開始するオン・デマンド・生産は、少なくとも完成品を作りすぎる無駄は発生しないわけで、エコな環境経営の観点で望ましい方法です。PCの世界では、デルモデルが有名ですが、直接販売と受注生産を組み合わせて顧客からのオーダーを受け、その要望に合わせて外部サプライヤから部品を調達して、カスタマイズした製品を生産。流通/小売業者を介さずに直接販売していました。
 

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2. 作り過ぎの無駄への取り組み

 これからの「エコな環境経営」は、ジャスト・イン・システムやセル生産方式の考え方の上に、それぞれの業種に応じた資源の無駄使いにならない工夫を最優先とすることが求められます。現在、エコロジーな経営の対極にあるのが、スーパー、デパートの食料品売り場です。消費者の欲しいものが売り切れを起こさないようにと品揃えを行い、1円でも多くの売り上げを競う結果、過剰な品揃えが大量の売れ残りの廃棄を生んでいます。一方、消費者の側も意識改革が必要です。廃棄コストは価格に転嫁されて消費者に戻ってきているわけで、消費者には「売り切れ御免」を受け入れて「足るを知る」意識の切り替えが必要と思われます。
 
 また、コンビニでは賞味期限にまつわる大量廃棄が問題になっており、社会になくてはならない存在になった今こそ、コンビニ業界におけるジャスト・イン・システムがどうあるべきか、エコロジーな経営の観点で、早急な対応が求められます。その点、回転寿司は今も進化を続け、注文を受けて握る「オン・デマンド・握り」が主で、最近は長時間くるくる回っている寿司は見かけません。握られた寿司の廃棄の減少が低価格の一端を担っているのです。
 
 次回は、生産工程で生じるロスを減らすについて解説します。
 

この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

【経営理念】地球環境に優しい社会を実現すべく、多様な関係者との交流を通じて、地域社会の変革に貢献する。

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