知的財産における三位一体の戦略について【食品業界の事例】

1.はじめに

 今年(2012年)の6月に切り餅の特許権侵害訴訟についてご紹介させていただきましたが、12月になり、またも食品業界において特許権侵害訴訟が提起されました。 

日清食品がサンヨー食品提訴 ストレート麺特許巡り

 日清食品ホールディングスは3日、即席麺の特許を侵害したとして、サンヨー食品(東京・港)と製造関連会社の太平食品工業(前橋市)を大阪地裁に提訴したと発表した。

 お湯で麺を戻す際に麺がきれいにほぐれ、食べる際に真っすぐになる「ストレート麺製法」で大量生産した際の形状について、サンヨー食品の一部製品が日清食品の特許に酷似していると判断した。

 同社はサンヨー食品の製品販売と太平食品工業の製造の差し止めに加え、2億6652万円の損害賠償も求めた。(日本経済新聞2012/12/3)

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この記事の著者

川上 成年

「御社の知財部」は中小企業様向けの知財支援サービスです。「御社の知財部」は御社の知財活動を推進します。

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1.はじめに

 今年(2012年)の6月に切り餅の特許権侵害訴訟についてご紹介させていただきましたが、12月になり、またも食品業界において特許権侵害訴訟が提起されました。 

日清食品がサンヨー食品提訴 ストレート麺特許巡り

 日清食品ホールディングスは3日、即席麺の特許を侵害したとして、サンヨー食品(東京・港)と製造関連会社の太平食品工業(前橋市)を大阪地裁に提訴したと発表した。

 お湯で麺を戻す際に麺がきれいにほぐれ、食べる際に真っすぐになる「ストレート麺製法」で大量生産した際の形状について、サンヨー食品の一部製品が日清食品の特許に酷似していると判断した。

 同社はサンヨー食品の製品販売と太平食品工業の製造の差し止めに加え、2億6652万円の損害賠償も求めた。(日本経済新聞2012/12/3)

  ここでは、食品業界で訴訟が提起される原因について、知財戦略との兼ね合いから、考えてみたいと思います。

 

2.三位一体の戦略について

 近年、事業戦略、技術戦略、知財戦略が一体となった三位一体の戦略の展開が謳われています。

 これは、自社が事業で活用することを明確に意識して研究開発を行い、その成果物を知的財産として認識し、その知的財産を適切に管理・活用して効率的に収益を獲得してゆく戦略のことをいいます。

 三位一体の戦略を実行することにより、技術経営力が強化され、業績の向上のみならず、企業の持続的な成長が可能となるとされます。

 知財の三位一体戦略

図1 三位一体の戦略について

  ここで、競合他社も当然に三位一体の戦略を実行してきますので、事業戦略、技術戦略、知財戦略のいずれの戦略に重きを置くかは、競合他社の状況により変化します。

図2 競合他社を考慮した三位一体の戦略

  したがって、事業戦略、技術戦略、知財戦略のいずれかにおいて自社の強みを発揮するとともに、弱みを作らないことが、競合他社との競争において必要となります。

 

3.事例の分析

 では、切り餅事件(越後製菓vsサトウ食品)及びストレート麺事件(サンヨー食品vs日清食品)の事例はどうでしょうか。 

 各社が保有する特許権の数をまとめると以下の表になります。 

切り餅事件

越後製菓(原告)

サトウ食品(被告)

特許権数

45

4

 

ストレート麺事件

日清食品(原告)

サンヨー食品(被告)

特許権数

283

21

  表から分かるように、特許権数にそれぞれ10倍以上の差があり、各社の知財活動に大きな差があることがわかります。当然に、特許権数が多い企業が原告となり、少ない企業を訴える(裁判を起こす)ことになります。

 食品業界の対比

図3 食品業界の事業戦略、技術戦略、知財戦略の対比

  食品業界は、市場も成熟しておりますので事業戦略での差別化が難しいと思われ、また製造技術もほぼ同等と思われますので、技術戦略での差別化も難しいと思います。

 しかし、知財戦略に関しては大きな差が見られ、ここで、差別化を図ろうとしているのが、食品業界で訴訟が提起される原因と思われます。

 

4.まとめ

 知財活動といえば、特許出願を行うことと思いがちですが、重要なのは、市場情報や競合他社の情報を収集することです。そして、情報を分析して、自社の知財戦略を構築することが必要です。

  競合他社が特許出願を増やしている場合には、自社のビジネスを守るために最低限の特許出願を行い、知財網を構築することが必要です。

  また、競合他社が特許出願を積極的に行っていない場合には、逆に、特許出願を多く行い、競合他社との知財戦略上の差別化を図ることも有効と思います。

  知財の争いが起きていない業界でも、今後は食品業界のように争いが生じる可能性があります。まずは、特許情報を収集して競合他社の動向を分析してみてはいかがでしょうか。


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