IP(Intellectual Property=知的財産)ランドスケープとは

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1. 膨大な特許情報

 我が国の2016年における特許出願数(国際特許出願件数含む)は約32万件、世界の特許出願件数は約312万件※1で、この数字を見るだけでも膨大な技術情報であり、「ビックデータ」であることが分かります。この情報ソースを特許マップなどの分析手法を活用して、特定技術分野の技術動向、主要出願人とその戦略を知り、自社の開発の方向性、事業戦略や経営戦略に生かす取り組みが大企業を中心に活発に行われています。
 

2. 特許情報の特徴

 特許情報は上述したようにビックデータであること、特許文献の技術内容によりIPC(国際特許分類)、FI(File Index)やFターム(File Forming Term)と呼ばれる細分化された特許分類が付与されていること、特許文献に記載されている技術情報が統一された記載方法によって明確かつ十分に記載されている、という特徴を有します。そのため、特許情報は権利のためだけではなく、その情報の特徴や特性を利用し、調査や技術分析ができる有用な情報ソースであると言えます。
 

3. IP(Intellectual Property=知的財産)ランドスケープとは

 「IPランドスケープ」を簡潔に述べますと、特許情報を含む「知的財産情報」を経営判断や意思決定に活用していくことです。
 
 欧米先進企業において、近年急速に使用されている用語で、知財情報を活用した経営戦略・事業戦略を策定し展開するための手法です。我が国では2017年7月17日付の日本経済新聞朝刊(タイトル:知財分析 経営の中枢に)でも大きく取り上げられ反響を呼びました。企業戦略において各企業の将来の事業ビジョンや製品戦略を示唆する「知的財産情報」を、企業経営や事業戦略に積極的に活用することで、事業競争力の強化や経営上のリスクを低減することができるという大きなメリットがあります。
 
 他方で、特許情報を分析して開発・研究テーマを検討・設定する、他社の関連性の高い特許群を特定するなどこれら手法は、従来から行われていましたが、その情報の特性から経営ステージにまで派生していったものと考えます。
 

4. 特許情報分析で何がわかるのか、何ができるのか

 特定の技術分野といえどもやはり大量の特許文献の内容を分析しなければなりません。これらの情報を例えば特許情報分析ツールなどを用いて、表1に例示する特許マップにより「可視化」することで、技術動向(トレンド)や特定出願人の開発技術の方向性などが分析できるようになります。
 
表1. 特許情報で用いられる特許マップ種類例と何が分析内容
 知的財産
 
 これらの分析情報と、さらに市場情報や論文情報などを加えて分析することで、開発の方向性や研究テーマの設定、強み素材の新規利用開発、新規顧客開拓、共同研究開発者やアライアンス候補先の検討、技術キーパーソンの特定や開発段階での特許侵害予防などができ、リスクを低減しつつ強い戦略を立案することができます。
 

5. 食品分野における「日持ち向上」技術動向の分析事例

 「日持ち向上」作用を有する食品製剤を対象の食品に含ませ、賞味期限などの延長を図る技術について、特許情報分析のイメージができるように、筆者が過去におこなった分析の一部を簡略的に例示します。
 
 知的財産
図1. 日持ち向上技術に関する特許分類Fターム出現数推移マップ
 
 図1は、日持ち向上技術に関する特許分類Fタームが付与された特許文献数の年次推移を可視化したマップです。特に「カルボキシル基」を含む食品製剤の出願が2014年ごろから増加していることが分かります。そこで、この増加の理由を探るべく、出願人分析をしたのが以下の図2となります。ここでは、実際の製剤メーカー名は伏せさせて頂きました。
 
 知的財産
図2. 日持ち向上技術に関する特許分類Fタームと製剤メーカーのシェアマップ(2007-2016年)
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1. 膨大な特許情報

 我が国の2016年における特許出願数(国際特許出願件数含む)は約32万件、世界の特許出願件数は約312万件※1で、この数字を見るだけでも膨大な技術情報であり、「ビックデータ」であることが分かります。この情報ソースを特許マップなどの分析手法を活用して、特定技術分野の技術動向、主要出願人とその戦略を知り、自社の開発の方向性、事業戦略や経営戦略に生かす取り組みが大企業を中心に活発に行われています。
 

2. 特許情報の特徴

 特許情報は上述したようにビックデータであること、特許文献の技術内容によりIPC(国際特許分類)、FI(File Index)やFターム(File Forming Term)と呼ばれる細分化された特許分類が付与されていること、特許文献に記載されている技術情報が統一された記載方法によって明確かつ十分に記載されている、という特徴を有します。そのため、特許情報は権利のためだけではなく、その情報の特徴や特性を利用し、調査や技術分析ができる有用な情報ソースであると言えます。
 

3. IP(Intellectual Property=知的財産)ランドスケープとは

 「IPランドスケープ」を簡潔に述べますと、特許情報を含む「知的財産情報」を経営判断や意思決定に活用していくことです。
 
 欧米先進企業において、近年急速に使用されている用語で、知財情報を活用した経営戦略・事業戦略を策定し展開するための手法です。我が国では2017年7月17日付の日本経済新聞朝刊(タイトル:知財分析 経営の中枢に)でも大きく取り上げられ反響を呼びました。企業戦略において各企業の将来の事業ビジョンや製品戦略を示唆する「知的財産情報」を、企業経営や事業戦略に積極的に活用することで、事業競争力の強化や経営上のリスクを低減することができるという大きなメリットがあります。
 
 他方で、特許情報を分析して開発・研究テーマを検討・設定する、他社の関連性の高い特許群を特定するなどこれら手法は、従来から行われていましたが、その情報の特性から経営ステージにまで派生していったものと考えます。
 

4. 特許情報分析で何がわかるのか、何ができるのか

 特定の技術分野といえどもやはり大量の特許文献の内容を分析しなければなりません。これらの情報を例えば特許情報分析ツールなどを用いて、表1に例示する特許マップにより「可視化」することで、技術動向(トレンド)や特定出願人の開発技術の方向性などが分析できるようになります。
 
表1. 特許情報で用いられる特許マップ種類例と何が分析内容
 知的財産
 
 これらの分析情報と、さらに市場情報や論文情報などを加えて分析することで、開発の方向性や研究テーマの設定、強み素材の新規利用開発、新規顧客開拓、共同研究開発者やアライアンス候補先の検討、技術キーパーソンの特定や開発段階での特許侵害予防などができ、リスクを低減しつつ強い戦略を立案することができます。
 

5. 食品分野における「日持ち向上」技術動向の分析事例

 「日持ち向上」作用を有する食品製剤を対象の食品に含ませ、賞味期限などの延長を図る技術について、特許情報分析のイメージができるように、筆者が過去におこなった分析の一部を簡略的に例示します。
 
 知的財産
図1. 日持ち向上技術に関する特許分類Fターム出現数推移マップ
 
 図1は、日持ち向上技術に関する特許分類Fタームが付与された特許文献数の年次推移を可視化したマップです。特に「カルボキシル基」を含む食品製剤の出願が2014年ごろから増加していることが分かります。そこで、この増加の理由を探るべく、出願人分析をしたのが以下の図2となります。ここでは、実際の製剤メーカー名は伏せさせて頂きました。
 
 知的財産
図2. 日持ち向上技術に関する特許分類Fタームと製剤メーカーのシェアマップ(2007-2016年)
 
 図1と2を見ると、製剤メーカーB社が2014年ごろから、カルボキシル基を含む有機酸系の特許出願を増加させていることが分かります。また、B社の明細書を読むと、製剤の特許出願だけでなく、生麺用、米飯用や揚げ物用などの用途限定発明も多く見られました。このことは、この分野において注力してゆくことが明らかで、特許権の確保を図り、優位にビジネスを進めていこうという戦略の現れであると読めます。また、この場合、同業者はもちろんのこと、出願された用途食品に日持ち向上剤の利用を考えている食品メーカーにも注意が必要となります。
 

5. 特許情報の活用

 ここまでで述べたように、特許情報を活用し、自らの進むべき方向性や戦略を立案することは研究開発ビジネスのために重要です。特許情報をフルに活用し、そして自社の強みを最大限に生かし成長を続けていかれることを切に願います。
 
【参考文献】
※1:特許庁ステータスレポート2018 特許庁
 

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この記事の著者

中谷 明浩

食用油脂関連技術と知財情報の専門家。「食用油と知財情報の水先案内人」として、数々の技術課題を解決に導くエキスパート。

食用油脂関連技術と知財情報の専門家。「食用油と知財情報の水先案内人」として、数々の技術課題を解決に導くエキスパート。


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