地域貢献型企業認定制度 CSR(その4)

投稿日

1.地域発のCSR認定制度について

 CSR地域発のCSR認定制度は、2007年頃から京都、横浜で始まり、宇都宮にも展開されています。スタート時点では、CSRのISO化が検討されていましたが、標準化もガイドラインレベルであり、企業が取り組むべき課題として、充分な認識及び浸透しているとは言い難い状況でした。京都では、プライベートマークを取得した企業による個人情報の漏洩や、ISO取得企業の不祥事が頻発、認証を取得することが目的化し、CSRの認識が徹底されていません。株主が最重要から、企業を取り巻く多様なステークホルダー(利害関係者)の満足度向上。環境への配慮や、働く人たちの配慮や、キャリアップ支援、積極的な情報開示、地域社会への関与など、より広範囲な責任が求められていきました。
 
 そこで、「経済」「社会」「環境」の3つの側面について、京都CSR(KSR):「企業の社会的責任マネジメントシステム要求事項」として、認証制度をスタートさせました。尚、KSRは京都から発信の意味で、京都限定を意図したものではありません。東京都は地域性にこだわったCSR認定の仕組みは見当たりませんが、銀行の融資条件として、個々の項目(環境、品質、情報、衛生、労働)に対する取り組みが優れていると金利が緩和される仕組みがあります。
 

2.横浜型地域貢献企業認定制度

 横浜型地域貢献企業認定制度は、横浜市が横浜市立大学CSRセンターLLPの影山摩子弥センター長に制度設計を依頼し、2007年から運用が開始されています。大手企業が人、物、金を使って、CSR報告書等で大々的に広報・宣伝するのに比べ、地域貢献企業認定制度は、地元に密着して企業活動を継続し、納税を確実に行い、地域の雇用を増やしている企業を認定します。主として中小企業を対象として、自治体が地道に経営を実践している企業を口コミで探し当て、自治体のCSR認定担当者が企業に出向いて企業の経営状態についてヒアリングして認定します。認定されると自治体により広報され、金融機関からの融資の条件も有利になるなど、ほとんど費用負担もなくブランドイメージを高められる仕組みとなっています。
評価項目は「コンプライアンス」、「環境」、「品質」、「労働安全衛生」などの10項目です。これらについての”具体的な取り組み”を問うことが中心ですが、ISOマネジメントシステムに相当する“仕組み”についても評価するようになっています。2012年3月現在、150社を超える企業が認定されており、業種も幅広いようです。
 
 横浜型の地域貢献企業認定制度を設計をされた影山先生は、認定制度の成果について以下の様にコメントされています。企業名の公表や低利融資制度の活用といったメリットについても前面に打ち出しているので、中小企業ほど取り組みが進むケースも多いようです。むしろ中小企業ほど、生き残るためにステークホルダーとの関係を重視し、取組みを進めている場合があります。それがCSRの本質です。CSRはシステムでないといけません。企業だけの取り組みではなく、ステークホルダーに取り組みを伝え、また支援を受...

1.地域発のCSR認定制度について

 CSR地域発のCSR認定制度は、2007年頃から京都、横浜で始まり、宇都宮にも展開されています。スタート時点では、CSRのISO化が検討されていましたが、標準化もガイドラインレベルであり、企業が取り組むべき課題として、充分な認識及び浸透しているとは言い難い状況でした。京都では、プライベートマークを取得した企業による個人情報の漏洩や、ISO取得企業の不祥事が頻発、認証を取得することが目的化し、CSRの認識が徹底されていません。株主が最重要から、企業を取り巻く多様なステークホルダー(利害関係者)の満足度向上。環境への配慮や、働く人たちの配慮や、キャリアップ支援、積極的な情報開示、地域社会への関与など、より広範囲な責任が求められていきました。
 
 そこで、「経済」「社会」「環境」の3つの側面について、京都CSR(KSR):「企業の社会的責任マネジメントシステム要求事項」として、認証制度をスタートさせました。尚、KSRは京都から発信の意味で、京都限定を意図したものではありません。東京都は地域性にこだわったCSR認定の仕組みは見当たりませんが、銀行の融資条件として、個々の項目(環境、品質、情報、衛生、労働)に対する取り組みが優れていると金利が緩和される仕組みがあります。
 

2.横浜型地域貢献企業認定制度

 横浜型地域貢献企業認定制度は、横浜市が横浜市立大学CSRセンターLLPの影山摩子弥センター長に制度設計を依頼し、2007年から運用が開始されています。大手企業が人、物、金を使って、CSR報告書等で大々的に広報・宣伝するのに比べ、地域貢献企業認定制度は、地元に密着して企業活動を継続し、納税を確実に行い、地域の雇用を増やしている企業を認定します。主として中小企業を対象として、自治体が地道に経営を実践している企業を口コミで探し当て、自治体のCSR認定担当者が企業に出向いて企業の経営状態についてヒアリングして認定します。認定されると自治体により広報され、金融機関からの融資の条件も有利になるなど、ほとんど費用負担もなくブランドイメージを高められる仕組みとなっています。
評価項目は「コンプライアンス」、「環境」、「品質」、「労働安全衛生」などの10項目です。これらについての”具体的な取り組み”を問うことが中心ですが、ISOマネジメントシステムに相当する“仕組み”についても評価するようになっています。2012年3月現在、150社を超える企業が認定されており、業種も幅広いようです。
 
 横浜型の地域貢献企業認定制度を設計をされた影山先生は、認定制度の成果について以下の様にコメントされています。企業名の公表や低利融資制度の活用といったメリットについても前面に打ち出しているので、中小企業ほど取り組みが進むケースも多いようです。むしろ中小企業ほど、生き残るためにステークホルダーとの関係を重視し、取組みを進めている場合があります。それがCSRの本質です。CSRはシステムでないといけません。企業だけの取り組みではなく、ステークホルダーに取り組みを伝え、また支援を受けるといったことが重要になります。企業の取り組みは、すべて利益につながらないといけません。短期的な利益と長期的な利益の両方を考える必要があり、社会から信頼を勝ち得ていくのは長期的な利益につながります。
 

3.CSR経営のまとめ

 これまで、4回、CSRについて紹介してきましたが、近年、EMS(環境マネジメントシステム)にCSRを取り込んでいるケースが出てきています。経営の目指すところは「環境に配慮した持続可能社会」であり、「雇用や地域社会への貢献としての社会的責任」であり、CSRが更に進化、発展していく方向にあります。又、近年、CSRを更に進めて、CSV(Creative Shared Value:共通価値)と言う概念も出てきております。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター


関連する他の活用事例

もっと見る
エネルギーマネジメント(ISO50001):新環境経営(その14) 

 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物...

 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物...


地域貢献企業認定制度:新環境経営(その8)

 前回のその7:CSR教育に続いて解説します。   1. 地域発のCSR認定制度について  地域発のCSR認定制度は2007年頃から京都と横浜で...

 前回のその7:CSR教育に続いて解説します。   1. 地域発のCSR認定制度について  地域発のCSR認定制度は2007年頃から京都と横浜で...


環境経営 CSR(その5)

 新環境経営への取組みについての話題を提供するにあたり、今回からはCSR(Corporate Social Responsibility)について、その歴...

 新環境経営への取組みについての話題を提供するにあたり、今回からはCSR(Corporate Social Responsibility)について、その歴...