1.事例:中国企業の工場

ものづくりの現場に作業標準または作業手順書は必須です。ないとどうなるかを考えてみれば、必須の理由がおのずとわかります。 ただし、あればよいと言う訳ではありません。きちんとした作業ができるための標準書となっているかが大事です。中国企業の工場では、作業標準に書かれていることは立派なのですが、実態が伴っていなかったことがありました。今回は、その事例を紹介します。
今後有望と期待されていた中国企業の工場を訪問し、いつものように工程の管理状況の確認を行っていたところ、上流の原料加工工程でそれを発見しました。
原料の加工工程では、金属の原料粉を粉砕して所定の大きさにした後、樹脂と混合するまでを行っています。この工程が後工程の品質に与える影響が大きく、重要工程の1つです。工程の記録からその工程の作業が作業標準通りに行われていなかったことが分かりました。
ところがよく確認していくと、作業標準通りの設定では作業を行うのが実質的に困難であることが分かりました。作業者は、「決まり=作業標準」通りに出来ないので、自分の経験と思い込みで作業をしていました。
2.実態と標準
この会社は、ISO9001を取得済みで、作業標準を含めマニュアル類もきちんと整備されていました。ただ、会社としては、設立間もないが故に、何人かのキーパーソンに各分野すべてを任せるという体制で運営していました。生産を含む技術部門もあるキーマンが、すべてを1人で見ていました。そして、実態とかけ離れた作業標準を作成していました。好意的に解釈をすれば、理想状態を記載したと言うことです。では、なぜ実態と標準が合っていないといけないのでしょうか?
それは、作業標準を守っていないことになり、それを会社も認めることにな...