【対談】「経営者が語る、サスティナブルなモノづくり産業の成長に必要なダイバーシティとインクルージョンについて」 モノづくり未来大会議2024 

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このほど開かれた「モノづくり未来大会議2024」のようす

「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、図面活用プラットフォーム事業を展開するキャディ株式会社(代表取締役 加藤勇志郎氏)はこのほど、東京ポートシティ竹芝で「モノづくり産業変革の第一歩を踏み出す一日」をテーマに、製造業の次の10年を模索するイベント「モノづくり未来大会議2024」を開催。パナソニック コネクト株式会社取締役執行役員の山口有希子氏とヤンマーホールディングス株式会社取締役CSOの長田志織氏を招き「経営者が語る、サスティナブルなモノづくり産業の成長に必要なダイバーシティとインクルージョンについて」と題した対談が開かれ、製造業における現状について、2社の取り組みが紹介された。聞き手は元AERA編集長の浜田敬子氏。

【目次】

    バックオフィスと製造現場の温度差大きく 

    サスティナブルなモノづくり産業の成長に必要なダイバーシティとインクルージョンについて語る対談が開かれた(写真左から山口有希子氏、長田志織氏、浜田敬子氏)

    【写真説明】サスティナブルなモノづくり産業の成長に必要なダイバーシティとインクルージョンについて語る対談が開かれた(写真左から山口有希子氏、長田志織氏、浜田敬子氏)。


    浜田氏
    :ダイバーシティが進む企業に取材に行くと、経営層から「製造業は現場があるから、難しい」という声をよく聞く。これまで、さまざまな課題や築き上げてきた実績もあるかと思うが、長田さんの率直な意見を聞きたい。 
     
    長田氏:ヤンマーホールディングスの場合、男女比率は17%程度と理系大学の比率に近く、入り口から女性が少ないうえ、退職する女性も多いといった現実がある。また、生産現場に目を向けてもホワイト・ブルーカラー含め、女性はさらに少ない状況だ。当社でもダイバーシティを進めるべく、取り組んでいるが正直、苦労している。 
     
    浜田氏:山口さんが持つ課題感は。 
     
    山口氏:本社と製造現場(工場)間の温度差が大きい。コロナ禍では全社的にリモートワークを進め、女性からは「働きやすくなった」との声が挙がる一方、工場(現場)はそこに“モノ”があり、出勤しなければならないため「リモートワークってどこの話?」といったギャップが生まれてしまう。また「イノベーションが大切だ」という意欲のもと、新しい取り組みや動き等も次々と出てくるが、工場の現場ではなかなかそれが発生しにくい。例えば、社長も含め社内SNSなどで発信を行うが、工場ではパソコンを一人一台持っていないこともあり、働き方の違いもあるからか、こちら側からの発信や思いが届けにくいことがある。 


    浜田氏
    :「本社だけ働き方の改善が進むが、自分たち(工場)は関係ないよね」という雰囲気を感じるか。また、温度差から不公平感の高まりもあるかと思うが、解消するために心掛けていることは。 
     
    山口氏:そもそもダイバーシティは何のためにあるのか。ダイバーシティには、一人ひとりを尊重する、大切にするといった考えがベースにある。昭和のような「言われたことをそのままやれ」といった考えは変えていかなければならないが、リーダーの意識は変えることはできるため、そこに力を入れている。また、小さな事かもしれないが、ファシリティ(施設)への投資は効果が高いと考えている。施設が古く暗ければ、職場の空気も重く感じてしまうため、工場の現場も含め、食堂や人が集まる所のレイアウトなどは一気に変更してきている。出勤は必要となるが、モチベーションが上がるような働く環境づくりはきっちりと進めている。 

    「ジェンダーギャップ」解消に自治体と連携 

    浜田氏:長田さん、大手企業が進めるうえで、コーポレート(バックオフィス)部門ではない、いわゆる生産ラインで働く人たちに対応する中で何が難しく、ネックとなっているか。 
     
    長田氏:ヤンマーの主力工場は3、40年後には人口が半分になる可能性があるといわれている地方にあり、人口減は死活問題となるため、女性をはじめ、一度引退した方、外国人などあらゆる人々に選んでもらえる職場を作り上げていくことは重要課題だ。これまでも「女性用トイレの環境改善」をはじめ「非熟練者でも従事しやすい生産ラインの設計」といった取り組みを進めてきた。工場からも、一度入社すると女性の方が長く定着し、働いてもらえるといった声を聞いている。 

    浜田氏:兵庫県豊岡市では、前市長がジェンダーギャップ解消宣言を行った。地方都市から若い女性が減ることが、少子化と人口減少に直結するからだ。そこでまず、地元商工会議所が中心となり、地元企業がワークイノベーション推進協議会を立ち上げ、トイレ・更衣室の美化推進や女性のお茶出しの廃止、男性育休の取得といった取り組みを6年ほど続けている。また、別の地域では、中小企業の女性を集め、リーダー育成のための研修を開いた結果、少しずつだが女性管理職も誕生するなど、中小企業でも自治体と連携することで変われることを実感した。 
    女性が働く場合、生産ラインは働く時間が決まってしまっている。女性の活躍に一番有効なのは、働き方の柔軟性といわれているが例えば、リモートワークだけでなく、子どもの送迎のための一時退席といった対応がまったくできていない。このようなケースで何か解決策はあるのか、それともラインで働くのは独身女性に限られてしまうのか。長田さんが取り組まれる中で、このような事例で悩みや葛藤していることはあるか。 
     
    長田氏:働き方については、要検討課題だが現時点では答えはみえない。ただ、例えば当社のアメリカに所在する工場では週4日勤務、毎日10時間労働の週休3日制となっている。背景には、このような雇用形態でないと、労働者が見付からない現状がある。一方、日本の生産ラインで働く正社員は、派遣社員が手配できなかった時の穴埋めがあれば、ラインに入ることもある。フル稼働が大前提の作業設計であり、休みもあまり取れていない。「1日の作業を分割して交代する」など、そのようなことを織り込むことは非常に難しい。作業分割が可能なラインを構築してみるなど、求められている働きやすさが何かを考えし、実現方法を検討すべきだと思う。 
     

    今、求められる昭和の価値観・感覚のアップデート 

    浜田氏:ユニリーバでは、社内の不公平感をなくすため、工場従業員にアンケートを実施した結果「休日を増やしてほしい」との要望があり、それを採用している。先ほど、二人から人手不足や採用の難しさといった話をうかがったが昨今、特に製造業から、同様の話を聞いている。また、片方では働き方を変えていかないと、女性だけでなく若い人が来ないといった問題もある。働き方とダイバーシティの問題、いわゆるカルチャー変革と採用はとても直結していると思うが。 
     
    山口氏:確かに直結している。現在、製造部門も含め、ダイバーシティに関するKPIを作成し、追跡するなど、製造現場も含めたカルチャー改革を進めている。例えば男性の育児休業は対象者の90%以上が取得しており、みなで支え合っている。なかには反対意見もあるが、ルールを作ることで、周囲の頑張りが生まれている。このような職場は、女性にとっても必ず働きやすい職場につながると考えている。 
    ただ、製造現場は昭和の価値観が残りやすい風土があるのも事実。ベテラン社員に対し「昭和の人が令和で生き残るためには」をテーマにセミナーを開いたが、昭和で当たり前だったことが、若い人たちにとっては“違和感”と受け取られている。コンプライアンス委員会でも、事例をみると、感覚のアップデートがされていないことや意識改革に努める機会を多く設けていかなければと強く感じる。 

     
    浜田氏:製造現場を変えていくため、各社で取り組んでいる事例を。 
     
    長田氏:ヤンマーで行っている「HANASAKA」の活動は、若者から引退した従業員も含め、各々のチャレンジを会社が支援する取り組みだ。一例として「プロダクトアイデアコンテスト」と銘打った内発的イノベーションを促進する活動を進めており、新しいビジネスアイデアを募っている。もちろん、専門知識をはじめ、予算や他部門の協力などが必要となるケースもあるため、数十人のサポートメンバーを用意し、アイデアの手助けをするための黒子となり、手助けを行っている。 
    製造現場では、エンジン生産後に行っていた検査を、工程単位で確認できる体制としたことで、非熟練工でも対応可能となり、女性の比率が従来と比較し2.6倍に増えたと聞いている。 
    また、重量物製造ラインは、比較的軽量な燃料噴射ポンプ組み立てラインの女性比率は2、3割で、他のラインの倍近い数字となっているが、個々の能力に合った配置が行えるよう努めている。 
     
    浜田氏:冒頭で挙げていた、女性の定着率の高さについて理由があれば。 
     
    長田氏:当社で働く女性は、条件の良いところを転々とするのではなく、一旦、落ち着けたらそこで働き続けたいという傾向が強い。工場としても定着してもらえれば戦力となるため、非常にありがたく感じている。そのためにも職場環境の改善や定期的な休暇の取得など、基本的な部分の整備は大事だ。 
     

    「日に新た」、企業も変わらなければ選ばれなくなる時代 

    山口氏:パナソニック コネクトはパソコンをはじめ、電子部品の実装システムなどさまざまな製品を製造しているが、重要な経営戦略の一つとして「DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」を掲げている。企業存続と企業価値を高めるためにも、人...

    このほど開かれた「モノづくり未来大会議2024」のようす

    「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、図面活用プラットフォーム事業を展開するキャディ株式会社(代表取締役 加藤勇志郎氏)はこのほど、東京ポートシティ竹芝で「モノづくり産業変革の第一歩を踏み出す一日」をテーマに、製造業の次の10年を模索するイベント「モノづくり未来大会議2024」を開催。パナソニック コネクト株式会社取締役執行役員の山口有希子氏とヤンマーホールディングス株式会社取締役CSOの長田志織氏を招き「経営者が語る、サスティナブルなモノづくり産業の成長に必要なダイバーシティとインクルージョンについて」と題した対談が開かれ、製造業における現状について、2社の取り組みが紹介された。聞き手は元AERA編集長の浜田敬子氏。

    【目次】

      バックオフィスと製造現場の温度差大きく 

      サスティナブルなモノづくり産業の成長に必要なダイバーシティとインクルージョンについて語る対談が開かれた(写真左から山口有希子氏、長田志織氏、浜田敬子氏)

      【写真説明】サスティナブルなモノづくり産業の成長に必要なダイバーシティとインクルージョンについて語る対談が開かれた(写真左から山口有希子氏、長田志織氏、浜田敬子氏)。


      浜田氏
      :ダイバーシティが進む企業に取材に行くと、経営層から「製造業は現場があるから、難しい」という声をよく聞く。これまで、さまざまな課題や築き上げてきた実績もあるかと思うが、長田さんの率直な意見を聞きたい。 
       
      長田氏:ヤンマーホールディングスの場合、男女比率は17%程度と理系大学の比率に近く、入り口から女性が少ないうえ、退職する女性も多いといった現実がある。また、生産現場に目を向けてもホワイト・ブルーカラー含め、女性はさらに少ない状況だ。当社でもダイバーシティを進めるべく、取り組んでいるが正直、苦労している。 
       
      浜田氏:山口さんが持つ課題感は。 
       
      山口氏:本社と製造現場(工場)間の温度差が大きい。コロナ禍では全社的にリモートワークを進め、女性からは「働きやすくなった」との声が挙がる一方、工場(現場)はそこに“モノ”があり、出勤しなければならないため「リモートワークってどこの話?」といったギャップが生まれてしまう。また「イノベーションが大切だ」という意欲のもと、新しい取り組みや動き等も次々と出てくるが、工場の現場ではなかなかそれが発生しにくい。例えば、社長も含め社内SNSなどで発信を行うが、工場ではパソコンを一人一台持っていないこともあり、働き方の違いもあるからか、こちら側からの発信や思いが届けにくいことがある。 


      浜田氏
      :「本社だけ働き方の改善が進むが、自分たち(工場)は関係ないよね」という雰囲気を感じるか。また、温度差から不公平感の高まりもあるかと思うが、解消するために心掛けていることは。 
       
      山口氏:そもそもダイバーシティは何のためにあるのか。ダイバーシティには、一人ひとりを尊重する、大切にするといった考えがベースにある。昭和のような「言われたことをそのままやれ」といった考えは変えていかなければならないが、リーダーの意識は変えることはできるため、そこに力を入れている。また、小さな事かもしれないが、ファシリティ(施設)への投資は効果が高いと考えている。施設が古く暗ければ、職場の空気も重く感じてしまうため、工場の現場も含め、食堂や人が集まる所のレイアウトなどは一気に変更してきている。出勤は必要となるが、モチベーションが上がるような働く環境づくりはきっちりと進めている。 

      「ジェンダーギャップ」解消に自治体と連携 

      浜田氏:長田さん、大手企業が進めるうえで、コーポレート(バックオフィス)部門ではない、いわゆる生産ラインで働く人たちに対応する中で何が難しく、ネックとなっているか。 
       
      長田氏:ヤンマーの主力工場は3、40年後には人口が半分になる可能性があるといわれている地方にあり、人口減は死活問題となるため、女性をはじめ、一度引退した方、外国人などあらゆる人々に選んでもらえる職場を作り上げていくことは重要課題だ。これまでも「女性用トイレの環境改善」をはじめ「非熟練者でも従事しやすい生産ラインの設計」といった取り組みを進めてきた。工場からも、一度入社すると女性の方が長く定着し、働いてもらえるといった声を聞いている。 

      浜田氏:兵庫県豊岡市では、前市長がジェンダーギャップ解消宣言を行った。地方都市から若い女性が減ることが、少子化と人口減少に直結するからだ。そこでまず、地元商工会議所が中心となり、地元企業がワークイノベーション推進協議会を立ち上げ、トイレ・更衣室の美化推進や女性のお茶出しの廃止、男性育休の取得といった取り組みを6年ほど続けている。また、別の地域では、中小企業の女性を集め、リーダー育成のための研修を開いた結果、少しずつだが女性管理職も誕生するなど、中小企業でも自治体と連携することで変われることを実感した。 
      女性が働く場合、生産ラインは働く時間が決まってしまっている。女性の活躍に一番有効なのは、働き方の柔軟性といわれているが例えば、リモートワークだけでなく、子どもの送迎のための一時退席といった対応がまったくできていない。このようなケースで何か解決策はあるのか、それともラインで働くのは独身女性に限られてしまうのか。長田さんが取り組まれる中で、このような事例で悩みや葛藤していることはあるか。 
       
      長田氏:働き方については、要検討課題だが現時点では答えはみえない。ただ、例えば当社のアメリカに所在する工場では週4日勤務、毎日10時間労働の週休3日制となっている。背景には、このような雇用形態でないと、労働者が見付からない現状がある。一方、日本の生産ラインで働く正社員は、派遣社員が手配できなかった時の穴埋めがあれば、ラインに入ることもある。フル稼働が大前提の作業設計であり、休みもあまり取れていない。「1日の作業を分割して交代する」など、そのようなことを織り込むことは非常に難しい。作業分割が可能なラインを構築してみるなど、求められている働きやすさが何かを考えし、実現方法を検討すべきだと思う。 
       

      今、求められる昭和の価値観・感覚のアップデート 

      浜田氏:ユニリーバでは、社内の不公平感をなくすため、工場従業員にアンケートを実施した結果「休日を増やしてほしい」との要望があり、それを採用している。先ほど、二人から人手不足や採用の難しさといった話をうかがったが昨今、特に製造業から、同様の話を聞いている。また、片方では働き方を変えていかないと、女性だけでなく若い人が来ないといった問題もある。働き方とダイバーシティの問題、いわゆるカルチャー変革と採用はとても直結していると思うが。 
       
      山口氏:確かに直結している。現在、製造部門も含め、ダイバーシティに関するKPIを作成し、追跡するなど、製造現場も含めたカルチャー改革を進めている。例えば男性の育児休業は対象者の90%以上が取得しており、みなで支え合っている。なかには反対意見もあるが、ルールを作ることで、周囲の頑張りが生まれている。このような職場は、女性にとっても必ず働きやすい職場につながると考えている。 
      ただ、製造現場は昭和の価値観が残りやすい風土があるのも事実。ベテラン社員に対し「昭和の人が令和で生き残るためには」をテーマにセミナーを開いたが、昭和で当たり前だったことが、若い人たちにとっては“違和感”と受け取られている。コンプライアンス委員会でも、事例をみると、感覚のアップデートがされていないことや意識改革に努める機会を多く設けていかなければと強く感じる。 

       
      浜田氏:製造現場を変えていくため、各社で取り組んでいる事例を。 
       
      長田氏:ヤンマーで行っている「HANASAKA」の活動は、若者から引退した従業員も含め、各々のチャレンジを会社が支援する取り組みだ。一例として「プロダクトアイデアコンテスト」と銘打った内発的イノベーションを促進する活動を進めており、新しいビジネスアイデアを募っている。もちろん、専門知識をはじめ、予算や他部門の協力などが必要となるケースもあるため、数十人のサポートメンバーを用意し、アイデアの手助けをするための黒子となり、手助けを行っている。 
      製造現場では、エンジン生産後に行っていた検査を、工程単位で確認できる体制としたことで、非熟練工でも対応可能となり、女性の比率が従来と比較し2.6倍に増えたと聞いている。 
      また、重量物製造ラインは、比較的軽量な燃料噴射ポンプ組み立てラインの女性比率は2、3割で、他のラインの倍近い数字となっているが、個々の能力に合った配置が行えるよう努めている。 
       
      浜田氏:冒頭で挙げていた、女性の定着率の高さについて理由があれば。 
       
      長田氏:当社で働く女性は、条件の良いところを転々とするのではなく、一旦、落ち着けたらそこで働き続けたいという傾向が強い。工場としても定着してもらえれば戦力となるため、非常にありがたく感じている。そのためにも職場環境の改善や定期的な休暇の取得など、基本的な部分の整備は大事だ。 
       

      「日に新た」、企業も変わらなければ選ばれなくなる時代 

      山口氏:パナソニック コネクトはパソコンをはじめ、電子部品の実装システムなどさまざまな製品を製造しているが、重要な経営戦略の一つとして「DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」を掲げている。企業存続と企業価値を高めるためにも、人権の尊重は必要不可欠だ。企業戦略の中にも「DEI」と「働き方改革」、「コンプライアンス」の3項目からなる「カルチャー改革」という取り組みがある。例えば本社部門と違い、工場ではコミュニケーションの時間を取るのが難しいという問題もあるが、あえて昼休みや休憩時間にDEIに関する取り組みを行ってもらうよう、時間を決めている。一人ひとりにパソコンがない状況も、それぞれの現場が工夫しながら進めている。 
      私たちが作りたいカルチャーというのは、昭和の体育会系の雰囲気ではなく、たとえ20代の方であっても、問題があれば工場長に対して、普通にコミュニケーションが取れるような社風。コミュニケーションが取りやすい企業風土があれば、例えば不妊治療に悩む男性従業員の話をみんなで聞いて、DEIや人権を意識するような機会を設けることができる。結果的に女性だけではなく、若手の男性も含め働きやすい職場になっていくのではないだろうか。 

      浜田氏:なぜ、製造現場にDEIが必要なのか。 
       
      長田氏:これからの時代「個性の違う個々人と働く」といった意識をもち、選んでもらえる企業にならなければ、存続もできない。性別や国籍といった概念を取り払って考えていかなければならない環境になっていると思う。また、人生は多様なので「同じ箱に押し込めて同じことができるということを押し付ける」ことはできないと考えた際、DEIは未来において必須の考え方であり、男性を含む多様な個々人が働きやすいということが、女性も当然働きやすいということにつながっていくと考えている。 
       
      山口氏:弊社創業者・松下幸之助の「日に新た」という言葉が好きだ。旧態依然のままではなく、世の中が変われば人も企業もアップデートしていかなければならない。今、ものすごい勢いで世の中が変わっている。多様な人々の思いや、働き方という部分を理解し、企業が変わらなければ、企業は選ばれなくなってしまう。 
      パナソニック コネクトは7年前にDEIを企業の根幹とし、数百という施策を行ってきたが「モノが言いやすくなった」、「育休が取れるようになった」、「文句や課題が言えるようになった」という声が聞かれるようになった。DEIはすべての企業が本気で取り組まないといけないと思う。 
       
      浜田氏:日本企業には同質性のリスクがある。日本の工場は年功序列といった社風が根強かったが、これによるリスクが結果的に、昨今の不祥事にも現れてきているのではないかと感じている。内部規律を重視するあまり、逸脱する人を許さなかったり、過去の成功体験にとらわれるなど、自分たちのあり方を見直さなければ、何の声も挙がってこないと思う。このような同質性を避ける意味でも、多様性のある風通しの良い組織づくりが必要と感じた。 



      プロフィール】 
      --- 
      山口有希子氏 
      略歴 
      パナソニック コネクト株式会社取締役 執行役員 ヴァイス・プレジデントCMO DEI担当役員、コネクトカルチャーHUB担当役員。 
      パナソニックの企業向けソリューションビジネスを担うパナソニック コネクト株式会社取締役 兼 デザイン&マーケティング部門責任者。 
      ダイバーシティ推進担当役員として、女性やLGBTQ+を含むジェンダーダイバーシティ、男性育休100%取得などの取り組み等を強力に推進している。 
      日本IBM、シスコシステムズ、ヤフージャパンなど国内外の複数の企業にてマーケティング部門管理職を歴任。 
      日本アドバタイザーズ協会 デジタルメディア委員会 委員長。一般社団法人Metaverse Japan理事。  
      ダイバーシティコミュニティ「MASHINGUP」理事。 不登校児とその親を支援するNPO「優タウン」の副理事としても活動中。 
       

      長田志織氏 
      略歴

      ヤンマーホールディングス株式会社取締役CSO 
      慶応義塾大学法学部卒。デロイトトーマツコンサルティングを経て、ユニゾンキャピタル傘下の東ハトにて経営企画の責任者を務め、EXIT後にユニゾンへ移籍。アデランスへのホワイトナイト提案などに従事。 
      2009年の産業革新機構の立ち上げに参加し、小形風力発電・バイオ創薬等への成長投資や大企業からの事業カーブアウト・新規事業会社設立等を実行。 
      2014年にヤンマーグループへ参画し、マリン事業の責任者を経て現職。ほか、経済産業省産業構造審議会の委員および日蘭貿易連盟アドバイザリーボードメンバーを務める。 

      浜田敬子氏 
      ジャーナリスト 
      略歴 
      1989年に朝日新聞社に入社。99年からAERA編集部。副編集長などを経て、2014年からAERA編集長。 
      2017年3月末に朝日新聞社を退社後、世界12カ国で展開する経済オンラインメディアBusiness Insiderの日本版を統括編集長として立ち上げる。2020年末に退任し、フリーランスのジャーナリストに。2022年8月に一般社団法人デジタル・ジャーナリスト育成機構を設立。2022年度ソーシャルジャーナリスト賞受賞。 
      「羽鳥慎一モーニングショー」「サンデーモーニング」「News23」のコメンテーターや、ダイバーシティなどについての講演多数。 
      著書に『働く女子と罪悪感』『男性中心企業の終焉』『いいね!ボタンを押す前に』(共著)。 

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