ベスト値とのギャップ 物流を測定するツールを導入する(その2)

更新日

投稿日

サプライチェーン

 

◆ 物流生産性用メジャー

 前回の物流を測定するツールを導入する(その1)価格見積もりの統一性とはで述べたように、過去の実績から所定の段ボール箱の平均処理工数が分かります。これは段ボール箱のハンドリングに関わったすべての作業者の平均値ということになります。

 この値を使えば段ボール箱の処理作業に関する生産性を測定することが可能になります。一つの見方として平均値に比べ何パーセント短縮されたかによって生産性が向上したかどうかが分かります。

 もし生産性向上を進めていくのであれば、この平均値に対する改善率を目標値として定めると良いでしょう。平均値が一箱60秒であれば、これを1割向上するという目標にした時には目標値は「54秒」だということになります。

 

 このように、生産性向上を図っていくことは企業存続の上で欠かせない活動になります。先に挙げた平均値の改善は自社の中だけをみた活動であるため、今一つ弱いところがあります。なぜなら、もしかしたら他社は「50秒」で処理している可能性があるからです。この時点で今から1割改善するだけでは他社には勝てないということが分かります。

 そこで、平均値ではなくその職場で最も処理速度の速い人のデータを把握してみます。その人が仮に「48秒」でできていたとすると、その値は他社を上回っています。

 その時点で「48秒」は競争力のある値だと分かります。そうなったら、今度は自社の作業者が皆最速の人の仕事の仕方を学び、全員が「48秒」でできるように訓練します。そしてそれを達成できれば他社に打ち勝つことができるのです。

 

 なかなか他社のデータを入手することは容易ではありません。そこでもっと効果的な手法を考えていきます。それが「あるべき姿」の工数を定め、その値を目標として活動していくことです。

 「あるべき姿」ですから、手待ちや迷いなどの要素を一切含まないベスト値ということになります。そしてそのベ...

サプライチェーン

 

◆ 物流生産性用メジャー

 前回の物流を測定するツールを導入する(その1)価格見積もりの統一性とはで述べたように、過去の実績から所定の段ボール箱の平均処理工数が分かります。これは段ボール箱のハンドリングに関わったすべての作業者の平均値ということになります。

 この値を使えば段ボール箱の処理作業に関する生産性を測定することが可能になります。一つの見方として平均値に比べ何パーセント短縮されたかによって生産性が向上したかどうかが分かります。

 もし生産性向上を進めていくのであれば、この平均値に対する改善率を目標値として定めると良いでしょう。平均値が一箱60秒であれば、これを1割向上するという目標にした時には目標値は「54秒」だということになります。

 

 このように、生産性向上を図っていくことは企業存続の上で欠かせない活動になります。先に挙げた平均値の改善は自社の中だけをみた活動であるため、今一つ弱いところがあります。なぜなら、もしかしたら他社は「50秒」で処理している可能性があるからです。この時点で今から1割改善するだけでは他社には勝てないということが分かります。

 そこで、平均値ではなくその職場で最も処理速度の速い人のデータを把握してみます。その人が仮に「48秒」でできていたとすると、その値は他社を上回っています。

 その時点で「48秒」は競争力のある値だと分かります。そうなったら、今度は自社の作業者が皆最速の人の仕事の仕方を学び、全員が「48秒」でできるように訓練します。そしてそれを達成できれば他社に打ち勝つことができるのです。

 

 なかなか他社のデータを入手することは容易ではありません。そこでもっと効果的な手法を考えていきます。それが「あるべき姿」の工数を定め、その値を目標として活動していくことです。

 「あるべき姿」ですから、手待ちや迷いなどの要素を一切含まないベスト値ということになります。そしてそのベスト値とのギャップを把握し、そのギャップをできるだけ小さくなるように改善や訓練を行っていくのです。

 例えばあるべき姿に基づくベスト値を「38秒」だとしましょう。平均値が「60秒」の場合、そのギャップは「60秒」÷「38秒」で1.57倍ということになります。常に物流はメジャーを持ち、その値と実態とのギャップを改善余地として認識しておくことが重要なのです。

 次回に続きます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
ギリギリまで作らない、運ばない、仕入れない (その7)

1.韓国の事例    前回のその6に続いて解説します。今回使用するデータは「読者が理解しやすい」を前提に、数字は円表示するとともに多少まるめ...

1.韓国の事例    前回のその6に続いて解説します。今回使用するデータは「読者が理解しやすい」を前提に、数字は円表示するとともに多少まるめ...


サプライチェーンマネジメントにおけるベンチマーキング

 ベンチマーキングは、米国において1980年代に日本の製造業を研究するプロセスのなかでモデル化された手法です。  日本の多くの会社は自社と同じ成功事例に...

 ベンチマーキングは、米国において1980年代に日本の製造業を研究するプロセスのなかでモデル化された手法です。  日本の多くの会社は自社と同じ成功事例に...


面積原価(その1)

 SCMの生産性を計るKPIとして、『面積原価』の概念とそれに基づくSCMのPDCAサイクルを実現する手法『面積原価管理』について解説します。 &nbs...

 SCMの生産性を計るKPIとして、『面積原価』の概念とそれに基づくSCMのPDCAサイクルを実現する手法『面積原価管理』について解説します。 &nbs...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
容積的積載率と重量的積載率の管理 物流をマネジメントできるシステム(その2)

         物流コストの約6割が輸送コストです。したがって物流担当者はどうしても輸送にフォーカスしていく必要があるのです。最近輸送価格が上がっ...

         物流コストの約6割が輸送コストです。したがって物流担当者はどうしても輸送にフォーカスしていく必要があるのです。最近輸送価格が上がっ...


誰でも簡単に物流改善

  1.物流改善は特別なものではない  物流を専門として担当されている方に限らず、会社で改善活動を行っていると「物流改善」に取り組む必要性が出てく...

  1.物流改善は特別なものではない  物流を専門として担当されている方に限らず、会社で改善活動を行っていると「物流改善」に取り組む必要性が出てく...


管理会計としての物流 物流関心度を高める(その2)

 前回のその1に続いて解説します。    物流事業者でない場合、物流コストは財務諸表には出てこないため、別の費目から抽出する必要があります。たとえば営...

 前回のその1に続いて解説します。    物流事業者でない場合、物流コストは財務諸表には出てこないため、別の費目から抽出する必要があります。たとえば営...