化学分野でのアイデア発想事例(元素と発酵)

更新日

投稿日

1.知人の科学者が話した「ある気体」の正体を見抜いて、化学元素を発見

フランスの化学者 アントワーヌ・ローラン・ド・ラヴォアジエ

アイデア発想は炎から 1774年秋のこと、ラヴォアジエは邸宅にイギリスから来た化学者プリーストリを招いて歓迎の宴をひらきました。その席でプリーストリが、「ある気体」の中ではろうそくが大きな炎を出してよく燃えることを発見したと話しました。これに、ラヴォアジエは大きなショックを受けます。当時、燃焼が何によって起こるのかは化学界の重要テーマであり、このプリーストリの話が研究の方向を決めてくれたのです。

 ラヴォアジエが研究を進めた結果、空気は燃焼を助ける酸素と呼吸に役立たない有毒ガスから成ることを明らかにし、酸素を元素と規定しました。この衝撃的な発見は、「空気は元素である」というアリストテレス以来の説を信じていた学者や、「燃焼は『フロギストン』という元素が飛散して起こる現象」と主張するフロギストン論者からの激しい反論を巻き起こしました。

 最初に酸素の存在を発見したプリーストリ自身、フロギストン論者だったのは皮肉なことです。一方のラヴォアジエは、酸素を元素と定めたことから水素、硫黄、リンなども元素であることを発見し、まもなく33の元素を発表したのでした。

2.ワインの変質を防ぐ方法を相談されたことから、発酵の仕組みを解明

フランスの科学者 ルイ・パストゥール

 リール大学化学教授だったパストゥールは、ある時、地元のワイン醸造業者からワインの変質を防ぐ方法について相談をもちかけられました。それがきっかけとなり、彼は発酵の仕組みの研究を始めます。

 当時、発酵は化学反応によって起こるという説が優勢でしたが、パストゥールは酵母の働きに注目し、1860年に酵母を人工培養するという方...

1.知人の科学者が話した「ある気体」の正体を見抜いて、化学元素を発見

フランスの化学者 アントワーヌ・ローラン・ド・ラヴォアジエ

アイデア発想は炎から 1774年秋のこと、ラヴォアジエは邸宅にイギリスから来た化学者プリーストリを招いて歓迎の宴をひらきました。その席でプリーストリが、「ある気体」の中ではろうそくが大きな炎を出してよく燃えることを発見したと話しました。これに、ラヴォアジエは大きなショックを受けます。当時、燃焼が何によって起こるのかは化学界の重要テーマであり、このプリーストリの話が研究の方向を決めてくれたのです。

 ラヴォアジエが研究を進めた結果、空気は燃焼を助ける酸素と呼吸に役立たない有毒ガスから成ることを明らかにし、酸素を元素と規定しました。この衝撃的な発見は、「空気は元素である」というアリストテレス以来の説を信じていた学者や、「燃焼は『フロギストン』という元素が飛散して起こる現象」と主張するフロギストン論者からの激しい反論を巻き起こしました。

 最初に酸素の存在を発見したプリーストリ自身、フロギストン論者だったのは皮肉なことです。一方のラヴォアジエは、酸素を元素と定めたことから水素、硫黄、リンなども元素であることを発見し、まもなく33の元素を発表したのでした。

2.ワインの変質を防ぐ方法を相談されたことから、発酵の仕組みを解明

フランスの科学者 ルイ・パストゥール

 リール大学化学教授だったパストゥールは、ある時、地元のワイン醸造業者からワインの変質を防ぐ方法について相談をもちかけられました。それがきっかけとなり、彼は発酵の仕組みの研究を始めます。

 当時、発酵は化学反応によって起こるという説が優勢でしたが、パストゥールは酵母の働きに注目し、1860年に酵母を人工培養するという方法で、その正体が微生物であることをつきとめました。これによって発酵の仕組みが一気に解明されたのです。

 そして、低温・短時間で加熱殺菌する技術を開発し、研究の出発点となったワイン業者の依頼にも応えました。この殺菌法の発明によって、フランスのワイン製造高は飛躍的にハネ上がったのです。

  

出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫)

◆関連解説『アイデア発想法とは』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

髙橋 誠

企業のイノベーション戦略の構築と実践をお手伝いし、社員の創造性開発を促進し、新商品の開発を支援します!

企業のイノベーション戦略の構築と実践をお手伝いし、社員の創造性開発を促進し、新商品の開発を支援します!


「アイデア発想法一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
情報収集の3原則とは

  1.情報収集の3原則は「規・即・集」  創造とは「課題を情報の結合により新しい解決をはかる事」と定義できます。我々は解決のために各種...

  1.情報収集の3原則は「規・即・集」  創造とは「課題を情報の結合により新しい解決をはかる事」と定義できます。我々は解決のために各種...


ブレインライティング で合意形成

  だれでもカンタン!脳のクセを使った説明力・説得力を身に付けるトレーニング   先日、WEBセミナーの中で ブレインライテ...

  だれでもカンタン!脳のクセを使った説明力・説得力を身に付けるトレーニング   先日、WEBセミナーの中で ブレインライテ...


アイデア発想法とは

     仕事で、求められるのはクリエイティブに考える力です。多様な課題解決のためには、基本的なクリエイティブ思考法を身につけ...

     仕事で、求められるのはクリエイティブに考える力です。多様な課題解決のためには、基本的なクリエイティブ思考法を身につけ...


「アイデア発想法一般」の活用事例

もっと見る
屋内外で発見したことからの発想事例2 -熱気球、パンチカード-

1.煙突の上で紙切れが舞っているのを見て熱気球を発明した、フランスの発明家 モンゴルフィエ兄弟     ジョセフ・ミシェル・モンゴルフィエと、ジャック...

1.煙突の上で紙切れが舞っているのを見て熱気球を発明した、フランスの発明家 モンゴルフィエ兄弟     ジョセフ・ミシェル・モンゴルフィエと、ジャック...


しつこく繰り返して、発見や発明を生んだ事例1-噴射式復水器、蓄音機-

1.蒸気の性質を科学的に調べ続け、実用に耐える蒸気機関を完成させた、イギリスの科学者ジェームズ・ワット    産業革命を推進する原動力となった蒸気機関...

1.蒸気の性質を科学的に調べ続け、実用に耐える蒸気機関を完成させた、イギリスの科学者ジェームズ・ワット    産業革命を推進する原動力となった蒸気機関...


必要は発明の母-万年筆とボールペンのアイデア発想事例

1.万年筆のアイデア発想   万年筆の逸品として名高いウォーターマン。これを開発したのがアメリカ人の発明家にして製造業者のルイス・エドソン・ウ...

1.万年筆のアイデア発想   万年筆の逸品として名高いウォーターマン。これを開発したのがアメリカ人の発明家にして製造業者のルイス・エドソン・ウ...