加飾技術の可能性を広げる「2.5D電磁波造形技術」とは

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生産マネジメント
 
 今回紹介するのは、2.5Dの新しい技術「電磁波造形技術」です。
 

1. 2.5D加飾とは

 製品の表面を装飾する「加飾技術」が様々な広がりを見せています。
 
 加飾技術の可能性を広げる「2.5D電磁波造形技術」という分野があります。これは、印刷や塗装などの表面装飾(2D)と、機械加工や3Dプリンタなどの立体造形(3D)の間にあたるものです。平坦なシート状の基材をベースとして、その上に質感や奥行きを表現する立体的な形状を付与するものです。
 
 例えば、金型のシボ(革や木目などの表面凹凸形状の再現)や、UVプリンタなどの積層印刷(樹脂を厚盛りすることで立体形状を形成)があります。印刷技術が色相を表現するのに加えて、立体形状を付与することで質感をより忠実に再現することができます。
 
 先の例では、金型は精緻な表現が可能です。積層印刷はインクジェット等により少量多品種短納期に対応します。その他の技術も含めて一長一短があります。
 

2. 電磁波造形技術

 電磁波によって樹脂を固める成形技術ではなく、電磁波によって平面から形状を隆起させるという技術になります。用いるシートの構造は、表面から①マイクロフィルム層、②インクジェット層、③バンプ層、④基材層、の4層となっています。③のバンプ層には液状炭化水素を熱可塑性樹脂で包んだマイクロカプセルがあります。
 
 加工の方法は、まず①マイクロフィルム層に、立体形状を表現するカーボン印刷を行います。そして、全面に電磁波を照射します。すると、①のカーボンが濃く転写された場所ほど、カーボンによってより電磁波を吸収して温度が上昇します。高温になると、③バンプ層のマイクロカプセルが破壊されて、内部の液状炭化水素が放出され、微細な発泡を起こし、バンプ層を隆起させます。
 
 これで、立体形状が完成します。次に①マイクロフィルムを剥がし、最後に②インクジェット層へカラー印刷を行います。
 

3. 電磁波造形技術のメリットと、他の技術との棲み分け

 この技術は、インクジェットの積層印刷と同様に、オンデマンド対応が可能です。データさえあれば金型不要で短納期生産ができます。
 
 インクジェット印刷では原理的に1mm以上の大きな立体形状を作ろうとすると非常に時間がかかり材料コストも高くなります。この電磁波造形技術は、2~3mmレベルの形状を容易に作ることができます。大きな凹凸形状はこれまで金型を使用することが必要でしたが、オンデマンド対応を可能にするという点で、工業製品の表現領域を広げる画期的な技術といえます。
 
 この技術はCASIOが「Mofrel 2.5D」のブランド名で発表し、CEATEC2017でグランプリを受賞しました。
 

4. 電磁波造形技術の今後

 この電磁波造形技術は、現状では素材の点から、硬度や環境耐性が求められる部位には使用しづらいものとなっています。逆に、人が手で触れたくなる優しい質感を持つため、その利点が生かせる用途(例えばインテリアや自動車の内装など)に有効といえます。
 
 この技術は他にも様々な構造・材質への展開が期待されます。それによって表現領域や用途の拡大が見込まれます。
 
 さらに、「平面から立体形状が発達する」という原理の面で新しいといえるため、その原理にフォーカスした新しい技術が創発されることが期待されます。
 

5. 加飾技術を進展させる「原動力」

 加飾技術の大きなトレンドとして、塗装や印刷から、一体成型、造形技術への発展の流れがあり、製品に求められる精密さや耐久性、信頼性などの面でハードルを超えるときに新しい用途への展開が進みます。過去にも、そのような進展の原動力となったのは、新しい原理に基づいた革新的な技術です。電磁波造形技術は加飾技術の進展の原動力となることが期待されます。
 

この記事の著者

大薗 剣吾

技術士の中でも数少ない「薄膜の専門家」として、スパッタ・コーティング等の表面技術を得意とします。「ものづくりはひとづくりから」の精神で、組織のモチベーションを高めて創造性を引き出します。

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