物流技能向上プログラムの導入 物流人財育成(その6)

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【物流人財育成 連載目次】

 

1.物流現場力を鍛えるには

 
 前回のその5に続いて解説します。物流スタッフ物流の生命線は現場にあることは言うまでもありません。その現場のパフォーマンスを左右するのが「物流現場力」でありそれを鍛えることで結果的に企業体力も向上すると考えられます。それを担う物流現場スタッフのスキルアップのために「物流技能向上プログラム」の導入を考えましょう。
 
 このプログラムの目的は人事制度を整備するとともに計画的に物流現場スタッフの技能向上とプロモーションを図っていくことにあります。さらにそれぞれのスタッフがモチベーションを高く保ち、活き活きと仕事ができる環境を形成することも狙いの一つです。
 

2.物流現場の人事制度

 
 物流現場の人事制度ですが、第一に、階層ごとに職務上何が要求されているか、即ち職務要件が明確化されていること、第二に、上司と各スタッフが何をどれぐらいスキルアップしたらよいかがわかることが重要で、この二つを仕組化することが望ましいでしょう。例えば、「指示を受けずに入庫検収処理ができる」とか「日々の作業編成を組むことができる」といったように具体的に要件が定められていることが必要です。職位は複数の階層を設けます。例えば、新入社員はランク1、班長はランク5、現場係長はランク6といったように決めていけばよいでしょう。この階層ごとに要件を定めていきますが、その際に「テクニカルスキル」、「ヒューマンスキル」、「マネジメントスキル」といった具合にカテゴリーを分けておくとスキルアップのポイントがより明確なものとなるでしょう。
 
 次に物流現場スタッフの技能向上とプロモーションについて見ていきましょう。あらかじめ定めた階層別要件に照らして見ると、そのスタッフの強み・弱みが明確になります。監督者は各スタッフ別にトレーニングプログラムを作成し、弱みを克服するための教育を行います。比較的階層が上の者に下の者の教育させることも良い手段です。なぜなら人に教えることで自身のスキルアップにもつながるからです。年に一度、各スタッフのスキル測定を実施し、来年度の階層を決定していくというサイクルを構築していくと良いでしょう。
 
 特に上位階層のスタッフに対しては特別教育プログラムを設定し、普段のOJTでは不十分となる領域をカバーしていきましょう。例えば班長クラスにチャレンジするスタッフのためには、小さなグループをマネジメントしていくスキルや、現場改善力の習得ができるプログラムを作成し、管理者や物流IEが講師となって教育していきましょう。教育の後には発表会を設けて管理者の前で、教育の成果と班長昇格後の仕事の取り組み方について報告させます。そこで班長に適格と認められればプロモーションされる仕組みにします。これは現場係長昇格時も同様ですがより高度な内容になることは当然です。
 
 各職場では毎年プロモーション計画を作成しこの計画に沿って教育と実際のプロモーションを実施していく仕組を構築しましょう。...

 

【物流人財育成 連載目次】

 

1.物流現場力を鍛えるには

 
 前回のその5に続いて解説します。物流スタッフ物流の生命線は現場にあることは言うまでもありません。その現場のパフォーマンスを左右するのが「物流現場力」でありそれを鍛えることで結果的に企業体力も向上すると考えられます。それを担う物流現場スタッフのスキルアップのために「物流技能向上プログラム」の導入を考えましょう。
 
 このプログラムの目的は人事制度を整備するとともに計画的に物流現場スタッフの技能向上とプロモーションを図っていくことにあります。さらにそれぞれのスタッフがモチベーションを高く保ち、活き活きと仕事ができる環境を形成することも狙いの一つです。
 

2.物流現場の人事制度

 
 物流現場の人事制度ですが、第一に、階層ごとに職務上何が要求されているか、即ち職務要件が明確化されていること、第二に、上司と各スタッフが何をどれぐらいスキルアップしたらよいかがわかることが重要で、この二つを仕組化することが望ましいでしょう。例えば、「指示を受けずに入庫検収処理ができる」とか「日々の作業編成を組むことができる」といったように具体的に要件が定められていることが必要です。職位は複数の階層を設けます。例えば、新入社員はランク1、班長はランク5、現場係長はランク6といったように決めていけばよいでしょう。この階層ごとに要件を定めていきますが、その際に「テクニカルスキル」、「ヒューマンスキル」、「マネジメントスキル」といった具合にカテゴリーを分けておくとスキルアップのポイントがより明確なものとなるでしょう。
 
 次に物流現場スタッフの技能向上とプロモーションについて見ていきましょう。あらかじめ定めた階層別要件に照らして見ると、そのスタッフの強み・弱みが明確になります。監督者は各スタッフ別にトレーニングプログラムを作成し、弱みを克服するための教育を行います。比較的階層が上の者に下の者の教育させることも良い手段です。なぜなら人に教えることで自身のスキルアップにもつながるからです。年に一度、各スタッフのスキル測定を実施し、来年度の階層を決定していくというサイクルを構築していくと良いでしょう。
 
 特に上位階層のスタッフに対しては特別教育プログラムを設定し、普段のOJTでは不十分となる領域をカバーしていきましょう。例えば班長クラスにチャレンジするスタッフのためには、小さなグループをマネジメントしていくスキルや、現場改善力の習得ができるプログラムを作成し、管理者や物流IEが講師となって教育していきましょう。教育の後には発表会を設けて管理者の前で、教育の成果と班長昇格後の仕事の取り組み方について報告させます。そこで班長に適格と認められればプロモーションされる仕組みにします。これは現場係長昇格時も同様ですがより高度な内容になることは当然です。
 
 各職場では毎年プロモーション計画を作成しこの計画に沿って教育と実際のプロモーションを実施していく仕組を構築しましょう。ランク2から3へ3名、ランク4から5へ1名というように、計画を立てそれを実現するために前述したトレーニングプログラムを作成し教育していくのです。
 
 このような仕組を社内に確立することで会社としての人財に対する期待値が明確になるとともに、各スタッフも自身の成長のためには何をすべきかがはっきりします。その結果として仕事に対するモチベーション向上が期待でき、結果として活き活きとした職場環境と物流現場力の強化につながるものと考えられるのです。
 
この文書は、『月刊ロジスティクスIT』の記事を筆者により改変したものです。
 
 
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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