成果主義のメリットとメンタルヘルス

更新日

投稿日

 事務職や専門職など「ホワイトカラー」を対象に、週40時間といった労働時間規制の適用を外し、成果に見合った給与を支払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入を検討する企業が相次いでいるようです。2007年に政府がこの法案をまとめましたが、「残業代ゼロ」「過労死促進」との批判を受け、国会への法案提出を断念しています。しかし、今回まとまった成長戦略で、年収1000万円以上の専門職に限って導入する方針が出ています。導入するためには、そのメリットとデメリットを評価し、それに対するセーフティーネットを構築しておくことが必須となります。 

 成果主義導入のメリットは次のようなことです。

(1)開発部門や企画部門などでは特に、生産性は時間ではなく、個人や組織の能力に依存するため「評価の公平性」が増す
(2)向上心がある人は、より自分を高めようとするため「モチベーション向上」に繋がる
(3)経営面では、業務が効率化されるため「総人件費抑制」効果が出る

 一方、成果主義導入のデメリットは次のようなことになります。

(1)成果主義が導入されたことで、社員が評価を気にするようになってくる。上司も上ばかりを見る者が増え、部下の不満は募る
(2)短期に成果をあげることが求められ、上司にとって有能な人材を抱え込みたくなる
(3)手段は選ばないために「違法行為」が発生したり、失敗を恐れて高い目標に挑戦しなくなったりしやすくなる
(4)部下や後輩の育成も評価対象にならず、個人主義に陥ったりする。その結果、コミュニケーション不足、職場いじめ、パワーハラスメント、「うつ」などの精神疾患も多くなる。

 

 対応策として、業績評価方法の改善、動機付け施策、セーフティーネットとしてのメンタルヘルスの視点から考えなおさなければならなくなります。具体的には、次のような施策を行うようになります。

(1)結果だけを評価するのではなく、業務変革や人材育成などの業務のプロセスも評価する...

 事務職や専門職など「ホワイトカラー」を対象に、週40時間といった労働時間規制の適用を外し、成果に見合った給与を支払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入を検討する企業が相次いでいるようです。2007年に政府がこの法案をまとめましたが、「残業代ゼロ」「過労死促進」との批判を受け、国会への法案提出を断念しています。しかし、今回まとまった成長戦略で、年収1000万円以上の専門職に限って導入する方針が出ています。導入するためには、そのメリットとデメリットを評価し、それに対するセーフティーネットを構築しておくことが必須となります。 

 成果主義導入のメリットは次のようなことです。

(1)開発部門や企画部門などでは特に、生産性は時間ではなく、個人や組織の能力に依存するため「評価の公平性」が増す
(2)向上心がある人は、より自分を高めようとするため「モチベーション向上」に繋がる
(3)経営面では、業務が効率化されるため「総人件費抑制」効果が出る

 一方、成果主義導入のデメリットは次のようなことになります。

(1)成果主義が導入されたことで、社員が評価を気にするようになってくる。上司も上ばかりを見る者が増え、部下の不満は募る
(2)短期に成果をあげることが求められ、上司にとって有能な人材を抱え込みたくなる
(3)手段は選ばないために「違法行為」が発生したり、失敗を恐れて高い目標に挑戦しなくなったりしやすくなる
(4)部下や後輩の育成も評価対象にならず、個人主義に陥ったりする。その結果、コミュニケーション不足、職場いじめ、パワーハラスメント、「うつ」などの精神疾患も多くなる。

 

 対応策として、業績評価方法の改善、動機付け施策、セーフティーネットとしてのメンタルヘルスの視点から考えなおさなければならなくなります。具体的には、次のような施策を行うようになります。

(1)結果だけを評価するのではなく、業務変革や人材育成などの業務のプロセスも評価する
(2)節目ごとにキャリアデザイン研修を開催し、社員のモチベーションを高める
(3)キャリアカウンセリングで従業員の問題解決の支援を実施する。うつになってしまったときの支援体制を構築するなどである。

 特に、キャリアカウンセリングの経験から、メンタルヘルスへの対応策が非常に重要となります。図1にその予防法と留意事項を列挙します。

成果主義メンタルヘルスへの対応

図1 メンタルヘルスへの対応

   続きを読むには・・・


この記事の著者

粕谷 茂

「感動製品=TRIZ*潜在ニーズ*想い」実現のため差別化技術、自律人財を創出。 特に神奈川県中小企業には、企業の未病改善(KIP)活用で4回無料コンサルを実施中。

「感動製品=TRIZ*潜在ニーズ*想い」実現のため差別化技術、自律人財を創出。 特に神奈川県中小企業には、企業の未病改善(KIP)活用で4回無料コンサルを...


「人財教育・育成」の他のキーワード解説記事

もっと見る
研修成果の出る組織と出ない組織はどこが違うのか、効果を高めるには

  今回は、研修効果を出す組織についておはなしします。研修効果を最大にするノウハウがここにあります。   【目次】1. 研修...

  今回は、研修効果を出す組織についておはなしします。研修効果を最大にするノウハウがここにあります。   【目次】1. 研修...


内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その21)

  「6つのルールと18の書き方」に関し「6つのルール」および「18の書き方」の概要について解説してきました。「6つのルールと18の書き方...

  「6つのルールと18の書き方」に関し「6つのルール」および「18の書き方」の概要について解説してきました。「6つのルールと18の書き方...


技術士第二次試験対策:復習する

 平成30年度・技術士第二次試験まで残り1ヶ月となりました。受験生の方々は追い込みの勉強をしていると思います。    試験までに、これまで勉...

 平成30年度・技術士第二次試験まで残り1ヶ月となりました。受験生の方々は追い込みの勉強をしていると思います。    試験までに、これまで勉...


「人財教育・育成」の活用事例

もっと見る
‐能力開発のシステム創り 製品・技術開発力強化策の事例(その43)

◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。   前回の事例その42に続いて解説します。    (1) 情報伝達の仕組み創り   (2) 目標を明確...

◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。   前回の事例その42に続いて解説します。    (1) 情報伝達の仕組み創り   (2) 目標を明確...


物流とスキル

1. 輸送のスキルとは  物流の仕事は専門性が強いものと思われます。何故なら多くの会社が物流業務をアウトソースしているからです。自社で簡単にできるの...

1. 輸送のスキルとは  物流の仕事は専門性が強いものと思われます。何故なら多くの会社が物流業務をアウトソースしているからです。自社で簡単にできるの...


「気づき」の仕組み 擦り合わせ型開発 基本の仕組み (その2)

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...