強烈な問題意識が創造のスタート、固定観念から抜け出せ!

更新日

投稿日

アイデア発想1.ビジネスマンに必要な感性

 ビジネスマンは、すべからく企画マンであるべき時代です。企画マンにとって最も大切なものは鋭敏な感受性であり、別な言葉で言えば「感性」といえましょう。アメリカの著名な心理学者ギルフォードは「創造力のある人」の素質として第一に「問題に対する敏感さ」をあげています。

 旧国鉄のヒット商品「フルムーン旅行」のアイデアは、旧国鉄旅客局の職員山崎さんが通勤電車で立っている時、前に座った人が広げた新聞を読んで発想しました。国勢調査の結果50歳前後の人口が20代と同様多かったからです。国勢調査の人口分布表を見た人は数限りなくいます。私も見た一人です。しかし、私を含めて多くの人は、その記事を単に1つの知識として読んだにすぎませんでした。しかし、山崎さんにとってその人口分布表は、単なる知識ではなく、すばらしい「情報」となったのです。

 「情報」という言葉は、明治9年に西周らが仏語の「ランゼーギューマン(報知)」を訳したものといわれています。その字をそのままとらえると、情報とは「情(なさけ)を報ずる」ということになります。つまり、情報とは単に頭で理解するものではなく、その人の心をゆさぶり動かすものといえます。

 

2.問題意識がヒントをつかむ

 まったく同じものを見ても、問題意識のある人と無い人ではその反応は決定的に異なります。創造者たちは、いずれも強烈な問題意識の持ち主たちです。湯川秀樹博士も、福井謙一博士もノーベル賞受賞者ですが、もう一つ共通するのは、賞を受賞した理論「中間子論」も「フロンティア電子理論」も寝床の中で思いついたということです。

 湯川博士が有馬の別荘に行った時、ちょうど台風が上陸してきてガタガタと雨戸が鳴り止まず、なかなか寝つかれずに、うつらうつらとまどろんでいる時に、博士の頭に「中間子論」のアイデアがわき出てきたといわれます。福井博士も病床で発想したといいます。強い問題意識が両博士の頭の中にあり、それがまどろんでいる時にも、しっかりと働いていたから発想したのでしょう。

 

3.固定観念から抜け出せ

 私たちは、物にも人に対しても、すぐにレッテルをはりがちです。身近な例として、ホッチキスは書類をとめる道具ですが、壁に紙をとめるための画鋲としても利用できます。マーカーペンは筆記具ですが、停電などの時、とっさにローソクのかわりに用いることもできます。このように物は、本来の利用以外に、さまざまな利用法が考えられます。しかし、私たちはいったんレッテルを貼るとその観念からなかなか抜け出せません。何とかして物事に対する固定観念をなくすことが大切です。 

 コカコーラのビンを考えた瓶製造工のケップルマン・ルートは、そのアイデアで10億以上の権利料を得たといわれます。1923年のある日、新しいビンのアイデアを考えるのに夢中で、うわの空のままルー...

アイデア発想1.ビジネスマンに必要な感性

 ビジネスマンは、すべからく企画マンであるべき時代です。企画マンにとって最も大切なものは鋭敏な感受性であり、別な言葉で言えば「感性」といえましょう。アメリカの著名な心理学者ギルフォードは「創造力のある人」の素質として第一に「問題に対する敏感さ」をあげています。

 旧国鉄のヒット商品「フルムーン旅行」のアイデアは、旧国鉄旅客局の職員山崎さんが通勤電車で立っている時、前に座った人が広げた新聞を読んで発想しました。国勢調査の結果50歳前後の人口が20代と同様多かったからです。国勢調査の人口分布表を見た人は数限りなくいます。私も見た一人です。しかし、私を含めて多くの人は、その記事を単に1つの知識として読んだにすぎませんでした。しかし、山崎さんにとってその人口分布表は、単なる知識ではなく、すばらしい「情報」となったのです。

 「情報」という言葉は、明治9年に西周らが仏語の「ランゼーギューマン(報知)」を訳したものといわれています。その字をそのままとらえると、情報とは「情(なさけ)を報ずる」ということになります。つまり、情報とは単に頭で理解するものではなく、その人の心をゆさぶり動かすものといえます。

 

2.問題意識がヒントをつかむ

 まったく同じものを見ても、問題意識のある人と無い人ではその反応は決定的に異なります。創造者たちは、いずれも強烈な問題意識の持ち主たちです。湯川秀樹博士も、福井謙一博士もノーベル賞受賞者ですが、もう一つ共通するのは、賞を受賞した理論「中間子論」も「フロンティア電子理論」も寝床の中で思いついたということです。

 湯川博士が有馬の別荘に行った時、ちょうど台風が上陸してきてガタガタと雨戸が鳴り止まず、なかなか寝つかれずに、うつらうつらとまどろんでいる時に、博士の頭に「中間子論」のアイデアがわき出てきたといわれます。福井博士も病床で発想したといいます。強い問題意識が両博士の頭の中にあり、それがまどろんでいる時にも、しっかりと働いていたから発想したのでしょう。

 

3.固定観念から抜け出せ

 私たちは、物にも人に対しても、すぐにレッテルをはりがちです。身近な例として、ホッチキスは書類をとめる道具ですが、壁に紙をとめるための画鋲としても利用できます。マーカーペンは筆記具ですが、停電などの時、とっさにローソクのかわりに用いることもできます。このように物は、本来の利用以外に、さまざまな利用法が考えられます。しかし、私たちはいったんレッテルを貼るとその観念からなかなか抜け出せません。何とかして物事に対する固定観念をなくすことが大切です。 

 コカコーラのビンを考えた瓶製造工のケップルマン・ルートは、そのアイデアで10億以上の権利料を得たといわれます。1923年のある日、新しいビンのアイデアを考えるのに夢中で、うわの空のままルートは恋人とデートしました。恋人は、当時大流行していた腰の部分をふくらまし、裾つぼみのポップルスカートでめかしこんできました。その有り様を見てルートは、「今までのコーラのビンはどの会社のものもありふれている。そうだ、このスカートのような形のものにしたらいい」と思いつき、こうして形がしゃれて、中身がたっぷりに見え、握りやすく、すべらない今のビンの形を考えたのです。

 強烈な問題意識をもち、執念をもって問題を追求する。そして、他方では次々と思考を変え、切り口をさがしてゆく。企画マンにはそんな二面思考が必要です。こんな姿勢さえあればすべてのビジネスマンは企画マンになれるのです。

◆関連解説『アイデア発想法とは』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

髙橋 誠

企業のイノベーション戦略の構築と実践をお手伝いし、社員の創造性開発を促進し、新商品の開発を支援します!

企業のイノベーション戦略の構築と実践をお手伝いし、社員の創造性開発を促進し、新商品の開発を支援します!


「アイデア発想法一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
商品開発のための発想法とは【連載記事紹介】

  商品開発のための発想法が、無料でお読みいただけます!   ◆こんな方におすすめ!=商品開発のための発想法を知りたい!= ...

  商品開発のための発想法が、無料でお読みいただけます!   ◆こんな方におすすめ!=商品開発のための発想法を知りたい!= ...


創造思考、「1人の時」「他の事をしている」と「突然」に!

  1.現代のビジネスマンは寝歩車で考える  私の研究所で、1984年に「現代の発想パターン調査」を実施しました。ビジネスマンを中心に、...

  1.現代のビジネスマンは寝歩車で考える  私の研究所で、1984年に「現代の発想パターン調査」を実施しました。ビジネスマンを中心に、...


技術者・研究者のための「前に進む発想法」

1.技術者・研究者は頭が固い  技術者・研究者は、コチコチ頭の人が少なくありません。思い込みや固定観念にとらわれ、よく壁にぶつかっています。「専...

1.技術者・研究者は頭が固い  技術者・研究者は、コチコチ頭の人が少なくありません。思い込みや固定観念にとらわれ、よく壁にぶつかっています。「専...


「アイデア発想法一般」の活用事例

もっと見る
しつこく繰り返して、発見や発明を生んだ事例2-サイクロトロン、嘘発見器-

1.物理学者の論文で使われた装置をヒントに、サイクロトロンを開発した、アメリカの物理学者、アーネスト・オルランド・ローレンス         ...

1.物理学者の論文で使われた装置をヒントに、サイクロトロンを開発した、アメリカの物理学者、アーネスト・オルランド・ローレンス         ...


連想ゲームで発想した事例 -電池と振り子時計-

1.ガルバーニの研究を受け継いで、最初の電池を考案したイタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタ  最初に電池を考案したのは、イタリアのアレッサンドロ・ボ...

1.ガルバーニの研究を受け継いで、最初の電池を考案したイタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタ  最初に電池を考案したのは、イタリアのアレッサンドロ・ボ...


屋内外で発見したことからの発想事例2 -熱気球、パンチカード-

1.煙突の上で紙切れが舞っているのを見て熱気球を発明した、フランスの発明家 モンゴルフィエ兄弟     ジョセフ・ミシェル・モンゴルフィエと、ジャック...

1.煙突の上で紙切れが舞っているのを見て熱気球を発明した、フランスの発明家 モンゴルフィエ兄弟     ジョセフ・ミシェル・モンゴルフィエと、ジャック...