サプライチェーンの戦略的経営モデル -人間系と情報技術(ICT)の融合-

更新日

投稿日

 生産財メーカーの今後の経営モデルをサプライチェーンの原理原則からみると、熟練をベースとした人間系と情報技術(ICT)の融合といえます。「BTB(ビジネス・ツー・ビジネス)では顧客に製品を提供するのではなく、儲かるソリューションを提供することが重要である」と、IBMの業績を回復させたルイス・ガースナー最高経営責任者は言っています。なお、ガースナーは「技術そのものが企業収益を上げるわけではなく、顧客にメリットを出すことで収益に繋がる」という直裁的なメッセージを出しIBMの業績回復に成功しました。

 組織的に自律的熟練度を上げる仕組みを作りあげること、そしてサプライヤーと顧客がインターネットでつながるデータベースをプラットフォームにするサプライチェーンにより自社の強みをさらに強化させること、これら2点によって「儲かるソリューションを提供する」ことができます。図1に示すように、顧客満足度という目標の共有化、そして社内外にわたるサプライチェーン上の関係者の情報共有とその可視性向上が、創発現象を生むことにより、強い組織を作るのです。

 サプライチェーンマネジメントにおける情報共有と分権組織

図1.サプライチェーンマネジメントにおける情報共有と分権組織

 バーチャルインテグレーションのパートナーとしての金型・工作機械などの生産財メーカーにとっては、如何に自社を顧客のサプライチェーンのなかにポジショニングするかがキーとなるでしょう。 

 米国ソレクトロンのようにサプライチェーンマネジメントを巧みに仕組んで急成長している企業は、生産財メーカーに何を求めているかという質問からすべてがはじまります。筆者がコーディネーターとして参加した米国サプライチェーンマネ...

 生産財メーカーの今後の経営モデルをサプライチェーンの原理原則からみると、熟練をベースとした人間系と情報技術(ICT)の融合といえます。「BTB(ビジネス・ツー・ビジネス)では顧客に製品を提供するのではなく、儲かるソリューションを提供することが重要である」と、IBMの業績を回復させたルイス・ガースナー最高経営責任者は言っています。なお、ガースナーは「技術そのものが企業収益を上げるわけではなく、顧客にメリットを出すことで収益に繋がる」という直裁的なメッセージを出しIBMの業績回復に成功しました。

 組織的に自律的熟練度を上げる仕組みを作りあげること、そしてサプライヤーと顧客がインターネットでつながるデータベースをプラットフォームにするサプライチェーンにより自社の強みをさらに強化させること、これら2点によって「儲かるソリューションを提供する」ことができます。図1に示すように、顧客満足度という目標の共有化、そして社内外にわたるサプライチェーン上の関係者の情報共有とその可視性向上が、創発現象を生むことにより、強い組織を作るのです。

 サプライチェーンマネジメントにおける情報共有と分権組織

図1.サプライチェーンマネジメントにおける情報共有と分権組織

 バーチャルインテグレーションのパートナーとしての金型・工作機械などの生産財メーカーにとっては、如何に自社を顧客のサプライチェーンのなかにポジショニングするかがキーとなるでしょう。 

 米国ソレクトロンのようにサプライチェーンマネジメントを巧みに仕組んで急成長している企業は、生産財メーカーに何を求めているかという質問からすべてがはじまります。筆者がコーディネーターとして参加した米国サプライチェーンマネジメント視察ツアーでソレクトロンを訪問しました。この訪問により衝撃的に受けとめたのは、サプライチェーンのどの部分であっても情報ネットワークのインフラがアウトソーシングのマネジメントを容易にすること、そしてタイムベース競争力の差別化がバーチャルインテグレーションの構築により促進されることでした。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

今岡 善次郎

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
調達物流 儲ける輸送改善 (その4)

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...


物流不良撲滅 物流品質の向上 (その4)

1.工場の評判を落とす出荷品質不良  前回の第3回に続いて解説します。工場におけるものづくり品質は不良が起こりにくい工法を生産技術部門で開発し、それ...

1.工場の評判を落とす出荷品質不良  前回の第3回に続いて解説します。工場におけるものづくり品質は不良が起こりにくい工法を生産技術部門で開発し、それ...


第3のSCM: 複雑系・安定・利益

1. 既存のSCMと第3のSCM  既存のSCM:サプライチェーンマネジメントでは資金最大化をねらい、調達を、需要や制約、つまり販売と同期させて在庫...

1. 既存のSCMと第3のSCM  既存のSCM:サプライチェーンマネジメントでは資金最大化をねらい、調達を、需要や制約、つまり販売と同期させて在庫...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
物流改善とともに大切なこと(その2)

◆社員みんなが本気になる  前回のその1に続いて解説します。会社を変えるために最も必要だと思われることは「社員みんなが本気になる」ということです。よ...

◆社員みんなが本気になる  前回のその1に続いて解説します。会社を変えるために最も必要だと思われることは「社員みんなが本気になる」ということです。よ...


物流品質向上法 (その1)

  1. 物流品質の5類型    物流品質、これは当たり前のことである一方でなかなか改善されない機能でもあります。私たちは物流のプロとして品質の向...

  1. 物流品質の5類型    物流品質、これは当たり前のことである一方でなかなか改善されない機能でもあります。私たちは物流のプロとして品質の向...


物流標準時間を導入する 物流作業計画の重要性(その3)

       標準時間は自分の会社で決めればよいのです。ただし、自社の基準が甘すぎると他社には勝てないという事実があります。しかし物流では大方の会社...

       標準時間は自分の会社で決めればよいのです。ただし、自社の基準が甘すぎると他社には勝てないという事実があります。しかし物流では大方の会社...