核融合とは?仕組みや核分裂との違いは?核融合の研究開発の現状もご紹介

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核融合とは?仕組みや核分裂との違いは?核融合の研究開発の現状もご紹介

 

核融合は未来の持続可能なエネルギー源として期待されています。この記事では、原子核とは何か、三重水素の特性、核融合反応がもたらすエネルギー、核融合の利点、自然界での核融合の例、そして核融合と核分裂の違いについて詳しく解説しています。

 

1. 核融合とは何か

核融合は、軽い原子核が高温・高圧の条件下で結合し、重い原子核を形成する現象です。この過程でエネルギーが放出され、太陽や恒星のエネルギー源としても働いています。科学者たちは核融合を人工的に実現することで、新しい持続可能なエネルギー源を作ろうと試みています。

 

核融合とは

核融合は、軽い原子核が高温・高圧の状態で接近し、結合してより重い原子核を形成する反応のことを指します。この結合の過程で、質量が一部失われ、それがエネルギーとして放出される。これはアインシュタインのE=mc^2の方程式に基づき、質量とエネルギーが等価であることを示しています。宇宙における主要なエネルギー生成メカニズムとして、特に太陽や他の恒星の核で自然に発生します。地球上で核融合を制御された形で発生させることができれば、ほぼ尽きることのないエネルギー源として利用可能となり、環境への影響も少ない持続可能な電力供給方法としてのポテンシャルを持っています。

核融合を実現するための方法として様々な研究が進められている中で、デューテリウム(D)とトリチウム(T)の組み合わせでの核融合が、現在のところ実現可能性が高いとされています。

 

原子核とは

原子核は、原子の中心部に存在する非常に小さい領域で、陽子と中性子から成り立っています。これらの粒子は強力な核力によって束ねられており、この核を構成す...

核融合とは?仕組みや核分裂との違いは?核融合の研究開発の現状もご紹介

 

核融合は未来の持続可能なエネルギー源として期待されています。この記事では、原子核とは何か、三重水素の特性、核融合反応がもたらすエネルギー、核融合の利点、自然界での核融合の例、そして核融合と核分裂の違いについて詳しく解説しています。

 

1. 核融合とは何か

核融合は、軽い原子核が高温・高圧の条件下で結合し、重い原子核を形成する現象です。この過程でエネルギーが放出され、太陽や恒星のエネルギー源としても働いています。科学者たちは核融合を人工的に実現することで、新しい持続可能なエネルギー源を作ろうと試みています。

 

核融合とは

核融合は、軽い原子核が高温・高圧の状態で接近し、結合してより重い原子核を形成する反応のことを指します。この結合の過程で、質量が一部失われ、それがエネルギーとして放出される。これはアインシュタインのE=mc^2の方程式に基づき、質量とエネルギーが等価であることを示しています。宇宙における主要なエネルギー生成メカニズムとして、特に太陽や他の恒星の核で自然に発生します。地球上で核融合を制御された形で発生させることができれば、ほぼ尽きることのないエネルギー源として利用可能となり、環境への影響も少ない持続可能な電力供給方法としてのポテンシャルを持っています。

核融合を実現するための方法として様々な研究が進められている中で、デューテリウム(D)とトリチウム(T)の組み合わせでの核融合が、現在のところ実現可能性が高いとされています。

 

原子核とは

原子核は、原子の中心部に存在する非常に小さい領域で、陽子と中性子から成り立っています。これらの粒子は強力な核力によって束ねられており、この核を構成する要素が変化することでエネルギーが放出されることがあります。

 

デューテリウム(deuterium:重水素)

水素の安定同位体のうち、原子核が陽子1つと中性子1つとで構成されるもの。自然界においても海水などに微量存在しています。

 

トリチウム(tritium:三重水素)

原子核に陽子1つと中性子2つを持つ水素の同位体で、自然界にはごく少量しか存在しませんが、放射性を持つため特別な取り扱いが必要です。

 

デューテリウム(D)とトリチウム(T)の組み合わせによる反応

D-T反応(デューテリウム-トリチウム反応)は、これら2つの同位体を高温のプラズマ状態にし、融合させることでヘリウムと中性子を生成します。この反応で放出されるエネルギーは非常に大きく、持続可能なエネルギー源としてのポテンシャルを秘めています。また、トリチウムは直接採掘できるものではなく、主にリチウムを中性子照射することで生成されるため、核融合炉の設計や運用において、トリチウムの生成や供給が重要な課題となっています。

 


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2. 核融合反応が起こるとどうなるか

核融合反応が起こると、軽い原子核が高温・高圧の条件下で結合し、より重い原子核を形成します。この過程で以下ような現象が発生します。

 

エネルギー放出

核融合反応の最も顕著な特徴は大量のエネルギーの放出です。このエネルギーは、融合した原子核の質量が、融合前の原子核の合計質量よりもわずかに少なくなるために生じます。この質量の差がエネルギーに変換され、アインシュタインのE=mc^2の方程式に基づいて放出されます。

 

新しい元素の生成

核融合により新しい、より重い原子核が生成されます。例えば、デューテリウムとトリチウムの融合反応ではヘリウムが生成されます。

 

中性子放出

特定の融合反応、特にデューテリウム-トリチウム反応では、高エネルギーの中性子が放出されます。これらの中性子は、炉の材料や周囲の構造に影響を及ぼす可能性があります。

 

放射線の発生

核融合反応によって生成される製品や、反応に関連する物質は放射性を持つ場合があります。例えば、トリチウムは放射性を持つため、それを含む融合反応では放射線の管理が重要です。

 

核融合エネルギーの大きさは?

核融合反応が起こると、莫大なエネルギーが放出されます。例えば、太陽では核融合反応が行われており、そのエネルギーが太陽の輝きとして放出されています。人工的に核融合エネルギーを取り出すことができれば、新しいエネルギー源としての期待が大きいです。

 

核融合エネルギーの利点について

核融合エネルギーは、放射線廃棄物の量が少なく、CO2排出がないため環境にやさしいとされています。また、原料として海水から取れるデュタリウムを使用するため、エネルギー資源としての持続性が期待されています。

 

3. 核融合エネルギーが注目される理由

化石燃料の枯渇、地球温暖化の進行など、現在のエネルギー問題を背景に、持続可能でクリーンなエネルギー源として核融合が注目されています。

 

4. 自然界における核融合の例

核融合は、高温・高圧の環境下で、軽い原子核が合体してより重い原子核を形成する過程を指します。この現象は自然界において最も壮大なスケールで起こっているのが太陽や他の恒星の中心部です。

太陽は、我々の生命の存在にとって非常に重要なエネルギー源として知られていますが、このエネルギーの起源は太陽の核で行われている核融合反応にあります。太陽の核では、圧力と温度が非常に高いため、水素の原子核(プロトン)が合体してヘリウムの原子核を形成する核融合反応が連続して行われています。この過程で莫大なエネルギーが放出され、これが太陽放射として私たちの元に届く太陽光となります。

具体的には、太陽の核での核融合は主にプロトン-プロトン連鎖反応として進行します。この反応で4つのプロトン(水素の核)が合体して1つのヘリウムの核を形成する過程で、質量が少しだけ失われます。アインシュタインの有名な方程式E=mc^2に基づき、この失われた質量がエネルギーとして放出されるのです。

太陽以外にも、宇宙には多くの恒星が存在しており、それぞれの恒星が異なる進化段階や質量を持つため、太陽とは異なる核融合反応が進行していることもあります。例えば、より質量の大きな恒星では、水素だけでなく、ヘリウムやさらに重い元素が核融合の燃料となり、これによって鉄や他の重い元素が生成されることもあります。

このように、核融合は宇宙の多くの恒星で行われており、それによって星々は輝きを放ち、また新しい元素が生成されています。そして、地球上の全ての元素、私たちが日常生活で利用する多くの物質も、過去の恒星の核融合や超新星爆発といった宇宙の出来事を通じて生まれたものと考えられています。

 

5. 核融合反応を起こすには?

トカマク方式

トカマク方式は、核融合研究で最も進んでいる方法の一つとして知られています。トカマクはロシア語由来の言葉で、円筒形の容器内に高温のプラズマを磁場で閉じ込めることを指します。核融合を起こすためには、プラズマを非常に高い温度に加熱し、一定の条件下で維持する必要があります。

トカマク方式では、特に強力な磁場を利用してプラズマを制御し、これを長時間安定して閉じ込める技術が鍵となります。最も注目されている国際プロジェクトであるITER(国際熱核融合実験炉)も、このトカマク方式をベースにしています。成功すれば、クリーンで持続可能なエネルギー源としての大きな期待が寄せられる方法です。

 

ヘリカル方式

ヘリカル方式は、トカマク方式とは異なり、螺旋状の磁場を用いてプラズマを閉じ込める方法です。この方式の最大の特徴は、複雑な三次元形状の磁場を使用することにより、プラズマの不安定性を抑えながらも効果的に閉じ込めることができる点です。

日本では特に、このヘリカル方式を研究しており、研究の先頭を走る存在として「LHD(Large Helical Device)」があります。LHDは、世界最大のヘリカル型核融合実験装置として、核融合プラズマの安定的な閉じ込めや高性能化を目指している重要なプロジェクトの一つです。

 

レーザー方式

レーザー方式は、核融合を起こすための全く異なるアプローチを持つ方法です。この方式では、超高出力のレーザーを使用して、核融合燃料を急激に圧縮・加熱することで核融合反応を誘発します。
具体的には、小さなペレット状の燃料に、多方向からレーザーを照射し、瞬時にそのペレットを高温・高密度の状態にします。この方式の魅力は、比較的コンパクトな装置で核融合反応を起こせる可能性がある点です。ただし、技術的な課題も多く、現在も研究が続けられています。

 

6. 核融合と核分裂の違い

核融合と核分裂は、原子の核に関わるエネルギーを発生させる反応ですが、前者は軽い原子核が合体してより重い原子核を形成しエネルギーを放出する反応で、太陽や恒星の中心で自然に発生しており、その過程は高温・高圧の条件下で行われます;一方、後者は重い原子核(例:ウランやプルトニウム)が、自然あるいは外部からの中性子の衝突により二つ以上の軽い原子核に分裂し、その際に大量のエネルギーを放出する反応で、この現象は原子力発電所の原子炉内で利用されています。

以下の表で核融合と核分裂の反応の違いについて示します。

項目 核融合 核分裂
反応の過程 軽い原子核が合体してより重い原子核を形成する。 重い原子核が二つ以上の軽い原子核に分裂する。
発生場所 太陽や恒星の中心 原子力発電所の原子炉内や原子爆弾
条件 高温・高圧 一定の条件下での中性子の存在
利用する材料 例: 重水素、三重水素 例: ウラン-235, プルトニウム-239
放出エネルギー 膨大なエネルギー 大量のエネルギー

要約すると、核融合は主に太陽や恒星で行われる、軽い原子核の合体反応であり、これにより膨大なエネルギーが放出されるものです。対照的に、核分裂は重い原子核が分裂する反応で、原子力発電や原子爆弾の基盤となっており、この反応により大量のエネルギーが生み出されます。

 

7. 核融合の研究開発の現状

核融合の研究開発は、クリーンで持続可能なエネルギー源としての巨大な可能性を背景に、国際的な共同プロジェクトを含めて活発に進められています。その中でも最も注目されるのが、フランスに建設中の「ITER(国際熱核融合実験炉)」プロジェクトです。これは、アメリカ、EU、日本、ロシア、中国、韓国、インドの7つのパートナーが参加する、世界最大規模の核融合研究プロジェクトであり、トカマク方式を採用しています。

ITERの成功は、商業化への道を大きく開くこととなるでしょう。ただ、技術的な困難やコストの増大などの課題も多く、計画通りの進行が求められています。その一方で、小型の核融合炉の開発を目指すスタートアップ企業も現れ、独自のアプローチで研究が進められています。このように、核融合技術の研究開発は、多岐にわたる取り組みが世界中で行われており、次世代の主要なエネルギー源としての期待が高まっています。

 

8. まとめ

核融合は、未来のクリーンで持続可能なエネルギー源としての大きな期待が寄せられています。研究開発が進む中、その実用化に向けた歩みは続いています。

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この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

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