顧客ニーズの4ステップ(その2)

 顧客ニーズの4段階のうち、前回の顧客ニーズの4ステップ(その1)に続いて今回は、後半部分を説明します。

3.「暗黙知ニーズ」

 暗黙知は、形式知とは反対に、自分では知っているが、言葉、文章、絵で表すことができない知識です。この例としては、匠の技が典型例です。匠の技はマニュアルなどがなく、習得しようと思えばその匠と一緒に仕事をして匠を観察したり、場合によっては昔の徒弟制度のように、まずやってみて失敗したら殴られながら習得するような種類の知識です。
 これをニーズの議論に当てはめると、暗黙知ニーズとは顧客はその要求の存在にはなんとなく気づいているが、それを明確に表現することができない、もしくは表現しようという強い動機をもっていないというニーズと言えるでしょう。
 暗黙知ニーズの存在に気がつき、それを形式知化するという作業には、顧客にとって価値があります。なぜなら、顧客の潜在的な課題解決のきっかけになるからです。良く問題解決能力より課題認識能力が重要と言われるように、解決の対象である課題を発見することが経営上は重要なのです。
加えて暗黙知ニーズは、顧客自身で語ることができず、競合企業にも知られていない可能性が大きいので、このニーズに基づく製品の利益率は高くなる傾向にあります。

 しかし、暗黙知化されたニーズを収集することは簡単ではありません。先のNEC研究者のように「何かお困りのことはありませんか?」と聞いても出てこない類のニーズです。この暗黙知ニーズを収集するには、自社からの提案が絶対に必要です。もっとも、自社の提案は顧客の暗黙知化されているニーズにぴったり合っている必要はなく、顧客の発想を刺激するような提案を持っていくことが重要です。つまり、「そうだよ。こんな物があれば良いと思っていたんだ。ただ、現実はちょっと違っていて、こうなんだ。」といった反応が欲しいのです。

 最初からこのような反応を得ることは難しいでしょう。従って、顧客とのやりとりの中からその提案を進化させたり、新たな提案を創出し顧客にぶつけるという作業を繰り返すことが重要となります。このような作業を粘り強く続けていけば、暗黙知化したニーズを製品化できる可能性はかなり高いと思います。

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4.未知のニーズ

 上の潜在ニーズは、顧客が既になんとなく気づいている要求です。すると、顧客が全く気づいていないニーズもあるわけです。このニーズをここでは未知のニーズと呼んでいます。この未知のニーズを常に追いかけて、そのニーズに基づき製品化をすることの価値は極めて大きいのです。
 

 なぜなら、まず未知のニーズは無限にあり、尽きることがありません。BtoBの顧客は日々変化する市場環境の中で経営を行っており、顧客の課題は永遠に尽きることがありません。なぜなら、課題の解決が経営の本質であり、その課題の解決を効果的・効率的に行うことが、実は企業にとっての価値創出の源泉だからです。
 

 従って、サプライヤーの自社製品の周辺にも当然顧客の尽きない課題がありします。この未知のニーズの数は、前記の暗黙知化したニーズの10倍ぐらいの数が存在するのではないでしょうか。
現実には、上の暗黙知ニーズとこの未知ニーズとの境界線は必ずしも明確ではありませんが、求められる姿勢や活動は大きく異なります。暗黙知ニーズでは、簡単ではないものの「顧客周辺」の活動によって、ある程度は収集することができるでしょう。しかし未知のニーズは、暗黙知ニーズ以上に見出すことは難しく、「顧客を越えて」強い姿勢と活動が求められます。

 しかし、それゆえに発見した時の果実は非常に大きなものです。このような未知のニーズを発見することを偶然に頼るのではなく、体系的かつ継続的に行う価値は極めて大きなものであることは、皆さんも想像がつくでしょう。


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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