SCMはなぜ難しい サプライチェーンマネジメントによる全体最適化(その1)

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【サプライチェーンマネジメントによる全体最適化 連載記事目次】

1. SCMはなぜ難しい

2. SCM戦略とは

3. 変動メカニズムと対策

 

1.はじめに

サプライチェーンマネジメント(SCM)と聞くと、物流経費のコストダウン活動と考える人は多いでしょう。しかし、それは間違いです。サプライチェーンマネジメントは調達・生産・販売・在庫製作といった企業活動全てを最適化するものです。

 

  • 顧客納期を満足させるために、在庫で対応 → 倉庫・管理費用がかかる
  • 同上、受注生産 → 生産コストがかかる

 

製造部門は前者を推し、物流部門は後者を推すでしょう。これでは部分最適を目指しているが、合成の誤謬になってしまいます。そこで、必要なのがSCMです。

SCMを活用し成功した会社として、DELL、ユニクロなどが代表的。また忘れてはならないトヨタ自動車もその一つです。是非SCMを行い、総コストの最適化を行ってください。

2.サプライチェーンマネジメントとは

そもそもサプライチェーンとは何でしょうか。それは資材の調達から最終消費者に届けるまでには、資材や部品の調達/生産/販売/物流と言った業務があります。その流れを一つの大きな「供給のチェーン(鎖)」として捉えたものをサプライチェーンと呼びます。そしてこのサプライチェーン上の業務を管理するのがサプライチェーン・マネジメントです。

 

SCM

 

3.SCMの目的

サプライチェーン・マネジメントの目的は2つあります。

 

  • サプライチェーン上の在庫を極小化し、市場の激変に対して不良在庫を減らす
  • 多様な商品を短いリードタイムで供給し、販売の機会損失を減らす

 

この二律背反することをマネジメントすることがSCMの目的です。

 

SCM

 

4.SCMを困難にする要因

SCMを困難にする要因として、次の4つが挙げられます。

 

①最終需要の不確実性・・・文字通り、市場動向の予測は極めて難しいです。特に販売キャンペーンなど効果を織り込んだ予測をすることは容易ではありません。

 

②顧客許容リードタイムとスループットタイム違い・・・顧客許容リードタイムとは、購入意思決定を行ってから納品までの時間です。スループットタイムとは、材料調達から納品までの時間を言います。スループットタイムが短い場合は、受注してから、材料調達しても間に合う計算で、SCMは容易です。ただし、普通はその逆だから難しいのです。

 

③多段階意思決定における情報の劣化・・・ブルウィップ効果や鞭効果と呼ばれるものです。詳細は、別途で解説します。

 

④商品の多様性・・・需要予...

 

【サプライチェーンマネジメントによる全体最適化 連載記事目次】

1. SCMはなぜ難しい

2. SCM戦略とは

3. 変動メカニズムと対策

 

1.はじめに

サプライチェーンマネジメント(SCM)と聞くと、物流経費のコストダウン活動と考える人は多いでしょう。しかし、それは間違いです。サプライチェーンマネジメントは調達・生産・販売・在庫製作といった企業活動全てを最適化するものです。

 

  • 顧客納期を満足させるために、在庫で対応 → 倉庫・管理費用がかかる
  • 同上、受注生産 → 生産コストがかかる

 

製造部門は前者を推し、物流部門は後者を推すでしょう。これでは部分最適を目指しているが、合成の誤謬になってしまいます。そこで、必要なのがSCMです。

SCMを活用し成功した会社として、DELL、ユニクロなどが代表的。また忘れてはならないトヨタ自動車もその一つです。是非SCMを行い、総コストの最適化を行ってください。

2.サプライチェーンマネジメントとは

そもそもサプライチェーンとは何でしょうか。それは資材の調達から最終消費者に届けるまでには、資材や部品の調達/生産/販売/物流と言った業務があります。その流れを一つの大きな「供給のチェーン(鎖)」として捉えたものをサプライチェーンと呼びます。そしてこのサプライチェーン上の業務を管理するのがサプライチェーン・マネジメントです。

 

SCM

 

3.SCMの目的

サプライチェーン・マネジメントの目的は2つあります。

 

  • サプライチェーン上の在庫を極小化し、市場の激変に対して不良在庫を減らす
  • 多様な商品を短いリードタイムで供給し、販売の機会損失を減らす

 

この二律背反することをマネジメントすることがSCMの目的です。

 

SCM

 

4.SCMを困難にする要因

SCMを困難にする要因として、次の4つが挙げられます。

 

①最終需要の不確実性・・・文字通り、市場動向の予測は極めて難しいです。特に販売キャンペーンなど効果を織り込んだ予測をすることは容易ではありません。

 

②顧客許容リードタイムとスループットタイム違い・・・顧客許容リードタイムとは、購入意思決定を行ってから納品までの時間です。スループットタイムとは、材料調達から納品までの時間を言います。スループットタイムが短い場合は、受注してから、材料調達しても間に合う計算で、SCMは容易です。ただし、普通はその逆だから難しいのです。

 

③多段階意思決定における情報の劣化・・・ブルウィップ効果や鞭効果と呼ばれるものです。詳細は、別途で解説します。

 

④商品の多様性・・・需要予測が難しく、スループットが長くても単一商品だけであれば、SCMは困難ではありません。しかし現実では、多様な商品を扱うことから、困難になります。

 

SCMの難しさは、これら4つが足し算ではなく掛け算で効くのです。SCM戦略の目標はこれら4つをバランス良く改革するものです。今回は、SCMの解説と難しさについて解説しました。次回はSCM戦略の解説を行います。

 

 

 

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この記事の著者

松宮 恭一郎

現状維持バイアスから抜け出し、全体最適を。 一緒に考える伴走型コンサルティングで理想の姿に導きます。

現状維持バイアスから抜け出し、全体最適を。 一緒に考える伴走型コンサルティングで理想の姿に導きます。


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