業務改善とアンケートとは

 
  
品質工学
 

1. スコープ・クリークを防ぐリーンシックスシグマ

 社内の業務改善を行うとき、体系的な方法を使ってプロジェクトを進めていくことがとても重要になります。特に業務改善のようなプロジェクトは、問題の本質や解決すべき問題の範囲が、プロジェクトを進めるに従ってどんどんと変わっていくことがあり、「気が付いたときは収拾がつかなくなっていた」などということが、しばしば起こります。リーンやリーンシックスシグマ(DMAIC)は、スコープ・クリークを防ぐ上でも、とても有効な手段です。
 
 リーンでは改善活動に代表されるように、問題があればまず価値の流れや無駄の存在を見直し、改善によってその問題を解決しようとします。「より良くしていくこと」が、改善やリーンの基本となっています。一方リーンシックスシグマ(DMAIC)の場合は、問題があればまず数値化し、問題をデータとして把握ようとします。「測定できないものは、改善のしようがない」という考えが基本になっています。
 
 リーンシックスシグマはもちろんのこと、リーンであっても、僕はできるだけ問題を数値化してからプロジェクトを始めるようにしています。その理由はプロジェクトの前と後の違いを表すには、やはり数字が一番だからです。問題は、「どうやって数値化するかと」いうことです。特に複雑な社内の業務改善などの場合、数値化するといっても、業務が複雑すぎて測定(時間やコスト、数量など)するのが非常に難しかったり、データ収集にかかる時間やコストを考えると、データ取得自体にあまり意味が無かったりします。特にコンピュータ・ネットワークで繋がれている社内業務はモノの流れや人の移動が見えないため、なおさらデータ収集が困難になります。
 

2. アンケートの有効利用

 データ収集が困難な時に役に立つのが、アンケートです。基本的な考え方は簡単です。「業務改善を行う前と後で、どのように業務が変わったか」を知るために、社員へのアンケートを取るのです。あまりにも複雑で、データ測定不可能(または無意味)な業務改善プロジェクトの場合では、「プロジェクトの前と比べて、後の方が確かに改善されている」という事実だけでも成功と言えるからです(特にリーンのプロジェクトでは)。しかしアンケートは非常に難しいものです。自分でアンケートを作ったりしていると、なぜリサーチ専門の会社が専門家を使ってアンケートを作っているかが良く分かります。アンケートは芸術と言っても良いかもしれません。
 

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3. アンケートを作るときに気を付けること

 (1) 匿名性が高いこと
 (2) 高い回答率が得られること
 (3) できるだけ細かな数値の変化が比べられること
 (4) 質問の数を限定すること(回答時間10分未満)
 (5) 前向きな言葉を使うこと
 (6) 答えを誘導しないこと
 
 (1) 匿名であることは絶対です。誰がどのような回答をしたのかが分かってしまったら、誰がアンケートに回答するでしょうか。社内メールでアンケートを送るなどは、もってのほかです。匿名性を保つために、僕は Survey Monkey などの外部のサービスを使っています。Survey Monkey の場合、僕が行うような程度のアンケートなら無料で使えます。
 
 (2) もし何も考えないでアンケートを送ったら、回答率は良くて 10% です。僕は 60% の回答率を目標に定めています。社内のアンケートでもその程度です。
 
 回答率を上げるためには根回しが絶対に必要です。アンケートを実施する前に、各部署のマネージャーの理解を得ること、マネージャーの協力を得ること、事前にアンケートを送る旨を説明することです。
 
 そしてアンケートを送った後には、フォローアップをすること、マネージャーからのフォローアップを頼むこと、は必ず行うようにしています。今までの経験で面白く思うのは、火曜日の朝にアンケートを実施すると、なぜか回答率が高くなります、不思議なのですが。
 
 (3) プロジェクトの前と後で改善効果を比較できるように、できるだけ数値を使ったアンケートを作っています。例えば、5段階評価で回答してもらえれば、平均値や標準偏差を使って、改善の度合いが統計的に分析できるようになるからです。
 
 (4) 質問の数を限定し、回答に時間が掛からないように配慮することが不可欠です。僕は10分未満の回答時間を目指していますが、それでも長いかもしれません。
 
 (5) 改善プロジェクトは問題があるからこそ、それを改善しようとしているのですが、その問題について質問するときは、できるだけ前向きな言葉を使うようにしています。問題について質問しているので、ついつい後ろ向きな言葉なってしまうのですが、これは逆効果です。
 
 社内には問題を認識していない人が多くいます。恐らく大多数の社員は問題を認識していないのではないでしょうか。後ろ向きな言葉を使って問題を認識していない社員に質問することは、彼らの不安を煽るだけでなく、アンケート結果にも偏りが出てきます。もしアンケートが社員を不安に陥れてしまっては、改善どころか、社内業務やムードの改悪です。
 
 (6) 回答を誘導しない質問を作るのは、案外難しいものです。プロジェクトの成功を期待すればするほど、プロジェクト前のアンケートはマイナスに誘導し、プロジェクト後のアンケートはプラスに誘導したくなります。そうならないためにも、中立なアンケートをつくり、プロジェクトの前後で同じ質問を使うように心掛けています。
 
 業務改善プロジェクトの場合、アンケートはとても便利なツールだと僕は思うのですが、不思議なことにリーンやシックスシグマの本を読んでもあまりアンケートについては触れていませんし、ブラックベルト等のトレーニングでもあまり触れません。統計的手法と一緒にアンケート実施方法なども教えれば良いと思うのですが、如何なものでしょう。
 

この記事の著者

津吉 政広

リーンやシックスシグマ、DFSSなど、問題解決のためのフレームワークを使った新製品の開発や品質の向上、プロセスの改善を得意としています。「ものづくり」に関する問題を一緒に解決してみませんか?

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