商品企画の標準プロセス「商品企画七つ道具」

1. 製造品質から企画品質への要求変化

 戦後日本の高度成長期を支えたのは統計手法を縦横に駆使した品質管理でした。作れば作っただけ売れた時代には、量産しながらデータを解析し、少しずつ不良を減らしていくことができたのです。そこで重宝されたのがQC7つ道具(Q7)であり、その後QCサークルで改善活動を進めるにあたって、数値ではない言語情報を整理するために考えられたのが新QC7つ道具(N7)でした。
 
 さらに1990年前後にバブル経済が崩壊し、人口減少、モノ余りの時代となり、高品質&低価格であっても製品が売れにくくなると、どう作るかではなく何を作るか、つまり企画品質の重要性が高まりました。そんな背景から日科技連主導のプロジェクトで生まれたのが商品企画7つ道具(P7)です。
 
 一つのヒット商品が生まれるには、3000個の初期アイデアが存在するという報告があります(図1)。このアイデア絞り込みプロセスを効率的に進める方法が商品企画7つ道具と言えます。道具を使ったら必ず大ヒットするというほど世の中は甘くありませんが、ツールと手順を参考にすることで、プロセスが標準化でき、成功確率の向上が期待できます。
 
 
商品企画七つ道具
 図1.商品企画からヒットまでの経路
 

2. 商品企画7つ道具の概要

 商品企画7つ道具の流れと関連を図2に示します。大きくは仮説設定⇒仮説検証⇒コンセプト固定化、最終的に設計仕様としてまとめるというステップで進みます。
 
 
商品企画七つ道具の流れ
 図2.商品企画7つ道具の関係性
 
 以下各道具(ツール)を簡単に説明します。
 

(1) 仮説発掘法

 市場ユーザーがどのような潜在的需要を持っているかの仮説を発掘するためにフォト日記調査法と仮説発掘アンケート法が提案されます。前者はユーザーの生活を写真を多用した日記風に提出してもらい、その日記を見ながらメンバー内でニーズを議論します。写真は情報量が多いので、多くの仮説が発掘できます。後者は潜在需要発掘に目的を絞ったアンケートで、多数の回答を分析します。
 

(2) アイデア発想法

 商品コンセプトを実現するためにはアイデア発想が必要になります。世の中には実にたくさんの発想法があり、P7では「焦点発想法」や「アナロジー発想法」、「ブレインライティング」を推奨します。
 

(3) インタビュー調査

 P7ではグループインタビューと評価グリッド法が使われます。前者は、テーマに関心の深いユーザーを5~8人程度一室に集め、司会者が気持ちを解きほぐしながら参席者同士の会話を弾ませる事で、案件に対する潜在的な意識と要求を掘り起こします。後者はインタビュアーとユーザーが1対1で面談し、商品サンプルを2つずつペアで提示して、好ましい方とその理由を尋ねることでやはり潜在ニーズを引き出す方法です。
 

(4) アンケート調査

 ユーザーあるいはその候補者に対して予め設定された質問への回答を回収し、統計的な処理によって意識、要求の全体像を知る方法です。 実施形態は多種多様で、目的とする対象や期間、内容によって適切に使い分けます。調査票の作成と、対象者の選定がポイントです。
 

(5) ポジショニング分析

 アンケートなどで判明した重要な要素を2項目選んで2次元空間を作成し、そこに競合他社や自社の製品、サービスを配置して、それらの兼ね合いで新製品の性格付けを決めます。
 

(6) コンジョイント分析

 コンセプトが絞り込まれてきた時に、多くの組合せを試してみるのは非現実的なために、項目と水準を直交表に当てはめて一部の組合せを抜粋し、統計的にユーザーの反応を分析して、最終的な仕様組み合わせを決定してゆく方法です。
 

(7) 品質表

 ここまでに整理した顧客要求を顧客表現のままに整理し、別途整理した品質特性との関連性をマトリクスで明確にする事で、顧客要求の重要度を品質特性の重要度に転換して、顧客要求に応える機能、性能を設計することができる手法です。
 
 日本発で商品企画のために発展してきた品質機能展開(QFD)のコアツールでもありますので、また別稿で詳しく説明したいと思います。
 

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3. 商品企画7つ道具利用の注意点

 7つ道具の説明を見るとなんだか面倒くさそうですね。一気に全部を理解し、実践しようとすると相当に手強いですが、毎回全部使わなければ効果が出ないわけではありません。必要に応じて効果的なツールを選んで使えば良いのです。
 
 例えばニーズ探索が最重要と思えば、仮説設定、インタビューやアンケートに力を入れ、コンセプトが大事ならポジション分析をきっちり考え、最終的に品質表で整理すれば良いでしょう。どんなツールでも使っているうちに習熟し、だんだん早くうまく使えるようになってくるものです。
 
 本稿では各サブツールは概要しか説明していませんので、詳細は書籍や他の記事で学習して、まずは使ってみてください。
 

この記事の著者

熊坂 治

ものづくり革新のナレッジを広く共有、活用する場を提供することで、製造業の課題を解決し、生産性を向上します。

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