【目次】
前回の社長と社員のコミュニケーション術(その3)では、 ビジネスに対する価値観の違いを解説しました。今回は、性格・気質の違いを解説します。心理学では人間の個性は、持って生まれた「性格・気質」と「後天的に身に付けたもの」:価値観、信念、見方・考え方(スキル、受けた教育・環境・経験などが基礎)の2種類から成り立っているといわれます。 例えると、持って生まれた性格・気質は「裸の人間」、後天的に身に付けたものは「衣服、鎧(よろい)・兜(かぶと)」です。通常、人間はお互いに衣服や鎧・兜を着た状態で接しているので、なかなか裸の状態が分かりません。 さらに人間には「自分と他人が知っている性格・気質」という顕在領域、「自分も他人も知らない性格・気質」という潜在領域、さらに「自分しか知らない性格・気質」と、「他人しか知らない性格・気質」という4つの領域(ジョハリの窓)があるため、益々複雑です。
人間の個性はまさに千差万別、十人十色で一人ひとり異なりますが、心理学では性格・気質の違いに着目し、いくつかのパターンを想定する試みが行われ活用されています。
1.精神構造
人間の精神構造には「知・情・意」と3つの側面があるといわれ、夏目漱石も「草枕」で「知に働けば角が立つ、情に棹(さお)させば流される、意地を通せば窮屈(きゅうくつ)だ、とかくこの世は住みにくい」と書いています。
「知・情・意」を頭脳の構造にたとえると、少しイメージできるでしょう。
・知:左脳。 技。 理論的、技術的である。M:マインド。 考え方優先
・一言表現:計画策定役が適任。まず多面的、冷静、客観的に考え、知性があり、知恵を出す。
・キーワード:「考え方」が中心で、「見通し」と「バランス」重視。決断は、筋道の予測完了時。 論理的に追求し「確かな方向性の確定」重視。考え方の筋道と知恵が行動基準。 「納得」に時間がかかるが、その後の行動は素早い。3つくらいの選択肢から選定。
・情:右脳。 心。 感情的、情緒的である。F:フイーリング。 感じ方優先
・一言表現:調整役が適任。感情的で情にもろく、感性が鋭く、情緒豊か。
・キーワード:「物の感じ方」、第一印象を重視。「雰囲気」や「気分」が優先。「好き」、「きらい」が主体の感覚。「気が進む」、「進まない」が行動基準。
・意:小脳。 体。 行動的、実践的である。A:アクティブ。 動き方優先となります。
・一言表現:実行役が適任。意志が強く、本能的・動物的カンが働き、行動的。
・キーワード:自らの意志による。「努力」、「行動」がすべてに優先。一生懸命頑張っている人に好感。机上の空論より「まず実行」。とりあえずやってみる。達成感を味わいたい。最短距離で目標を勝ち取ることが行動基準。
心理学ではこの「知・情・意」の3つが入り混じって、人間の性格・気質が形成されているとして、上記の表示記号で示している「M、F、A」を使って、次の6つにパターン化します。
- MFA
- MAF
- FMA
- FAM
- AMF
- AFM
統計上からみた平均的な「M、F、A」の割合は第一因子が50%、第二因子が35%、第三因子が15%となっています。
2.対人・対社会対応
もう一つのパターンは、対人対応や対社会対応の仕方による次の2つです。
・外向型:明るく、社交的・開放的。物事を楽観的にとらえる。楽観派
・一言表現:人や社会に対してはあまり警戒的ではなく物事を楽観的にとらえるグループ。
・キーワード:周りをあまり気にしない。神経が太い。最初から本音でいく。警戒心があまりない。気が大きいが、弱い(いざとなったら、オロオロ)。楽天的である。全体的、悪くいうとおおざっぱ。
・内向型:暗く、非社交的・非開放的。物事を慎重にとらえる。慎重派
・一言表現:人や社会に対しては一応警戒心を持ちながら物事を慎重にとらえるグループ
・キーワード: 周りを気にする、意識する。 神経が繊細である。 最初は建前から入る。 警戒心が強い。 気が強く、肝っ玉小さい。 慎重である。部分的、悪く言うと細かすぎる。
人間の性格・気質は、精神構造からみた「知(M)、情(F)、意(A)」と対人対応、対社会対応に現われる「外向的(楽観)、内向的(慎重)...