N7の側面 「新QC七つ道具」の使い方、序論(その2)

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【新QC7つ道具 連載目次】

  1. N7 とは
  2. N7の側面
  3. 21世紀の経営戦略
  4. N7活用上のポイント
  5. 手に入れた結論をリポート

3. 21世紀が求めるものとそれに応えるN7の側面

 
 このテーマには2つの側面があり、一つは、新しい世紀が求める発想の転換、すなわち、“考え方”の問題であり、いま一つは、その思考母体である“脳”の問題です。まず後者から入り、前者の論議を経て結論に言及したいと思います。前回の3.(1) 脳の性差に続いて解説します。
 
 脳の性差に関する次のような2つの本があります。
 
 A:「話を聞かない男、地図が読めない女」アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著、藤井留美訳 (主婦の友社)
 B:「女の直感が男社会を覆す」ヘレン・E・フィッシャー著、吉田利子訳(草思社)
 

(2) 20世紀のキーワードはリダクショニズム

 
 2001年元旦の日経新聞の特集“20世紀を解く――科学技術の100年”における江崎玲於奈氏(芝浦工業大学大学長)の談話「20世紀科学の根底にあるのはリダクショニズム(全体を個別の要素に還元してとらえる考え方:要素還元主義)だといえる」にある通り、このリダクショニズムが、20世紀の科学の目覚ましい発達を促したことは論をまたないところであろう。
 
 しかし、その成功体験が、リダクショニズムの前提である“還元された要素の独立性確保”が難しい自然現象や社会現象にまでこの考えを敷延するという過ちを犯したのも20世紀です。その結果、リダクショニズムに従って追求を重ねた“部分善”が、環境問題に象徴される“全体悪”につながったわけで、21世紀のあるべき姿を追求する際、その点は念頭に置いておく必要があるでしょう。
 
 いま一つは、リダクショニズムの高効率運営を支えた“縦割り組織”が、成果を生んだ後も手段の目的化(手段である組織の維持が目的化した)により残ったことが、リダクショニズムの罪の面を誇張した形で今日の社会問題を生んでおり、同じく21世紀のあるべき姿を追求する際、念頭に置いておく必要があります。
 

(3) 21世紀は「ホーリズム」的思考

 
 前項で紹介した江崎氏の談話は、前述の部分を受けて、「これに対して21世紀はホーリズム(全体を部分に分けるのではなく、総体として理解しようとする)的な考えが主流になるだろう。キーワードは“複雑さ”であり、その最たる研究テーマは“脳”だ」と続くのです。
 
 ただ、このホーリズム的思考の適用は、リダクショニズムで手に負えないというか、ふさわしくない自然現象や社会現象に対する話、すなわち、適用対象の適正化の話であり、科学分野においては、依然としてリダクショニズム的思考が基本であることはいうまでもないでしょう。
 
 ちなみに、この“ホーリズム的思考”は、まさに前述の“ウエブ思考”の範疇であり、著書Bの著者、フィッシャー女史の「現代の女性たちは、ゆっくりと新しい経済的、社会的風景を刻み、新しい社会を築こうとしている」(下巻P.233) に相通じるものです。
 
 言われてみれば、近時従前とは違った形の女性進出が、政財界に散見されますが、それは、その新しい社会、すなわち「男女双方の利点が理解され、尊重され、活用される世界的な文化、すなわち、男女が対等に働いて暮らす時代」(下巻P.233) 到来の胎動といえそうです。
 
 QC
 

(4) 21世紀は“ウエブ思考”そして“N7”

 
 以上の話を総合すると、閉塞状態の現状からの脱出は、「現在の閉塞状態は、“ステップ思考”一辺倒の感のあった20世紀が生んだ誤謬が背景にある。したがって、その解決には“ウエブ思考”をもって取り組むべきである」ということになるのではないでしょうか。
 
 そのためには、“ウエブ思考”の概念をいま少し的確に把握しておく必要があるが、著書B(上巻P.57)に、そのニーズにズバリ応えた個所があるので下記に引用する。
 
 「グローバルな市場がますます複雑化し、尖鋭化していけば、さらに多くの企業で必要になるのは、多様なデータを収集し、咀嚼し、評価して、さまざまなアイデアの集積の中でこみいった関係を構築し、予想もしないビジネスの展開に想像力を働かせ、あいまいさを受け入れ、複数の方向で戦略をたて、複雑な長期計画を立案し、幅広い結果を予想し、急激で思いがけない変化に対応し、万が一の場合の選択肢を準備し、広く社会的な文脈のなかでビジネスの目標を設定し、システムのなかで考え、精神的な柔軟性を維持し、多くの要請を一度にさばくことができる人材だろう。こうした能力はすべて、ウエブ思考の属性だ。すべてが女性の精神の特徴である」
 
 ところで、筆者がこの部分を読んで痛く感じ入ったのは、「これらはすべて、N7の属性そのもの」ともいえる点です。すなわち、N7は、提唱された当初の「“How to do”から“What to do”への転換」といった次元を超えた、「“リダクショニズム”から“ホーリズム”、すなわち、“20世紀”から“21世紀”への転換」を支えるツールといえるのではないでしょうか。
 
 

(5) 男脳の“ウエブ思考”を支える“N7”

 
 確かに、前述した通り、世界的企業のトップに女性が就任し、見事に企業を再建するケースも出てきています。しかし、当面は、ステップ思考主体の“男脳”支配が大勢を占めざるを得ないのが現実でしょう。だとすれば、この過渡期には、“男脳のウエブ思考”が求められることになりますが、長年ステップ思考脳力を磨き、その成功体験が脳裏から離れない現役の“男脳”には一筋縄ではいかない難問なのです。
 
 そういった事...

【新QC7つ道具 連載目次】

  1. N7 とは
  2. N7の側面
  3. 21世紀の経営戦略
  4. N7活用上のポイント
  5. 手に入れた結論をリポート

3. 21世紀が求めるものとそれに応えるN7の側面

 
 このテーマには2つの側面があり、一つは、新しい世紀が求める発想の転換、すなわち、“考え方”の問題であり、いま一つは、その思考母体である“脳”の問題です。まず後者から入り、前者の論議を経て結論に言及したいと思います。前回の3.(1) 脳の性差に続いて解説します。
 
 脳の性差に関する次のような2つの本があります。
 
 A:「話を聞かない男、地図が読めない女」アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著、藤井留美訳 (主婦の友社)
 B:「女の直感が男社会を覆す」ヘレン・E・フィッシャー著、吉田利子訳(草思社)
 

(2) 20世紀のキーワードはリダクショニズム

 
 2001年元旦の日経新聞の特集“20世紀を解く――科学技術の100年”における江崎玲於奈氏(芝浦工業大学大学長)の談話「20世紀科学の根底にあるのはリダクショニズム(全体を個別の要素に還元してとらえる考え方:要素還元主義)だといえる」にある通り、このリダクショニズムが、20世紀の科学の目覚ましい発達を促したことは論をまたないところであろう。
 
 しかし、その成功体験が、リダクショニズムの前提である“還元された要素の独立性確保”が難しい自然現象や社会現象にまでこの考えを敷延するという過ちを犯したのも20世紀です。その結果、リダクショニズムに従って追求を重ねた“部分善”が、環境問題に象徴される“全体悪”につながったわけで、21世紀のあるべき姿を追求する際、その点は念頭に置いておく必要があるでしょう。
 
 いま一つは、リダクショニズムの高効率運営を支えた“縦割り組織”が、成果を生んだ後も手段の目的化(手段である組織の維持が目的化した)により残ったことが、リダクショニズムの罪の面を誇張した形で今日の社会問題を生んでおり、同じく21世紀のあるべき姿を追求する際、念頭に置いておく必要があります。
 

(3) 21世紀は「ホーリズム」的思考

 
 前項で紹介した江崎氏の談話は、前述の部分を受けて、「これに対して21世紀はホーリズム(全体を部分に分けるのではなく、総体として理解しようとする)的な考えが主流になるだろう。キーワードは“複雑さ”であり、その最たる研究テーマは“脳”だ」と続くのです。
 
 ただ、このホーリズム的思考の適用は、リダクショニズムで手に負えないというか、ふさわしくない自然現象や社会現象に対する話、すなわち、適用対象の適正化の話であり、科学分野においては、依然としてリダクショニズム的思考が基本であることはいうまでもないでしょう。
 
 ちなみに、この“ホーリズム的思考”は、まさに前述の“ウエブ思考”の範疇であり、著書Bの著者、フィッシャー女史の「現代の女性たちは、ゆっくりと新しい経済的、社会的風景を刻み、新しい社会を築こうとしている」(下巻P.233) に相通じるものです。
 
 言われてみれば、近時従前とは違った形の女性進出が、政財界に散見されますが、それは、その新しい社会、すなわち「男女双方の利点が理解され、尊重され、活用される世界的な文化、すなわち、男女が対等に働いて暮らす時代」(下巻P.233) 到来の胎動といえそうです。
 
 QC
 

(4) 21世紀は“ウエブ思考”そして“N7”

 
 以上の話を総合すると、閉塞状態の現状からの脱出は、「現在の閉塞状態は、“ステップ思考”一辺倒の感のあった20世紀が生んだ誤謬が背景にある。したがって、その解決には“ウエブ思考”をもって取り組むべきである」ということになるのではないでしょうか。
 
 そのためには、“ウエブ思考”の概念をいま少し的確に把握しておく必要があるが、著書B(上巻P.57)に、そのニーズにズバリ応えた個所があるので下記に引用する。
 
 「グローバルな市場がますます複雑化し、尖鋭化していけば、さらに多くの企業で必要になるのは、多様なデータを収集し、咀嚼し、評価して、さまざまなアイデアの集積の中でこみいった関係を構築し、予想もしないビジネスの展開に想像力を働かせ、あいまいさを受け入れ、複数の方向で戦略をたて、複雑な長期計画を立案し、幅広い結果を予想し、急激で思いがけない変化に対応し、万が一の場合の選択肢を準備し、広く社会的な文脈のなかでビジネスの目標を設定し、システムのなかで考え、精神的な柔軟性を維持し、多くの要請を一度にさばくことができる人材だろう。こうした能力はすべて、ウエブ思考の属性だ。すべてが女性の精神の特徴である」
 
 ところで、筆者がこの部分を読んで痛く感じ入ったのは、「これらはすべて、N7の属性そのもの」ともいえる点です。すなわち、N7は、提唱された当初の「“How to do”から“What to do”への転換」といった次元を超えた、「“リダクショニズム”から“ホーリズム”、すなわち、“20世紀”から“21世紀”への転換」を支えるツールといえるのではないでしょうか。
 
 

(5) 男脳の“ウエブ思考”を支える“N7”

 
 確かに、前述した通り、世界的企業のトップに女性が就任し、見事に企業を再建するケースも出てきています。しかし、当面は、ステップ思考主体の“男脳”支配が大勢を占めざるを得ないのが現実でしょう。だとすれば、この過渡期には、“男脳のウエブ思考”が求められることになりますが、長年ステップ思考脳力を磨き、その成功体験が脳裏から離れない現役の“男脳”には一筋縄ではいかない難問なのです。
 
 そういった事態を受け、「男脳にウエブ思考を促す手段としての“N7”」という位置づけが可能であり、重要なのではないかと考えている次第である。この連載では、その点についても、可能な限り言及していきたいと考えています。
 
 次回は、序論、その3:「21世紀の経営戦略」とはです。
 

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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